ネットダイアリ-22-
GNAと警察、ネットダイアリ、謎のWEB会社と普通ならありえないようなことが重なり、平穏そうに暮らす昴だが。新たな進展はあるのか。
昴は、GNAをプレイしながら、今日会った、おっちゃんについて考えていた。そういえば、あのおっさんが井出さんなんだろうか。確認する余裕がなかった。
「バル、薬なくなった」
「・・・・」
「おい、バル・・・」
昴の手が止まっていた瞬間、グランザッキーはモンスターの餌食になってしまった。グランザッキーを失ったパーティは、グランザッキーに対し、復活呪文書を使うため、防御陣形になり、ひとりが呪文を掛けた。呪文詠唱にかかる時間が長いため、2人欠けた状態での戦闘が行われる。
「バルさん、準備不足の分、回復薬のお代はチャラね」
ファイターのサクラさんが言った。
もう一人のファイターは、
「kk」とチャットで返事があった。kkとは、OKのkであり、「了解」というときに使う。キーボードで使用する時間短縮のためのチャット用語である。
通常、支援職の昴が復活呪文書を使う役目だが、昴は、復活呪文書を用意してなかった。支援職としては、準備ミスであった。
昴は、回復薬を十分持っていたため、グランザッキーの復活までの間、何とかパーティの全滅を回避できた。だが、復活呪文書で復活したとしても、ほとんど体力は戻ってないため、グランザッキーは積極的に戦闘に参加できない。パーティは、回復薬で体力を回復しつつ、比較的安全な地域まで後退した。
グランザッキーの体力がある程度回復したころでやっとパーティは、回復薬なしで戦える状態になった。まだ、GNAでは、街以外には、安全地帯がないため、自分のレベルよりレベルの低いモンスター地帯が安全地帯になる。
「ここらでも、集団で来たら簡単にやられるから、あまり気は抜けないけど、さっきのところと比べれば、ソロでも何とかできる場所だからね」
グランザッキーが言った。
「グランザッキー、すまん。ちょっと、考え事してた」
「ノープロブレム」
こういう緊急事態には、音声変換チャットは楽だと感じた。
「今日は、この辺で解散しようか」
さっきのサクラさんが言った。
パーティが解散となり、みんな街へと戻った。
亮も昴もゲームを終え、普通のビデオチャットで話をした。もちろん、亮からの誘いだ。
「どうした」
「なんか、いろいろとあって、ふと考えちゃうんだ」
「警察のことか。まだ、吹っ切れてないのか」
もちろん、それだけでなく、ネットダイアリの件と謎のおっちゃんの件とがある。
「うん、そうだね」
「俺はもう信じたから。昴は、下手にパソコンのこと詳しいから疑り深いんだよ。ほかのGNAのプレイヤーは、気にしてないよ」
「そうなんだけどね。でも、頭から離れなくて」
GNAだけなら、亮と同じように吹っ切れていたのだろうが、ほかにも抱えている謎がある。
翌日起きたら、携帯にメールが届いていた。グランソフトからである。
「時間があったら、うちに寄ってくれないか。WEBの仕事が入ったので手伝ってもらいたい。バイト代は日払いにする。返信ください」
グランソフトには、寄ることを連絡し、登校した。
学校が終わり、コンピ研に、当面、顔を出せないと伝え、グランソフトに向った。路地裏に回り、例の携帯番号に連絡した。
やはり、エレベータが開いた。携帯番号がエレベータの開錠ボタンの代わりか?
また、同じような格好をして、おっちゃんがいた。ステテコの柄と色がちがうかな。
「バル君、来てくれてありがとう。早速、作業場に行こうか」
エレベータのある部屋は、応接用の窓のない部屋になっており、エレベータと反対側にドアがあり、おっちゃんは、昴をそっちに案内した。
案内された部屋には、パソコンが並んでいたが、ほかの従業員は、まったくいなかった。
「あの、働いている方たちは?」
あまりにも、意外な職場だったので、つい口に出た
「お、やっと口を開いたね。今まで、穴に引っ込んだネズミみたいだったのに」
「はあ・・・」
「昨日の話はあと。この依頼のとおりに作り上げてくれ」
どうってことのないネットの広告依頼だった。昴は、絵が下手なので、オリジナルの絵を掛けない。グランソフトが持つ、素材画を少し加工して、1時間もかからずに依頼を仕上げた。
「バル君は、絵はダメか。仕方がない、絵は外注かな」
「これではダメですか」
「いや、依頼はこれでいいよ」
よくわからないことを言われた。
「じゃあ、これ、バイト代」
封筒にも入っていない、一万円札を渡された。
「あの、あれだけでこんなにいいんですか」
「緊急案件だったからね。いいよ」
いいおこずかいだと思いつつ、
「本当に、いいんですか。絵がダメだって・・・」
「依頼では、絵について、手書きしろとは書いてなかっただろ。うまくできてたよ。やはり、ネットダイアリの腕だな」
昴は俯いてしまった。
「あ~、ごめんごめん。意外と気にしているね。そんなに気になるんだったら、ある人の番号を教えるからそこに電話しな」
おっちゃんは、メモに携帯番号を書いて昴に渡した。
「これ、だれですか」
「GNA仲間さ。かければわかる」
携帯メールで連絡くれればいいのにと思いつつメモを受け取った。
また例の応接室をとおり、エレベータまで送ってもらった。メモをズボンのポケットに入れ、ビルを出て家に帰った。
ネタに触れないように前書きは書いています。自分で読んでみると、やはり、ジャンルはサスペンスっぽいですね。ギャグ風に書けたらいいんだろうな。筆の進み方はサスペンスになるんだよね。何か意味あるのかしら。




