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マログリフルにて4




「もう、探さなくてもいいじゃん!」


「そんなに怒らないでよ。怒るとすぐ蹴る癖、よくないよ」


「ふん、にーたが不安になること言うのが悪いんだもん」


 二人は白い球体が蹴り飛ばされて飛んで……そして落ちたであろう辺りにいた。町はずれ……この辺は元々は森だったところ切り開いたらしく、大きな切り株や太い倒木がいくつも転がっていた。しかし、入り口の方とは反対側だったせいか、その後開発は進まず手つかずだったのだろう。腰ぐらいまである藪が地面を覆っていた。カラルは拾った細い木の枝を使い藪をはらいながら進んでいた。


「それにしたって、蹴り飛ばすことないでしょ。あ~あ、怪我してしていないかなぁ」


「わかんない。知らない」


 オロオロしながら探すカラルに対してミルルは頭の後ろのちょうどポニーテールの直ぐ下で両手を組み、ふてくされていた。少し上を見上げており、もちろん探すのなんか手伝っていない。


「この辺、この辺だったよね」


 カラルは必死で探してた。怪我していないか心配と言うこともある。それに加えて、見たことのない魔物……


(なんとか連れて帰りたいなー)


 そんな思いも抱いていた。




「にーた、だいぶ日が傾いたよ……もう、帰ろうよ……」


 ミルルはいつの間にか大きな倒木の幹に膝をそろえて座り、膝に肘をつけ、頬つえを突いて、必死に探し回るカラルを頭動かさずに目だけで追っていた。


「……そんなにがんばらなくても……」


 時折つまらなそうに足をパタパタしてたが、探し回るカラルを見ているうちにふくれっ面だった表情は少しずつ溶け、いつの間にか申し訳ないと言う気持ちがちょっとずつ表に出てきていた。


「……にーた、ごめんね」


「え? なに?」


 ミルルの独り言のような小さな声に、カラルは聞き取れないながらもすぐに反応した。


「な、何でもない!」


 ミルルは聞こえないと思って言ったつもりだったのでビックリし、そう大きな声で言い捨てると木の幹に立ち上がった。そして飛び降りようとした時だった。


    カサ


「あ、居た!」


「え? どこ?」


「あっち!」


 ちらっと白いものが見えた方向を指さした。カラルはミルルの指す方向に大股で藪をまたぐように向かった。


「そっちのほう!」


 ちょっただけ動いたおかげで見えたのだろうか。


「どの辺?」


 今は、その白いものは見えていないが、幹の上から声を上げおおよその場所へ誘導していく。


「その辺!」


    むにゅ~~


「ム~~~~~~~~~!」


「わっ!」


「どうしたの?」


「踏んじゃった~~~っ!」


 カラルはらしくない大きな声を上げ終ると、その場にしゃがみ、藪に消えた。




    ◇




「よかった、大丈夫みたい。打ち身はあるけど、毛が長いから擦り傷もないみたい」


 カラルは白い球体の前にしゃがみ、撫でながら状態を調べていた。その手触りはやはり固い毛玉だが、少し押すと心地よい弾力も感じた。


 ミルルは立ち上がったまま、やっぱりちょっと拗ねるように空を見上げるフリをしていた。




 カラルははーっと深く息を吐き、一瞬ミルルの方を見てから、右腕をプルッと震わし、ふんわりとした暖かみのあるオレンジの光を手のひらに作り出した。


 ミルルはカラルの視線とその光に気がつき、ゆっくりと近づいてきた。


「にーた、な~にそれ」


 視線はその光に釘付けだった。


「暖かそう……」


 その光に近づくとそのオレンジの光の風にミルルの前髪がゆれた。


「ミルルが怪我した時にもやってあげたことあるよ。覚えてないかな」


「この感じ、何となく覚えがある。結構前……おっきい木から落ちた時……」


 ミルルは瞬きもせず、光に心を奪われているかのように光を見続けていた。


「うん、そう」


「でも、全然痛いの直んなかった……」


 表情は同じにそう答えた。


「あは……そうだったね、あ、あの時はね」


 カラルは苦笑いの後、見てろと言わんばかりに、ぺろっと舌で下唇を一舐め。その光を白い球体の怪我したところにそっとあてがうと、光はすっと球体の中に吸い込まれていった。


