ネットダイアリ-29-
GNA遊びで慣らし運転中昴と亮の物語です。
家についてから、昴はいつもどおり、GNAを始めた。
「ネットダイアリの副題をGNAの冒険にするかな」
ここ数日、ネットダイアリは、GNAダイアリと化している。
「今日見つけた、武装したゴブリンを亮と一緒に探しに行くか」
ネットゲームの悪い一面だと思うが、毎日ゲームに繋ぎ、最低でも挨拶するのが暗黙のルールとなっている。毎日ではないにしろ、1週間以上見ないと、
「あいつやめたのかな」とか、
「もう引退か」などと言われる。
ギルドの中には、何日以上ゲームに来なかった場合、即追放というところもあるくらいだ。
なぜこう毎日、ゲームを続けられるかというと、単純に好きだからである。好きだから続けるし、どこかで、この現実離れした空間が、旅行気分にさせてくれるのだろうと思っている。
裏返せば、それだけ、この国が閉塞しているのだろうか。
そんなことを昴は思った。
「グランザッキー、今日、武装したゴブリン見たぞ」
「噂になっている。強いらしいな」
「レイドボスじゃないからな」
「バルさ、いつそれを見たんだい。だって今、接続したばっかりだろう」
やばい、つい、グランソフトでの出来事を口にしてしまった。
「ああ、携帯で見たんだ」
誤魔化した。
「あれっ?携帯のモンスターやるとバランスが崩れるって言ったのバルじゃなかったっけ」
よく覚えている。
「最近、シビリアンがうちらみたいに組織的な攻撃しているでしょ。シビリアンがそこそこ強くなってきたからちょっとモンスターも、と思ってね」
一度うそをつくと、そのためにうそを重ねなくてはならない。そんな、偽ストーリーを続けるだけの、ストーリーの構成の能力は昴にはない。そのうち亮には気づかれるだろう。
「なるほどね。でも、武装したゴブリンは戦わなくても見てみたいかな」
一旦、回避できたようだ。
「北側だったな」
いつもどおり、グランザッキーと二人でパーティを組み、狩りをしながら、パーティ参加者を募集した。
東側から徐々に北に向うコースを取った。
「自分の育てたウルフがこの辺をうろうろしているんだろうな」
「バルのウルフって、強いのか」
「そこそこかな」
「なんだかんだ言って、ウルフで遊んでいるんだ」
また元に戻っている。
話題を変えないと思っていた昴だ。
チャットが入ってきた。
以前一緒にパーティを組んだリリベルさんだ。
「見かけたので声かけました。一緒いいですか」
ゴブリンを倒しに行くわけでなく、北側を偵察に行くだけなのでパーティの参加を認めた。
「リリベルさん、今は、東側だけど、徐々に北に向うから」
「お初~。だったよね」
そういえば、亮とは初めてだった。
「はい、よろです」
「リリベルさん、音声認識使ってないから、チャット控えめになるよ」
「すみません」
「大丈夫ですよ」
「グランザッキー、余裕見せてるじゃん」
「あの、グランザッキーさんは、ザッキと呼んでいい」
「OK、OK」
まだ、チャットしながら、狩りを出来る区域だ。
今度は、パーティに飛び込んできた人がいた。
チェリーというキャラだ。
あまり、期待は出来ないが、女性かもしれない。
「参加していいですか」
「公募なのでいいですよ」
いつものとおりなのだが、パーティ募集の公募マークを点けたまま、グランザッキーとバルは狩りをする。
「お、チェリーさん回復師なんだ。バルの役目なくなるな」
また、同じことをいうグランザッキーだが、最近、攻撃特化型の薬品や爆弾、かく乱用の小型ロボも扱えるようになり、パーティの構成により、使う道具を変えるようにしている。
「もう支援職がいるなら抜けますよ」
「いえいえ、僕はドクなので、大丈夫です」
「楽しめればいいんだ。気にしないで」とグランザッキー
今回の4人のパーティは、リリベルさんが、目標のモンスターに初弾を打ち、襲ってくるところをグランザッキーとバルとで倒し、チェリーさんが回復に徹する形で、モンスターを倒していく。
「実はね。武装ゴブリンがこの辺に出たという噂があって、狩りをしているところなんだよ」
「その噂聞いた。見たい」チェリーさんが言った。
「そのゴブリン撃つ???」
「リリベルさん、撃たないで。どれだけ強いかわからないから」
「だね」グランザッキーとチェリーさんは答えた。
「ゴブリンの生息区域は、西側なので北側に来たのは、経験値稼ぎのためだと思う」
「そのまま放置していれば、経験値がたまってくるってことか」
「それはないよ。ある程度レベル差が出てくると経験値は増えなくなるし、モンスターは、まだ、回復薬を使えないはずだから、そのまま放置していたら、力尽きているかも」
「バル、詳しいな」
「ウィキにあったよ」
「もうウィキあるの。どこどこあとで教えて」とチェリーさん。
「本来なら、ライターの仕事なんだけど、ライターの手が回ってないんだろうな」
バルは、モンスターを倒しながら、チャットしていた。
グランザッキーもバルも音声認識チャットなので、くちかず?が多いが、リリベルさんは、キーボード操作のため、あまり、会話に入ってこない。まあ、会話に入るほどの余裕はないのだろう。
モンスターがベアの区域に入り、ベアモンスターを狩りはじめた。
昴がウルフを操作するの場合、10頭前後で1匹のベアを襲うというような動きをするのだが、シビリアンでは、どんなモンスターに対しても、あまり変わらない戦闘方法だった。
違うのは、ベアのほうが耐久力があるため、ある程度後退しながらの戦いになる。
「武装ゴブリンいなかったね。今日はこの辺で解散準備にしますか」
チェリーさんから提案があった。
「そうだね」
ちょうどいい時間かなと昴も思っていたので、後退しながら、安全そうな区域でパーティを解散した。
今日のダイアリのトピックは、十分あるかな。
ネットダイアリを開くと、すでに武装ゴブリンの画像が貼ってあった。
ゲームプレイならいくらでも書けるけど、現実との切り替えが難しい。事実、ネットゲームでの徹夜なんてざらだったから・・・




