ネットダイアリ-37- 西へ武装ゴブリン捜索
昴は、帰宅するとパソコンを点ける。一応、ネットダイアリを立ち上げ、なにか変化がないか確認する。
そういえば、井出さんに相談しないと、と思っていてずっと忘れていたことがあった。
昴は、武装ゴブリンの画像以来、家からはゲーム機を使ってGNAをやっていることを井出さんに伝えていない。
昴は、GNAに、キャラクター「バル」や「ウルフソルジャー」を管理するアカウントは一つしかない。
そのため、最近、パソコンでGNAを遊んでいないことを怪しまれるのではないかということに、気がついたからだ。
これまでの話からは、恐らく、ネットダイアリにいたずらしたロシアからと思われる誰か、もしくは、組織は、GNAを遊んでいない昴に対して不審に思うのではないだろうか。
まだ、ゲーム機での操作は2日目。ゲームに入らないと、逆に、亮に怪しまれる。
「バルは、バイトどうだった」早速グランザッキーから、チャットが入った。
「いつもどおりだね」
本当は、いろいろとある。
「そか、今日はどこに行く」
まだ、ゲーム機での操作が怪しい昴だが、
「また、この前と同じように、東側から北に行こうか」
「飽きたかな。直接、西のゴブリンに行ってみようよ」
「直接か、まだ操作にあまり自信ないから、パーティをしっかり組んでから行こう」
あまり気は進まないのだが、亮には、パーティを少し強くしてから行くことを提案した。
「俺の友達は、みんな狩りに出ているみたいだけど、バル、誰か誘えそう?」
「こっちも、みんな狩りしているみたい。今いないね」
「ここで公募するか」亮が公募の合図を出した。
昴が、掲示板をチェックしている間、ある程度バランスのいいパーティが出来上がっていた。
二人とも初めての人であった。
「お初です」とお互い初めての人たちのようだ。
「武装ゴブリンの噂聞いていると思うけど、見に行くっていうツアーだから」
亮は続ける。
「経験値稼ぎは出来るけど、余裕のある攻撃で行きましょう」
パーティは、西のほうへと向った。
「このメンバーなら、ミスしても大丈夫だと思うけど、この先、ゲーム機でのプレイでは、みんなに置いて行かれるだろう」
そう思いつつ、レベルの低いゴブリンから倒していった。
「ちょっと、最近のゴブリン強くないかい」短剣のプレイヤーが言った。
「今、携帯で強化週間を提示されているらしいよ」スナイパーの人が答えた。
昴は、さっき見た掲示板には、その情報がなかったことを伝え、
「もしかして、どこかのカミンの独自企画かもね」
携帯版は、流行ものに飛びつく人が多いから、モンスターのパワーバランスが大きく変わる要素である。
ゴブリンは、見た目が人気ないという話だったので、人が操っているモンスターが少ないといわれていた西側だが、ここに、携帯民が流れると、ただでさえ、強い設定であるゴブリンやオークは、シビリアンにとって脅威になる。
「初期のモンスターを変更する条件って何かあったかな」と考えつつ、パーティは、ゴブリンを倒し、経験値を稼いでいく。
「今日は、やけに多い気がする。一地域内での数って決まっているんじゃなかったっけ」
「確か、ユーザのアクセス数に応じて、増える仕組みじゃなかったっけ」
「やっぱり、どこかのカミンが携帯民をゴブリンに誘導しているのかな」
「武装ゴブリンの噂から、携帯民をゴブリンに誘導するという高等テクニックか~」
「まあ、こっちは、その方が面白いけど」
短剣とスナイパーとでチャットしながら、ゴブリンを倒していく。
昴はぎこちないながらも、ゴブリン狩りパーティについて行った。
「俺、そろそろ終わるから、後退ということでいいかな」スナイパーの人が言った。
「武装ゴブリン会えなかったね」亮は残念そうだった。
「帰りますか」
パーティは、後退しながら、町に戻った。
亮と二人になって、
「やっぱ昴なんか変。普通なら、キーの配置変えるくらいで、こんなに下手にならないよ。なんかあった」
長年、一緒にゲームをやっている中だ。すぐにわかってしまう。
「キーボードが壊れて、ゲーム機でやっているんだ」
苦し紛れだが、まだ説得力ある。
「なるほどね。俺が教えようか」
「いや、無理でしょ。グランザッキーはいつも近接なんだから」
「そんなに違うか」
「ぜんぜん違うよ」
といいつつ、小さいころから前衛亮、後衛昴と決まっていた。
「アカウントを交換してみるのも面白いかもな」
亮の思いつきは、危ないものが多い。
「僕のドクのレベルを下げたくないからダメ」
「そこまで俺の信頼ないか。まあ、ゲーム機での操作については聞いてくれ」
亮と昴は、GNAを終えた。




