ネットダイアリ-13-
新しいゲームGNAに熱中する昴たち。少しずつゲームの内容がわかってきたようだ。いつも気になる有坂の存在。
結局、昴は、日曜日のネットダイアリをさぼってしまった。散歩から帰ってきたときに書くべきだったのだろう。昴にとって、GNAは、我を忘れるほど、新鮮で興味深いゲームに感じたのだろう。
もちろん、亮とのレベル差が開くのも悔しかったことが一番の理由である。
昴は、今日見た、謎のWEB会社のことはすっかり忘れ、次の日を迎えたのであった。
いつもどおり、亮と登校しながら、GNAの話に盛り上がっていた。
「昴、GNAになにか希望ないか」
突然後ろから、昴の肩に手を乗せ、有坂が声をかけてきた。
「おお、カミンの有坂さんか」
明るく亮がいうと
「有坂でいい」
ぶっきらぼうにいつもの有坂らしい返事だった。
「昴、何がいい」
「いや、まだ、はじめたばかりだし、何といわれても」
昴は突然、希望を聞かれてもこれというものがなかった。
「そうだね、シビリアンが大人数で倒すようなボスがいいかな。よくいうレイドモンスターだよ」
亮は陽気に、というより無思慮な発言をした。
「シビリアン殲滅シナリオか。シビリアンがいなくなったらどうなるかって言うのも面白い展開かな」
有坂は、まじめな顔していった。
「カミンって、そんなことも出来るのか」
「機密事項だ」
有坂は、ニカッと笑い、先に学校に入っていった。
「あいつちょっと気持ち悪いな」
亮がボソッと言った。
クラスでは、GNAのモンスター役をしている同級生たちが、シビリアンを何人倒したなどと話していた。ゲームの性格上女子の参加者は少ないと思われるが、隠れGNAもいるようだった。モンスターキャラを保有している人たちは、自分で操作していない間は、自動育成される。通常モードでは機械的な動きをするモンスターではあるが、通常と異なる行動も登録できる。レベルの低いシビリアンだけを襲う、とか、別種のモンスターを襲うなど、いくつか設定できる。設定の中には、自分と相手の強さを比較して、戦闘の可否を判断する機能も備えられている。そのため、設定によっては、何もしないでもモンスターが育っていくらしい。自動育成の機能がある分、シビリアンより、モンスターのほうがレベルを上げるまでの道のりは遠いらしい。
当たり前だが、シビリアンには、モンスターのような自動育成機能はない。
「神崎って、GNAでシビリアンやってるって聞いたけど、キャラ名なんていうの」
モンスターをやっているクラスの一人が亮に聞いてきた。
「いやだよ。お前ら集団でボコるつもりだろ。キャラ名教えねぇ」
「対戦だったらどうだ」
「いや、それでもキャラ名バレるって」
「まあ、こっちはグループが出来たから、集まれば町ひとつ奪えるぐらいになったし」
こんな風に人の本性がゲーム上に現れるものだ。
マスコミはよく、ゲームのせいで人は、凶悪犯罪を起こしたように報道することがあるが、ゲームで遊んだことがある人からすれば、ゲームでその人の本性が表層に出てくるだけで、ゲームにより、人の本性が変わるのではないと思っている。
「その点、有坂は、不気味だ」
また、考えていることをボソッと口にした昴。
「また、なんか言ってるぞ」
亮は昴の耳元でつぶやいた。
苦笑いをする昴だった。
今日は、たまたまコンピ研の面々は集まらない。各人自分の分野の情報集めの日ということで戸村から部活用のネット伝言板に書かれていた。
今日は、ゆっくり寄り道しながら帰るかな。昴は帰る支度をして、学校を出た。
自分もネットゲームをするので、つい、ゲームの内容に踏み込んでしまいがちになり、お話がフォークボールのごとく、落ちている・・・なんとかしなくちゃ