【1‐4】 Sniper Girl
この物語は、実在もしくは歴史上の人物、団体、国家とかその他固有名称で特定される全てのものとは、何の関係もありません。
あと、作者はVRMMOに疎い方ですので結構、やりたい放題です。
ゲームの世界から脱出する方法が存在するのなら、大人しくソレに従うしかないと直樹は思う。
「(内側の世界からバグやハッキングで脱出しようとしてもどうせ削除されるのがオチだ。…外界からの助けを待つのもムリに等しい)」
パニックにはなっているだろうが、向こう側からゲーム世界へ干渉することなど不可能だと直樹は考えた。
「…とにかく、ドラゴン狩りに行かないと始まらないか」
というわけで、直樹は町の外を一人で歩いていた。
木製の門を通り抜けた先には見事な紅葉で彩られた山道があった。
「(町人によれば、街から西に出た山が武者修行の場として有名らしいし…しばらくはここで経験積んでおかないとな)」
プレイヤーの始まりの場所はランダムなので、世界中のどんな場所にも強い敵や弱い敵が現れる。
なので強い敵に遭遇してしまうこともあり得なくないのだ。
「(レベル1の俺の前にレベル30とかの敵が出たら…死ぬな)」
直樹は誰もいない紅葉の山道を歩く。
街での情報収集によれば、アマテラスから隣のエリアへ進むにはこの山を越えるしか方法がないそうなのでもう少し人がいそうなものだと直樹は思っていたのだが、人影は全く見当たらなかった。
直樹は黒のブーツで枯葉を踏みながら山を登る。
「…ん?」
直樹は立ち止まった。
そしてしばらくの間、耳に神経を集中させる。
「(何か聞こえる…)」
直樹は遠くで聞こえる声を察知したようだ。
サムライの特性として神経の過敏化があるので耳を尖らせればこの先に何があるのかが分かってとても便利だ。
「(……悲鳴?いや、人間の声に混じって何かが──)」
直樹は目を見開いた。
「(声がコッチに向かってきてる)」
直樹は冷や汗を垂らした。
念のために刀に触れる。
そしてゆっくりと前へと進んでいく。
音を立てないように注意する。
「(…間違いない。こっちに来る!)」
直樹は目の前の木々に囲まれた薄暗い森を睨む。
ガサガサと草の擦れる音が聞こえてくる。
そして、直樹の予想通りにソレは現れた。
「助けてくれぇ!!」
「うわぁああ!!」
目の前の森から西洋風の鎧を装備した槍使いの男性とインディアンのような服装をした弓使いの男性が必死の形相をしながら現れたのだ。
二人は直樹に目もくれずに全速力で道を降りていった。
「ランサーとアーチャー!?」
どちらも戦力にしては申し分ない存在だ。
直樹はそう考えるとバックステップで森から間合いを取る。
『ガァアアアアアアアア!!』
木々を押し倒して現れたのは巨大な大蛇だった。
右目には矢が刺さっており、失明しているようだったがそれでも元気そうだ。
「大蛇…!?」
直樹は抜刀すると構える。
大蛇の頭の上に表示されているポイントは『60』。
そしてその隣に小さくつけられている赤色のドクロマークは5つ。
「(5人も殺したってことか!?)」
プレイヤーを殺したモンスターはプレイヤーの初期ポイント『10』を喰らって大きく進化する。
つまり、目の前の大蛇は元のレベルが『10』だったモンスターというわけだ。
「5人も殺した相手に勝てるかってんだよ……!」
直樹はギョロリと左目を動かす大蛇を見て腰を引く。
大蛇は舌を動かすと大きな口をあけて直樹へと襲い掛かった。
「ちぃっ!」
直樹は噛み付きを右に転んでかわすと大蛇の皮膚を刀で斬りつけた。
『シャアアアアア!!』
「やっべ!」
直樹は大蛇の尻尾攻撃を前方に滑り込んで回避する。
暴れっぷりから見ると、直樹の攻撃はまったく効いていない様だ。
「くっそ…」
直樹は攻撃をかわしながら攻撃していくが致命傷が与えられない。
致命傷は頭なのだろうが、高すぎて刀が届かないのだ。
「ぐふっ!?」
直樹は身体に尻尾が巻きつけられてしまい、身動きが取れなくなる。
大蛇は口を大きく開き、口元へと直樹を近づける。
「ヤ、ヤバイ!!ヤバイ!!」
刀は地面に刺さっている。
絶体絶命のピンチだ。
直樹は暴れるが全く効果はない。
『シャアアアアア!!』
「!!」
涙目で直樹は目の前の光景に絶望した。
─終わった。
「危ない!」
誰かの声が聞こえた瞬間、ファンタジーな世界に似合わない音が数回ほど鳴り響き、大蛇の動きが止まった。
そして大蛇の巨大な身体が横にズゥン!と音を立てて倒れる。
尻尾が緩み、直樹は脱出に成功する。
しかし、直樹は呆然としており、間抜けな声で「へ?」と呟いていた。
「大丈夫ですか?」
直樹は声のした後ろを振り向く。
「…女性」
そこには赤色のスカートに黒のニーソ、白色のシャツを着た女性が立っていた。
腰にはホルスターが差されている。
ということは─
「スナイパー…?」
「あ、はい。…一応、スナイパーという職業です」
女性はお辞儀をする。
直樹はソレを見てハッとし、女性に感謝の言葉を申し出すことにした。
「助けてくれてありがとう。俺はサムライをやってる藤元 直樹っていうんだ。えーっと…君は?」
女性は銃を仕舞うと直樹の顔を見て挨拶した。
「私は小林 真央です。えーっと、一丁拳銃使いのスナイパーです」
少年と少女は邂逅した。
物語はここから始まるのだ。