ネットダイアリ-20-
今自分が置かれている状況を確認する昴。仮想世界GNAと現実世界とで情報を集める。その先には何があるのか。
「カラシメンタイさん、狩りをしているかも。一旦メールを送ってみるか」
昴は、警察のうわさについて、少し書き、話がしたいと加え、メールを送った。
すぐに、チャットが返ってきた。狩場じゃなく、街中にいるそうだ。
「バルちゃ、元気してた w」
軽いノリでチャットが帰ってくる。これは、他のプレイヤーに読まれることがない1対1のチャットだ。
「ども。メルのことなんですけど」チャットでは、文字を打ち込む回数を減らすために単語を短くする。音声認識の機能があるGNAだが、普通に音声で会話するチャットでは、文字で打ち込む独特の表現が出来ない、そのため、まだ、文字で入力している人も多い。
「カラシメンタイさんも警察から何か連絡あたの」
「y、y、「ライム」ってメルにあた w」
会話の最後に付く「w」は、通常、「笑い」を意味するそうだが、ネットゲームのチャットでは癖になっている人が多い。
「じゃあ、そのライムって、キャラがいる???」
「メルからだからいるんじゃ w」
「そか」
「カラシメンタイさんは、信じた???」
カラシメンタイと入力するのがすごく面倒だ。ボイスに切り替えるかな。
「みんなのとこにきてるしょ。いたずらにしては大げさだね w」
「始まったばかりだし、楽しめればいいかな w」
「バルちゃのとこにも来たっしょ w」
「だね」
「だれから w」
昴は、ツェットの名前は伏せた。
「えと、「どらちゃん」だったと思う。チャットだったから」
「チャットということは、いる人ね w」
亮から聞いていたキャラ名を使った。はたして、「どらちゃん」とやらが、ゲーム内のキャラかどうか知らないが、一旦、ゲーム内であったことなので大丈夫だろう。
ただなぜ、亮も昴も、とっさに本物の警察官にあったと言えなかったんだろう。自分たちでも不思議だった。
「亮も無意識に、言ってはいけない何かを感じたのかもしれない。僕の場合とは別にね」
昴は、そのあと、カラシメンタイさんとGNA内の世間話をして、ゲームを閉じた。
もう3時近くだった。
時間的に、3時ぐらいまでゲームをやって学校へいくくらいでは、普段ならそれほど疲れは感じないのだが、あまりにもいろんなことがあり、眠りが浅かったのだろうか。昴にとっては、キツイ朝だった。
「昴どうしたんだ。あの後、ゲームにも来なかったし」
「ゲームに入ったときには、亮いなかった」
「うちに来たあと、すぐ帰ったなら、入れたでしょ。なにかあった?」
「パソコンのファイルの整理。最近してなくって」昴はごまかした。まるっきり嘘ではない。ネットダイアリを整理したのだから。
「ん?やっぱなんかあったんだな。あとで話してくれればいいよ」
隠し事があることは、亮にはバレバレである。昴は、目でうなずく程度に亮を見て、亮のGNAの話を聞きながら登校した。
「ここのところ、コンピ研に顔出してないな。2日だけだけどね」
そう思いながら、放課後、コンピ研に向かう昴だった。
部屋に入ると、有坂を除く、3人がいた。
「今日は、クラスの人を呼んで練習するから、昴は見ててくれ」
戸村が言った。珍しく外部から2人呼ぶらしい。
ドアが開いて、木下ともう一人入ってきた。木下は、やはり佐藤とは違う人物だった。
「あの、有坂は?」
「あ~、GNAが忙しいから、2週間くらい、帰宅組になるって言ってたな。有坂の腕なら、練習なしで大会出れるでしょ」戸村の信頼が厚い。昴よりうまいのは事実だった。
「昴は、自宅で練習な」
「え、はい」
昴のパソコンの状態を知っていたら、「コンピ研で練習しろ」となっていただろうが、ここはあくまで学校のパソコンである。昴も含めて、他の4人のパソコンと比べれば、学校のパソコンは性能が劣る。ちなみに戸村のパソコンは、江原が作ったものである。
昴はコンピ研にいても仕方なかったので、GNAをすると言って帰宅した。
家に着く直前、メールが届いた合図が携帯端末から感じた。
「亮かな。そういえば、今日帰るってメールし忘れた」
携帯を出して、開けてみると、登録されていないアドレスからのメールだった。
昴の携帯には、登録されていないところからのメールは、受け付けないよう、アプリでコントロールしていた。普通なら、迷惑メールが届いたとの表示になる。
「この前、警察からのメールは登録してたから、警察じゃないところからだ。もし、このメールが、ネットダイアリを書き換えた犯人なら、警察に相談できる」
一部の楽観を持ちつつ、メールを開けた。
空想科学(SF)としているのですが、今のところ現実から離れていないですね。SFを期待していた人には物足りないかなと書いている本人も感じ始めました。どっちかというとサスペンスに近いかな。感想お待ちしています。




