ネットダイアリ-16-
佐藤さんがいない?ネットダイアリを確認するため帰宅した昴は、さっそくネットダイアリの画像を確認する。果たして画像は。
昴は、自宅に戻り、すぐにパソコンに向った。自分を見つけるアプリは起動せず、ネットダイアリだけを開いた。先週の土曜日と先々週の土曜日の2日を見た。佐藤らしき人物が写っていた。
「これ、佐藤さんだよな」
昴は自分に聞こえるように、記憶を手繰った。
戸村さんから直接3年生の佐藤さんだと聞いたと思う。
「この画像をみんなに公開するわけにはいけないから、どうやって佐藤さんがいたことを説明するんだ」
ハッキングのことがバレれば、いくらコンピ研の中であっても、人として疑いを掛けられてしまう。御影あたりの腕前なら、難なく出来るんだろうけど、していたとしてもまず言わないだろう。有坂も同じだろう。
「まず、わかったことは、佐藤さんはいるということ」
有坂に聞いてみるしかない。GNAでのキャラ名か、なにかを聞けばよかったなと後悔していた。有坂とは、なんとなくそりが合わなかったこともあり、GNAでのプレイ状況については、カミンのこともあり、特に立ち入って話すことはなかった。
確認ができた昴は気を取り直して、GNAをはじめることとした。ネットダイアリで佐藤の存在が確認できて、ホッとしたのだった。
「今日は、まだ、亮は部活中だろうから、来るまで少しは経験値を貯められるかな」
昴は、いつもゲームを始めると、まず掲示板を見る。GNAに限らず、掲示板を見る。ゲームよっては、「ボード」、「アラート」、「イベント」などの名前があるが、ここGNAでは、掲示板となっている。GNAの掲示板には、シビリアンが書いた情報とライターが書いた情報がある。どの情報も正しい情報とは限らないが、書き手を見て、情報の信用度を計る。
「ドピンチさんの情報は、冗談交じりでいながら正確だ」シビリアンの掲示板をざっと見る。さすがに全部見るのは時間の無駄なので、気に入っている人たちだけに絞って読む。
ライターの掲示板は、全て読む。といっても、記事の数が少ないので1日分程度ならすぐに読み終わる。
男性ヒューマン「バル」は、GNAの職種で言うところの「学者」である。
まだレベルが低いので、目立った能力はないが、初期段階で、回復薬や強壮薬などの薬を作ることが出来、それらを配ったり、売ったりする。ただし、新たな発明のため、研究費用が必要なため、レベルが低い段階では、薬を売って研究費用を稼ぐという地道なプレイとなる。
亮は、その性格を地でいくような、ファイターである。ファイター装備には、長剣、短剣、拳、などいろいろとあるが、亮は、拳を選んでいる。
亮のために薬を作りつつ、最近、開発した爆薬で援護しながら、モンスターを倒している。
「今日は、ソロだから、あまり無理しないで東側で狩りをするか」
昴が東に向おうとしたとき、「ジンナイ」さんから、パーティの誘いがあった。ジンナイさんは、長剣のファイターである。一度、亮と一緒にほか数人でパーティを組んだことのある人だ。
「今日は一人かい」
「いつもいるグランザッキーは、まだです」
普通のゲームは、本名を知っていると、つい本名が出てしまうのに気を使うのだが、GNAの学習機能で亮と言った場合、「グランザッキー」に変換するように登録できる。これは便利だ。ただ、キャラ名に「アキラ」が出てきた場合注意が必要である。
「ちょっと、あと一人誘って西側行かないか」
「いいですよ」
だいたいのゲームでのパターンだが、近接攻撃職、遠距離攻撃職、支援職がいれば、効率的に狩りが出来る。昴は支援職であり、ジンナイさんは、近接攻撃職である。ちなみに、亮は「ジンナイ」さんと同じ近接攻撃職である。
ジンナイさんは、遠距離攻撃職の友達を誘うらしい。
「ボイスチャットをしない人なんで、文字変換にするよ」
ジンナイさんが言った
「了解です」
ジンナイさんのフレがパーティに入ってきた。
「よろしく~~」チャットが流れた。
名前は、「リリベル」だった。リアルなボイスチャットを避けたことから、恐らく女性ではないかと昴は思った。
昴は、ボイスチャットの文字変換で
「よろしくです」と返した。
リリベルさんの職業は、スナイパーだった。まだ、初期装備のようで、たいした威力がない装備だった。
「当面、リリベルさんをサポートしようと思ってね」ジンナイさんは言った。
「そしたら、東側がいいんじゃないかな」
「そうかもしれないけど、まずは、ベース稼ぎを、と思って、リリベルさんにクエストを取ってもらったんだ」
クエストで経験値は得られないが、通貨であるベース稼ぎも重要である。
「なるほどね」
「すみません。お願いします」リリベルさんから返事があった。
ジンナイさんと昴がかなり効率的に狩りを行い、クエストを3回クリアすることが出来た。
「助かります~~」
「いえいえ、僕もドクなのでベース稼ぎ重要なんです」
「回復薬を売ってくれないか」とジンナイ
「今、在庫ないんで、町に着いたら作ります」
「材料なら渡すから」ジンナイさんから材料をもらい、街へと戻った。
回復薬をジンナイさんとリリベルさんに渡し、材料をもらったからといって、特にベースを二人からもらわなかった。二人に、友人登録をお願いしたところ、こころよく受けてくれた。
「これで、狩りが楽になるぞ」と昴は思った。
リリベルさんはともかく、ジンナイさんはうまかった。
亮が入ってきた。
「お、1つレベル上がってきたな」亮の第一声だ。
「多めに薬作ったから、少し奥にいけるぞ」
「強気だな。でも、1レベルぐらいじゃ、対して変わらないよ、このゲームは」
「そうだね。じゃあ、いつもどおり」
亮と二人で始めた。いつものことだが、僕らのパーティをいろんな人が出入りしながら、夜中近くで狩りを終える。
「まだやっている人がいっぱいいるな~」
昴は、フレの状況と、画面の様子からまだGNAの人口が多いことに安心した。
7日間連続で書きました。かなり、きついです。たかが2000文字程度なのに、トラック1周をぜいぜい言って走っている自分がいつも見えます。