ネットダイアリ-30-
ネットダイアリに武装ゴブリン。これは、単なるいたずらか、それとも。
昴はすぐにネットダイアリを閉じて、パソコンを調べた。もちろん、昴の持てる知識を全て生かして調べる。
とはいえ、夜も12時近くになっており、限界はあった。
翌日、パソコンから悪意のオーラを感じつつ、何もなかったように学校へ行った。
いつもどおり、亮との会話だが、昴はうわの空。
「昴。また、なにかあったのか」
「・・・・」
昴には、あのネットダイアリに貼ってあった武装ゴブリンの画像で頭の中がいっぱいになっていた。
亮に軽く背中を叩かれて、我に戻った昴は、
「ゴブリンだっけ」
「いや、ゴブリンの話はしてない」
「ごめん。なんかゴブリンの夢を見ていたみたいだ」
またうそをついた。
「ただの武装したゴブリンでしょ。それって、あのツェットに報告するものか」
昴は、冷静になって、すぐに亮の口を押さえた。
「ツェットの名前はまずいぞ」
亮の耳元でささやいた。
学校では、そろそろ期末テストの時期にかかってきた。相変わらず、時々、世界史のノートを亮に貸し、期末テストを迎えようとしている。
亮は聞くことで、昴は書くことで、特別に勉強しなくても十分期末試験をクリアできる。学年上位とかを目指しているわけでもなく、この学校から推薦で大学行くほど、必死になろうという気はなかった。ただ、期末試験のための部活中止期間だけは、亮とすれ違いになる。昴には、グランソフトでのアルバイトがあるからである。
「昴は、期末テスト期間でもバイトあるの?」
「詳しくは聞いてないけど、あるんじゃないかな」
「それって、厳しいじゃん」
「厳しいって」
「ブラックだよ」
「いや、違うし」
「確かに、学生の期末試験なんか同じような時期にあるから、みんながいっせいに休んだらたいへんだからな」
確かに。考えたことがなかった。全国の学生アルバイトが、期末試験期間に休んだら、日本の産業は大きな打撃を受けるだろう。
「亮、お前すごいな」
「なにが?」
「その発想はなかった」
「だから、なにが」
「日本中で、期末試験に学生アルバイトが休んだら日本の企業たいへんだろ」
「おおお、考えても見なかった」
「いや、それ指摘したの亮だし」
「俺?」
亮は、頭を掻きながら、
「あっそうか、俺だ」
そんな真面目な馬鹿話をしながら帰っていった。もちろん、昴はグランソフトへと向う。
今日は、武装ゴブリンのことでおっちゃんに相談しないといけない。
いつもどおり、3階に上がると、美柑さんにあった。
「こんにちは。今、学校帰りね」
「早乙女さんは、大学生ですか」
私服姿の美柑さんを見て、昴は言った。
「高校3年。黒野君と同じ高校」
昴は単純に驚いた。
「え、でも私服じゃないですか」
「うち、すぐそこだから」
美柑さんが地下へのエレベータの番号を押し、地下へと降りていった。
「ねえ、黒野君のこと、昴君って呼んでいいかな」
「照れますね」
「あ、生意気言ってる。私、2つ年上よ」
美柑さんのめがね越しの目が昴をからかっていた。
「私のことは、美柑でいいよ」
「実はね。昴君のおかげで、ここでイラスト描けるのよ」
「僕ですか」
「そう。絵が下手だったから」
クスクスクスと笑った。
「・・・」
「傷ついちゃった?」
ごめんごめんのポーズをする美柑さん。
意外と小悪魔だ。
「井出さんがね。私がネットに載せていた絵を見て、スカウトしてきたの」
「そのとき、絵だけがだめなやつがいてね、と言ってたんだ」
美柑さんは続ける。
「ここにいる人たちは、イラストレータだって聞いていたの」
「ネット画家の有名人もいるらしいんだけど、ここの人、あまり、お話しないでしょ。まだ、何もわからないのよ」
考えてみれば、最初に、アルバイトで急ぎの案件を受けたとき、おっちゃんから「絵はダメか」と言われたことを思い出した。そういうことだったのかとやっと理解した。
薄々感じていたが、おっちゃんか、グランソフトが、カミンの権限を持っているのだろう。それで、新しいグラウンドやモンスターを作る作業を美柑さんなどに任せ、対価を払っているという事なのだろう。お金持ちの道楽だなと昴は単純にうらやましかった。
二人はエレベータを降り、例の作戦室空間を見渡し、空いている席を探した。
「昴君、隣に座らない」
「イラスト描きの邪魔じゃないですか」
「大丈夫よ。それより、ゲームプレイヤーとしての意見をほしいの」
美柑さんに手を引っ張られ、二つ並んでいる席に座った。
カミン権限の認証を見たいと思い、美柑さんの机を覗いた。
「昴君、積極的ねぇ。何を見たいの」
また、からかわれた。
「いや、どうやって始めるのかなと思って」
正直に答えた。
「同じじゃないの?」
「イラスト描くのだから、違うかなと思っただけで」
「なんだ。私を見たいのかと思った」
自意識過剰なのか、普通にからかっているのか。
昴からすれば、2歳しか違わないのに、美柑さんから見ればもっと離れている感じなんだろう。
美柑さんは、机に手を置き、GNAを始めたようだ。自動認証は同じだが、美柑さんの画面は、イラスト描き用の画面となって、表示された。
いつの間にか、6万文字超えてましたね。30で割ると、だいたい2千文字なので、なるほどと思ってしまいました。細切れすぎて、それまでの話の内容忘れてますよね。すみません。
毎日、10分程度で読み切れるでしょうから。
と言い訳をします。




