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Fencer Fantasy  作者: 志摩ししお
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始まり <invocation>

脳内妄想を文字にしてみました。

ここはどこだ


何もない草原に寝ていた。

目は冴えている。頬をつねる。夢ではない・・。感覚的に夢の世界にいるわけではないとすぐにわかる。


「は・・・? おかしいだろ???」 

誰もいない草原で独り言。当然何かが起こるわけでもない。


俺の名前は神代 諒(じんだい りょう) 普通の高校生2年だ。

いや、そこら一般人とは違う。将来を有望視されたアスリートだ。

1年で全国高等学校総合体育大会、通称インターハイのフェンシング競技でベスト8、2年になった今年は優勝した。

カデ(15歳から17歳)の世界大会でも優勝した。これから日本のフェンシング界を背負う期待の新鋭だ。


今は2月。俺はフェンシング部のキャプテンだ。部員は男女合わせて15人。決して大人数ではないし、俺以外は高校から始めた初心者ばかりだ。

既に、秋の地区予選を勝ち抜き、春の選抜の出場権を得ている。当面の目標は、キャプテン、エースとして団体で春の選抜の頂点を獲ることだ。(※春の選抜に個人戦はありません。) 

今はオリンピックなんてどうでもいい。俺は仲間と高校の頂点に立ちたい。

あいつら引っ張って表彰台まで連れて行ってやるために必死こいて練習する。


それが俺の日常 のはずなんだが・・?


どうしてこんなところにいるのか、見当もつかない。記憶が欠落しているのか、そんなわけはない。昨日の晩飯のおかずは覚えている。ちゃんと自分のベッドで寝たはずだし・・・


「ん・・?」


自分の身なりに目を向けてみた。長袖上下のジャージである。いつも就寝時にパジャマ代わりにしているものだ。だが、茶色の胸当てが付いている。触った感触としては革だろうか・・。

下にも目を向ける。俺の剣だ。フェンシングの3種目のうちの1つ、フルーレで使用されるものである。


「そうか」


俺は理解した。これは異世界に飛ばされたとかいうアレだ。

間違いない。学校では隠してリア充をしているが、俺はオタクだ。ありがちな話だからすぐに分かったぜ。


なんらかの目的のもと、俺はこの世界に召喚されたのだ。

現実世界での俺の能力を考えれば、これは強くてニューゲーム。

当然だろう? 間違いなく、知恵を振り絞って村を発展させたりすることは俺に求められていない。


俺が思いついた可能性は2つ

1つは世界を救う勇者として呼び出された。

もう1つは、ありとあらゆる世界、時代から戦士を集め、最強を決める戦いに呼ばれたということだが・・・


ブーーーーン


目の前で音がした。何もない空間から見たことのない小さな生物が飛び出してきたのだ。

「・・・」

流石に言葉がでない。どう見てもゴブリン。ファンタジーの世界で登場する伝説の生物である。

これはPOPだ。ゲームの世界における敵の出現。何度も見てきた光景である。

「あぁ~、そっちね・・」

この時点で確信した。俺は勇者だ。少なくとも対人目的で呼び出されたわけではない。


ナルシスト的な性格と、オタク知識が、この現実離れした出来事へ順応させた。

そして、目の前の異形の生物への恐怖はない。


なぜなら・・・ファンタジーにおけるゴブリンは・・・弱い!!


床にある剣を拾う。


「Rassemblez! Saluez!(ラッサンブレ、サリューエ) 」

フェンシングにおける挨拶である。


右利きである諒は、右足を正面に向け前に出す。左足は90度開きやや後ろに下げ、そのまま腰を落とす。剣を持った右肘を曲げ、剣先(ポイント)を相手の頭に向ける。


フェンシングにおける構えアンギャルド(en garde)


約10メートル先からPOPしたゴブリン1体。

特徴的なのは、胸に赤い宝石をついていることと、手にこちらと同じく刺剣をもっていること。


俺と同じ土俵で戦おうってのか。フェンシングのスタート時の間合いは4メートル。


フッ フー 軽く息を吐く。


喉が渇く。ビビってるのか? 

