ネットダイアリ-11-
今日はGNAの初日である。14時開始って書いてあったな。なんて中途半端な。
昴は、ふと考えた。
「そうか!」
休み時間だったからいいものの、つい声に出してしまった昴。
「突然なんだよ。昨日なんかあったのか」
亮が振り向いた。
「ほら、今日、GNAが14時に始まるでしょ。なんで14時なのかなと思ってね」
「あ~それね。気にしてなかった。単純に会社の都合じゃね」
「GNAって世界中の人が参加するじゃない。恐らくメインターゲットは、東アジア諸国だろうから、それらの国の時間に合わせたんじゃないかな」
「なるほどね。でも、14時って、東アジアでは、お昼休みくらいだろ」
「日本じゃないんだから、ほかの国は、金曜日の午後は休みだよ。と言っても本当の休みじゃなく、休みモードという話だよ」
「そっか~。俺も休みてぇ」
「確かに、学校は休みやすいけどね。そういえば、有坂来てんのかな?」
「有坂って、あのコンピ研のやつか」
「うん。有坂はカミンなんだ」
「マジかよ~。もう俺ら逆らえないじゃん」
「いや、カミンは創造する権限はあるけど、破壊する権限はないから」
「でもさ、モンスターを作れるんでしょ。強いモンスター作られたら終わりじゃん」
「噂によるとそんなに簡単じゃないみたい。単純にお金をかければ強いモンスターを作れるわけじゃないらしいよ」
「え!モンスターつくんのにお金がいるの!」
「みたいだよ」
あっという間に休み時間から授業となり、その授業も終わり放課後となった。
「俺さぁ、今日は帰ってGNAを始めるから、部活パス。先にやってるね」
「えぇ~。僕は明日また対戦するから、一応コンピ研に顔出さないと。そういえば、キャラ名どうすんの?」
「できれば、グランザッキーにする予定」
「ぷっ。名前負けしそう」
「うるせぇ。昴が来る前に、ガンガンにレベルあげとくから」
「亮に先を越されるのは悔しいな。まあ、それはそれで面白いかも。先に行っていろいろと調べておいてね」
「おぉ。あとでな」
亮と別れた後、昴は密かに携帯端末を開き、GNAのモンスターを始めてみた。
「ウルフを選ぶかな」
案の定、初期モンスターは、弱いものだらけだ。
携帯端末の上の方には、3つの丸印があり、赤・黄・青の3色でシビリアンがいる方向と大まかな数がわかる仕組みとなっている。もちろん赤色が危険な方向である。シビリアンと自分の強さの関係も相手の頭上にある3色で判断できるようになっている。モンスターのNPCに混じって、シビリアンを倒していくとレベルが上がり、強くなっていくらしい。ギルドというような集団は存在しないらしいが、NPCでないモンスターに攻撃合図が送れるらしい。
「さすがに、グランザッキーは見つからないな」
モンスターNPCに混ざって、シビリアンを襲う昴。これはこれで機械的に動かない的を撃つシューティングゲームみたいで面白い。加えて、相手がプレイヤーだと思うとなおさらだ。
「これって、そのうち規制がかかるんじゃないかな」
初期段階なので、シビリアンのほうが弱い状態なので、単独行動しているプレイヤーは、モンスターの餌食になるのは仕方がない。
パーティのシビリアンが来た。一気に殲滅していく。
「なるほど、初期段階から、パーティを組んでいくのがこのゲームの定石か」
と思ったら、昴のウルフは死んでいた。
ちょうど、コンピ研についたところだった。
「昴、遅かったな」
戸村が振り返って言った。有坂姿は見えなかった。
「有坂はどうしたんですか」
まあ、有坂のことだから、GNAをやっているのだろうと昴は思った。
「今日は、休んでいるらしいぞ。この前の対戦が決定した時、特に返事なかったからな」
「戸村さん、GNAですよ。有坂はカミンとして選ばれたんで今日は、それ集中しているんじゃないかな」
「まあ、いい。今回は、佐藤に加えて、部員じゃないが、俺のクラスの木下に協力してもらおう。一応、やったことあるから」
昴としては、GNAに時間を割きたいのだが、まあ、コンピ研の活動にも利がないわけじゃない。
「明日の対戦校は、うまいわけじゃなく、いわゆる胸を貸してくれ的なところなので、手加減というわけじゃないけど、昴、お前が指示を出せ」
「僕ですか。ちょっと無理があるんじゃないですか」
「俺は、昴の指示に従って動くから、そのくらいの練習しとけ」
戸村に押し切られ、明日の対戦の指揮を任されたのであった。
頭の半分に、明日の対戦がのことが残り、あと半分は、GNAのことでいっぱいになった頭で帰宅した昴は、さっそくパソコンの電源を入れた。一応、ネットダイアリ用の画像検索アプリを起動しておき、GNAを立ち上げた。
「さて、キャラ名:バルは使われてないだろうな」
昴は、ヒューマンの男性キャラを作り、ゲームを始めた。
「うわっ、人がいっぱいいる」
この時間なら、ほぼ世界中の人がアクセス出来る時間だ。
ゲームの見た目は、普通のRPGである。
「できれば、亮と合流したいのだが」
ゲーム内の機能でグランザッキーを呼び出してみた。
「おお、昴か?」
「グランザッキーで登録できたんだ」
「お前こそ、バルなんてどこでもありそうな名前でよく登録できたな」
「亮どこにいる」
「もう狩場に出ているよ。もうちょっとしたら、そっちに行く」
亮と合流後、少し狩場に出て、早めにゲームを終えた。こういうゲームはいくら時間があっても足りないから、昴は、ある程度の時間で切り上げるようにしている。一応、明日の対戦もあるし。
「今日のトピックは、GNAだな。ゲームの画像は、撮り放題なのでGNAで遊んでいる最中、いくつも画像を保存した。いわゆるSSというやつである。
「なんか、GNA日記になりつつあるな」
次の日の対抗戦。昴は1戦目で勝ちはしたが指揮の要領を得なかったものの、2戦目では、まあまあの采配で相手校を破った。思った以上に対戦が早く終わったので、昴は家に帰り、さっそくGNAを始めた。