ネットダイアリ-14-
ネットダイアリに書き忘れた場違いなWEB会社。入り口らしきものがあったが。
いつもなら、電車で二駅のところを、歩いていくことにした昴。学校から駅へ向う道からはずれ、住宅がまばらに建っている道を歩いた。
特に意味はないのだが、この近辺は、監視カメラらしきものはない。代わりに気になった被写体があれば、携帯端末で撮影しながら、ふらふらと歩いて帰る。
「衛星からは見えるんだろうな」
昴は、衛星にハッキングを掛けたことがない。というより、さすがに衛星のハッキングは本格的な犯罪だろうと思っていた。
「最近の衛星は、1メートル単位で見えるらしいから、監視するつもりならば、世界中の人間が監視されているんだろうな」
そんなことを考えながら、自宅のある駅の近くまで来た。
「あ、そういえば」
昴はあのWEB会社のことを思い出したのである。
「ネットダイアリをつけてなくても覚えているもんだ」
と思いつつ、そのビルに向って歩き始めた。
「あなたもインターネットで宣伝してみませんか」
ビルの3階に張ってある広告を見つけたが、ビルの入り口には、2階の学習塾までの表札しかない。
昴は、路地裏になっているビルの裏手に回ってみた。何の変哲もないエレベータがあった。
「もしかしたら、ここが入り口かな」
昴はエレベータに近づく。
普通あるはずのボタンがない。
「まさか、手をかざすと開くとか言う、最新のセンサーがついていたりして」
エレベータに向かって手を振っている姿は、はたから見ると奇妙な行動をしているように見えるのだろうが、路地裏なので誰の目も気にする必要がない。
エレベータの周りを丹念に調べ始めた昴だが、特に新たな発見はない。監視カメラがあるわけでもなく、センサーが設置されたような痕跡もない。普通の人より、電子機器についての最新情報を熟知しているのだが、その昴でも、エレベータを開ける手段が見つからなかった。昴としては、非常に探究心をそそる状況なのだが、残念ながら短時間では、これ以上のものは見つからない。無理やりエレベータをこじ開けることも可能だが、明らかに不法侵入になるので、今日のところは諦めることにした。
「これほどのトピックはないな」と昴は思い、エレベータのある路地裏を何枚か撮影し、自撮りもして自宅に戻った。
「今日は、あのWEB会社の謎をトピックにしてネットダイアリを書くぞ」
いつもとは違い、ネット上の画像の検索をする必要はない。携帯端末からパソコンへデータを移動させるだけだ。移動は一瞬で終わる。まずは、書けるだけの電子機器情報を見て、状況を整理していた。書く内容が決まったところ、
「さて、画像の選出とコメントをなんて書こう・・・」
ネットダイアリを開くともう今日のことが記されていた。
表題には、「謎のWEB会社」とあった。昴が書こうとしていた題である。
驚きを隠せない昴は、自分の記憶をたどっていった。確かに、自分が書こうと思いながら考えていた内容なんだが、さらに、一字一句同じような気がした。路地裏のエレベータのいくつかの画像、自撮りの画像、最後のほうには、時間的に逆行するが、付け足しに書かれていたまばらな住宅地の画像。「衛星でしか写らないだろう」ということも書かれていた。ネットダイアリとしては、完璧なのだが、昴自身は書いたという記憶がない。
食事の時間となり、今度は、GNAをはじめた。ネットダイアリのことを忘れたいため、無意識に考えることから逃げたのである。
GNAに接続するとすぐに亮からビデオチャットが入った。
「今日は部活なかったのに遅かったじゃない」
ビデオチャットの亮を見て、現実世界に戻った感じがして、仮想世界のGNAに入っていった。仮想世界で安心感を得る昴であった。
投稿をするたびに、投降することが頭によぎる。プロットとのずれがなかなか埋まらなくて、だましだまし投稿している感じだ。最後の一人になるまで戦うぞ。と思いつつ、社会人の私は、学生に戻り、登校するようになりたいと思っている。笑