「……ム……ゥ?」


 白い球体は小さく声を出すと、直ぐに赤いガラス玉のような目を開いた。


「おお」


「ふう……。ああ、よかった。僕の治癒が竜にも効いたよ。さ、もう大丈夫だよ」


「ムゥ? ムゥ?」


 毛でなにをやっているか、わかりにくいが、どうやら竜は自分の体を口や前足で確認しているようだった。一通り無事が分かると、今度は大きさに似合わないコウモリのような白い翼を広げて見せた。


「うん。大丈夫。よかった。拾ったときより元気そう」


 カラルはほっとしたように微笑みながら、赤い目の丈夫辺り……おそらく頭と思われる当たりをそっと撫でてやった。


「ム~~ムルルルッ」


 甲高い声を鳴らしながら。撫でるカラルの手に自らも擦り付けるように体を動かしている。


「ミルル、ほら、元気になったよ」


「あ、うん」


 ミルルは少し申し訳なさそうに竜から一歩下がったところにしゃがみ様子を伺っていた。カラルの手にじゃれているそれはやっぱりかわいく見えた。


「白ちゃん、ごめんね」


 ミルルが勝手に命名して謝りながら一歩近づくと、竜はビックリしたように慌てて翼を広げた。それは威嚇のようにも見えた。


「あは、怖がっているのかな」


 カラルが少し肩で笑いながら言った次の瞬間、その翼を上下させ、ふわっと飛びあがったと思うと、カラルの肩の直ぐ上に移動した。そしてすっと翼をしまうと、ぽふっと肩の上に乗っかった。


「なに、お礼? いいよいいよ。僕らもケガさせちゃったしね……。ちょっと、毛が痛いよ」


 竜は目を細め「ルルル」とのどを鳴らしながら、カラルの頬に体をすり寄せていた。


「あ、いいな」


 ミルルがそう言うと、竜は一瞬体を傾けた。


「なんか、考えているね。ミルルが気になっているみたいだよ」


 カラルはそのしぐさで竜の感情を何となく感じ取って、そう言った。ミルルは少し照れくさそうに、そっと右手を差し出してみた。


「ひゃ」


 その瞬間、竜はカラルの肩からジャンプし再び翼を広げ、そのままミルルの頭の上に乗っかった。


「な、なに?」


「ミルルにも、お礼かな。蹴られたこと、知らないしね」


「ム~ゥ」


 ミルルの頭の上の竜は翼をしまい、たぶん座りこんだ。


「つ、連れて帰ってもいいかなぁ」


 頭の上に乗られてウキウキしているミルルだったが、カラルには竜の赤い目が勝ち誇ったようにもみえた。


(あれ? もしかして、足蹴にしているってことなのかな。ま、ミルルがよろこんでいるから内緒にしておくかな)


「白ちゃん、一緒に行く?」


「あ、そうだね。そろそろルフルに帰らなきゃね」


 そう言ってカラルが立ち上がった時だった。


「ム~、ミルルル……」


「にーた……今、あたしの名前呼んだよ」


 少しこもった発音だったが、二人ともそう聞こえていた。カラルは荷物をまとめながら、笑いながら答えた。


「あは。僕がさっきから呼んでいたから、覚えたんだね。すごいな、理解して話しているのかな?! 単純に音真似しているだけかな」


「そっか。白ちゃん、そう、あたしがミルルだよっ! 他に何か話せるかな?!」


 嬉しそうに頭の上の竜に語り掛けた。


「ムームー……ムー?」


 少し悩んだような音を上げた後、言いにくそうに音を発した。


「ム~。ゥカラルル?」


「白ちゃん、すごーい」


「ええっ!」


 浮かれるミルルに対し、カラルは驚き、大きな目を見開いて白い竜を見ていた。





早く冒険に出たい^^;

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