ネットダイアリ-24-
GNAというゲームは、なんだろう。ますますわからなくなる昴であったが、手掛かりのグランソフトでアルバイトをすることを決めた。何かしら手掛かりがあるのだろうか。
やはり、全てはGNAの中にあるのだろうと昴は思い、自宅のパソコンだがGNAを始めた。
警察も昴のパソコンを監視していることからも、昴のパソコンも、ネットダイアリについても安全なのだろう。ただ、まだ、昴は完全には信用できていなかった。
GNAに入ると、早速、亮から連絡が入った。
「バル、今日はどっち方面行く?」
亮は、ゲームを満喫できる気分になっているようだ。対して、昴は、昨日と比べ、すこしは心が軽くなっていた。
「昨日、失敗したから、グランザッキーの経験値の補充をするよ」
昨日、グランザッキーは、倒れたことにより、経験値を失っていたのである。
「かなり、時間かかるとは思うけどね」
「うん。二人で狩りをすれば、少しは効率のいい経験値稼ぎが出来るでしょ」
「あり~」
今日は、二人でグランザッキーの経験値上げを中心にしてゲームを終えた。
翌日、昴が起きると、携帯にメールが受信されていた。こんなに朝早く亮は連絡してこない。恐らく昨日のツェットが言っていたメールだろう。
「黒野昴様。風間社長といえば、わかるかな。電話で連絡してあるかと思うが、井出さんを手伝ってほしい。もちろん、アルバイトなので報酬が出ることと思います。なにか相談事があったら、風間まで連絡ください。
フォートレス警備会社 風間 一」
「署長だという話は聞いていたが、社長の肩書きは聞いていない」
親父ギャグのようだ、と思い、ふざけているとも思った。
「確かにゲームなんだから、ふざけたネーミングもありなんだが、現実は、警察なんでしょ」と昴は口に出していた。
昴は、グランソフトでアルバイトを行うことをおっちゃんに告げ、学校にアルバイト届を出した。そのあとコンピ研に寄って、アルバイトのため、当面、コンピ研に顔を出せないが、大会には参加することを戸村に伝えた。
放課後、グランソフトに向い、いつもどおり、エレベータを上がり、応接室に入った。おっちゃん=井出さんはいなかったので、エレベータ前に立ったまま、部屋を見回した。
「なんとも殺風景な部屋だ」
昴は、まったく興味がわかない部屋の一面をボーと見つめていた。
しばらくすると反対側のドアから、おっちゃんが入ってきた。いつもの格好である。
「バイトの件ありがとね」
ちょこんと手を上げた。
「さて、昨日の番号でだいたい心配事は解決したかな」
フォートレス警備会社のことだろうか。
いや、あれではまったくわからない。昴は顔を横に振った。
「ツェットだったかな。あいつはめんどくさがりだからな」
同じような台詞を聞いた。
「今日は、お客の依頼がなさそうなだから、本題のGNAについて教えるか」おっちゃんは、手をあごに当て、なでる仕草をした。
「ちょっと待ってください。まだ、何もわかってないんですよ」
今まで、ずっと相手のペースで先にどんどん進んできたので、今の自分の置かれている状態を確認しようと、おっちゃんに言った。
「まず、GNAで何が起きているんですか」
「ツェットは言わなかったかな?まだ、真実を明かすことが出来ないって」
「ええ、聞きましたが、井出さん。井出さんでよろしいですか」
うなずくおっちゃん。
「井出さんとツェットとはどういう関係なんですか。警察なんですか」
「ツェットが説明したと思うけど仲間だ。単なる仲間だ」
「フォートレス警備会社ってなんですか」
「あれ?番号渡したでしょ。何も説明なかったの?」
「あそこは、警察ですか」
「あそこは、警備会社だよ」
「ツェットは、GNAの運営もやっているっていってました。違うんですか」
「それは、初耳だ。GNAの運営もやっているのか。警察庁もかわいそうだな」
おっちゃんは、世間話のようにあっさりしたものだった。
昴は、一息ついて、今度は、自分のネットダイアリのことを聞いた。
