【1‐1】 Melancholy of Lonely boy
この物語は、実在もしくは歴史上の人物、団体、国家とかその他固有名称で特定される全てのものとは、何の関係もありません。
あと、作者はVRMMOに疎い方ですので結構、やりたい放題です。
夜空に花火が打ち上げられる。
「…綺麗だな」
「所詮はバーチャルリアリティです。…現実世界の花火のほうがもっと綺麗ですよ」
中世ヨーロッパのような町並みが一望できる丘の上で少年と少女は話す。
小さな町だが、噴水のある広場で豊作を祝うためのお祭りが行われているのだ。
「現実世界ねぇ…。最後にホンモノの花火を見たのは何年前なのやら…」
少年は地面に寝転がりながら打ちあがる花火を見続ける。
「ここは町に近いとはいえども、町の外です。…常に武器を持って警戒しておいてくださいね」
「わぁーってますよ。…目の前で何回人が死ぬシーンを見てきたと思ってやがる」
少年は傍に置いている刀を持ち上げて隣に座る少女に見せつける。
「…私達、何時になったら元の世界に戻れるんでしょうね」
「1週間経てば元の世界に戻れるじゃん」
「…それまで生きていられるかわからないのに?」
「生きてるよ。…いや、絶対に生き続けてみせる」
少年は決意する。
「お前だって、こんなバーチャル世界で18年の人生を終えたいと思うか?」
「嫌ですよ。…私はまだやりたいことがあるんです」
「だったら最後まで生きる意志を持てよ。…それが先輩ゲーマーからの忠告だ」
「先輩って…。私達、同い年なのに?」
「ゲームをやり込んでたゲーマーとして忠告してるんだ。…どんなゲームでも最後まで諦めるんじゃねーよ」
少年は起き上がると隣で体育座りしていた少女の顔を見る。
「…昔の偉い人は言いました。人生とは世界で最も難しいゲームであるってな」
「…」
「セーブ機能もコンティニュー機能もないゲームなんだぜ、人生って。…これも同じだよ」
「だったら生き残るのなんて益々難しいじゃないですか!」
「うるせぇーな。…現実世界で勝ち組だったお嬢様よ。人の力がないと何も出来ねーのかよ」
「……」
「…まぁ、お前のトコのムカツくオヤジさんに頼まれたからには最後まで面倒見てやるけどさ」
少年は立ち上がると背中と尻の部分を叩いて汚れを落とす。
そして刀を腰に差すと少女に手を差し出した。
「ほれ、とっとと次に行こうぜ」
「…はい」
少女は少年の手を取った。
そう、これは第二の人生と呼ばれる物語であり─
人間が未知の脅威に立ち向かった物語である。