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カミサマなんているはずない!  作者: 雨雪みぞれ
妹なんているはずない
2/2

妹なんているはずない2

ズズズ…。


 お茶をすする音が、アパートの一室の居間全体に響き渡る。

玄関にいた少女と話すべく、俺は少女を家の中に入れた。

「ぷは~~!やっぱり兄貴が入れるお茶はうめぇなぁ!」

大きな声で俺の入れた緑茶を褒め称える少女。

しかし、そんなのお構いなしに俺は話し出す。

「んで。お前誰?」

そう俺が聞くと、少女はきょとんとした顔になる。

「嫌だなぁ。兄貴は、かわいい自分の妹の顔も思い出せないのか?」


バン!

机をたたく音が居間全体に広がり、場は静寂に包まれる。

「だから、お前は誰かと聞いている!」

「………兄貴」

少女は少し怖かったのか体を縮めて、心なしか震えている。

「………いるはずねぇんだよ。あいつは。………………夕はどこにもいねぇんだよ!死んじまったんだ。2年前に…」


 そう。もう一人の妹、時雨夕しぐれゆう。歳は紅葉と同じ14歳の中学2年生。

苗字が違うのは、親父の浮気が原因。いわゆる、腹違いの妹。

俺のお袋が紅葉を身ごもってるのと同時に、夕の母親も身ごもった。そして、紅葉も夕も全く一緒の日に出産された。

 しかし、俺と紅葉のお袋は紅葉を生むと同時に他界。帰らぬ人となった。

そのまま俺と紅葉は親父に連れられて住むことになった。

夕も一時の間は母親に連れられて幸せに暮らしていた。

しかし、ある日突然、夕の母親は失踪。

夕も、俺と紅葉と同じように親父に育てられた。

こういう生活も悪くはなかった。

だが、そう思ってるのは、俺と紅葉だけかもしれない。

俺は兄妹のなかで血筋が通ってない夕を気遣い、夕に優しくした。優しく、優しく、とても優しく。

いつの間にか俺は紅葉のことに無関心になっていた。


そんな中2の秋ごろ。

紅葉は夕に…。


ドン!



「…兄貴?」

その一言で我に返る。

「………夕」

俺は思わず妹の名前を口にしてしまったが、こいつは妹の外見をしていて、妹じゃない。

「……夕じゃないよな?」

今度は優しく問い詰めてみた。

「兄貴はほんとに感がいいね。あたしが夕じゃないってすぐに見破るんだもん」

彼女は夕じゃなかった。

一瞬、そのことでホッとした。だが、同時に悲しみもあふれてくる。

「………そうか。夕じゃないんだな。なら、お前は誰なんだ。」

「ふふん。知りたいかい?」

「いいから、話せ」

「…ハァ。ノリ悪すぎ!」

少しため息をつきながら彼女は自己紹介を始めた。

「あたしは神様。あなたの亡くなった妹の意思を引き継いだ神とでも言おうかしら」


こいつは何をいってるんだろう?

神様なんて、いるはずないのに。

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