「じゃあ、僕のネットダイアリについては、どこまで知っているんですか」
「う~ん。基本的に全部だね。なんならコピーを持ってこようか」
すでにコピーされていた。
「日記をネット上にある画像で書く発想は面白いけど、意外とみんなやっているものなんだよ」
おっちゃんは、また、あっさりと言った。
「じゃあ、井出さんが僕のネットダイアリに書き込んだんですね」
「あの日のことは、ツェットの話を聞いて、私が作った1日だよ。驚いただろ」
自慢げな顔を見せるおっちゃん。
「何でそんなことをしたんですか」
「そりゃね。その前の日に、誰かが書き込んだ形跡があったから、バル君が注意するようにするためにわざと書いたんだ」
「・・・・・」
「まあ、その辺の話はおいおいわかってくるよ」
昴は、何を言っているんだという顔をしていた。
「それで、井出さんは、GNAとどんな関係があるんですか」
「あ、それそれ、これから説明しようとしてたバイトのことだよ」
おっちゃんは手招きして、エレベータへと向った。
昴は、仕方なくついて行く。
おっちゃんは、携帯に番号を入力し、エレベータを開ける。
「その格好で、外に行くのか。一緒に歩くのは恥ずかしい。それよりバイトは外なのか?」
昴はそんなことを考え、複雑な気持ちのままエレベータに乗った。
エレベータが開くとそこは、良くアニメや映画で出てくる作戦室のようだった。広い空間に10人ちょっといた。というより働いているみたいだ。
驚きを隠せない昴に、おっちゃんは言った。
「ここが職場だ」
いくつかの画面には、GNAの狩場が映っていて、戦闘を行っている場面もあった。
「これはどういうことなんですか」昴は声を上げて言った。
「いや、GNAのバイトだよ」
「いや、いや、いや」
声には出さなかったが、たかが、ネットゲームごときで、こんなに大掛かりな設備を作るなんて。
「当面、バル君には、ここで、バル君自身とモンスターの育成をしてもらう」
「この設備は何ですか」
「見てのとおり、GNAをプレイするところだが」
「こんな設備でGNAを?」
「今は、GNAの画面が見えているからそう感じるだけだが、基本的には情報監視を専門とする施設だよ」
いろんな、計測値やグラフやら映っており、同じ街にいるのかさえ疑った。
「バル君のネットダイアリもここから見てたんだけどね」
昴は、とっさにおっちゃんのほうに振り向いてしまった。
設備に気を取られていたが、3階から乗ったエレベータは、グランソフトの入り口ではなかったのか?
「井出さん、エレベータに乗ったのに・・・・」
「同じエレベータで地下施設に入っただけだ。あとで携帯番号を教えよう。くれぐれも携帯に番号登録しないように」
「はぁ・・・」
「とはいえ、番号は普通の番号じゃないから、携帯の電話帳みたいなものには登録できないようなものだけどね」
「あ、そうそう、バル君は、あの、ネットダイアリ消した?」
正直に言おうかどうか迷った。
「消しちゃってたら、こっちから送るから、続き書くようにして。もう一人、ネットダイアリにアクセスした人がいるみたいだから」
「だったら、このまま、ネットダイアリがないほうがいいじゃないですか」
「いや、いわゆる、おとりとしてネットダイアリをバル君のパソコンに置いといてほしいんだよ。誰が、覗いているかを確かめたい」
「警察のツェットじゃないんですか」
「警察じゃないことは、もう確認してある。早めに誰かを確認しないと全滅するから」
「シビリアンがですか?」
「そうだ。それだけは避けたい」
徐々に、真剣になっていくおっちゃんを見て、昴は、GNAが普通のゲームでないことを感じていた。
「まあ、まず、空いているところに座って自分のキャラ確認してみて。ここで自動バックアップするから」
PVの多い人の文は、簡潔で1行で読み終わるようにできているんですね。それがここの主流なんですね。真面目に書いてはいるけど、お試しなので。
自分を慰めています。