んなことねぇよ。ワクワクしてんだよ


ゴブリンが近づき、止まる。約4メートルだ。

インターハイチャンピオンの構えである。隙があるわけがない。ゴブリンも迂闊に近づけないのだろう。


合図を出す審判はいないため、空いた左手で「こいよ」と合図を出す。


ゴブリンが地を蹴る。間合いを詰め突きにかかる。


(うおっ・・・!)


狙いは頭部。

諒は最低限の動きで1歩下がり、突きを躱す。


(こいつマジかよ・・・)


諒は驚いたのは、頭部への突きである。

フェンシング競技には3つの種目があるのだが、それぞれルールが違う。

諒が得意としているのは、そのうちのフルーレという競技であり、


得点として認められる有効面は、臀部を除く胴体両面のみである。 


(とりあえず、殺しに来てるのはわかった。だが・・)

諒は脚を使って攻撃をよける。ただ後ろに下がっているだけである。だけどゴブリンは突けない。


(遅いし汚いんだよ・・そんなんじゃアタックとってもらえねぇぞ)

フルーレには攻撃権というものが存在する。これは先に攻撃したほうが優先権を持つという原則のことである。簡単に言えば、もし攻撃された場合には、自分自身が突かれる可能性がある場合には相手を攻撃せずに、まず自分を守らなければならないということである。基本的にはだが・・・


そして今、相手は攻撃権を持って攻撃(アタック)を行った。ここで避けた諒が前に出れば攻撃権が移行し、同時に突いたとしても諒の得点となる。


だが、これはスポーツなどではない。刺し違えは死を意味する。

そのためこちらだけ突くということしか許されない。


ここで1つ問題。フェンシングと剣道、殺しあったらどっちが勝つの?

議論の余地はあるが、純粋な殺し合いでは剣道が勝つ。理由はフェンシングだと、よほどの急所を突かない限り、1撃で殺すことは不可能だからである。剣道は突かれることを覚悟でむかっていけば、フェンサーは1撃で斬られてしまう。つまり、肉を切らせて骨を断たれるわけである。

フェンシングでは突けば試合は止まり、仕切り直しとなる。

だが、これは殺し合いである。同じ突剣同士でも、肉を切らせて骨を断たれれば死ぬことになる。


だから諒は不用意に攻めない。

ヒットアンドアウェイを繰り返すか、隙を突き1撃で仕留めなければならない。

諒は何度も後ろに下がり避ける。足捌きだけで剣を避ける。まったくブレない体幹。


(きた! ここ・・!)


ムキになって大きく動き、相手が体勢を崩したこのタイミング。

一気に間合いを詰めフェンシングにおける攻撃動作を行う


剣を持った腕を伸ばし、利き腕(剣を持っている腕)側の足を大きく踏み出して、もう一方の足を伸ばした突きの姿勢 ファンデブー(fendez-vous)


身長172センチ 体重65キロ

スポーツ選手、ましてやトップアスリートにしてはあまりも小さな体。

このガタイでなぜ、トップレベルで戦えるのか?


諒の強みはスピードである。

フェンシングという競技は、14/1000秒で争うスピード重視のスポーツであり、その中でも高校生の頂点に立てるほどに極められた一閃。避けられる道理はない。


フェンシングにはありえない場所を突くような技もある。

正面に立ってる相手の背中を突く技なんかもあったりするのだが・・


(胸に明らかな弱点つけてて、逃すわけねえよなぁ!!!)


胸部への突き。有効面である。


宝石に刺さる剣。宝石から光が出る。

宝石だけを残し、ゴブリンの体がポリゴンとなり砕け散る。


(間違いないな。これゲームの世界だ・・)


「勝った・・・フフッ ハハハハハハハ」

草原に倒れこみ渇いた笑い声をあげる。

笑わずにいられるか。俺は勇者だ。


これから始まるんだ。俺の伝説が・・


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