第一話 Archer on Luzon Island
架空戦記創作大会2026夏に「お題➀鹵獲兵器が活躍する第二次世界大戦をテーマとした架空戦記」で参戦です。
今回はGrokやchatGPTの助力を借りて、大日本帝國陸軍が8.8cm高射砲Flak18を鹵獲してコピー生産し、それを対戦車自走砲や56口径8.8cm戦車砲に仕立て直したものが大東亜戦争やソ連による満洲侵略に対する防衛戦で活躍する架空戦記『極東のアハト・アハト』、始まりです。
1945年3月始め頃、フィリピン、ルソン島北部、国道9号
バギオに続く山道を、白い星が塗られた何両かの大きな(太平洋基準)戦車と半装軌車の群れが進んでいる。その戦車の主砲は短いが、太平洋戦線では最も頼れる対戦車火器の一つだった。
その先頭を走る戦車のキューポラに仕込まれた潜望鏡を、車長である軍曹が覗いて辺りの様子を伺っている。
先頭を行く戦車小隊は先程大日本帝國陸軍の機動一式四十七粍速射砲から僅か50ydという至近距離で放たれた徹甲弾により戦車1両を失いながらも、バギオに向けて進軍を継続している。
彼等はアメリカ第6軍第14軍団に所属して、大日本帝國陸軍が布いた防禦陣地を迂回することでバギオを衝くべく国道9号を進んでいる第37師団の先頭集団とそれを支援する第775独立戦車大隊B中隊である。
そんな中、先頭を走る戦車が爆発して砲塔が打ち上げられる。
「Muzzle flash, 1 o'clock, 1,100 yards!(発砲炎、1時方向、1,100ヤード!)」
後ろに続いていた戦車の車体前面機銃を操作する副操縦手が叫び、小隊内に忽ち伝わる。
「Target one o'clock, eleven hundred yards, gun flash!(目標1時方向、1,100ヤード、発砲炎!)
OPEN FIRE!(撃ち方始め!)」
報告を受けた小隊長は、直ちに反撃を命じる。
エンジンと履帯の音の他は静寂であった山道は忽ち砲声の轟く鉄火場となる。
近くに居る半装軌車も装備しているM2ブローニング重機関銃を発砲炎の目撃された場所に撃ち込んでいく。
発砲炎が目撃された戦車小隊の1時方向距離大凡1km先は75mm榴弾と12.7×99mmBMG弾から成るゲリラ豪雨が襲う。その弾量は大日本帝國陸軍の“そそっかしい”対戦車陣地を破壊して安全を担保することになるだろうと思われる程であった。
そうして戦車小隊の生き残りである2両の戦車は主砲である37.5口径75mm戦車砲M3を乱射しながら道路脇へ退き、茂みや起伏にその足を隠す。
半装軌車の後扉からは米兵が飛び出して戦車の後へと散っていく。
「Contact! One tank destroyed by AT fire, muzzle flash engaged at 1 o'clock 1,100yd. Request artillery.(接敵!1時方向1,100ヤードに発砲炎、敵対戦車砲火により戦車1両が破壊された。砲兵の支援を要請する。)」
麾下の兵力を半数まで討ち減らされた小隊長が大隊本部へ直接砲撃支援を要請、これを受けて第775独立戦車大隊から第37師団の師団砲兵である第136野砲兵へと要請を回し、発砲炎が目撃された場所に105mm榴弾砲M2A1や155mm榴弾砲M1が榴弾を叩き込む。
そうして砲弾と銃弾のゲリラ豪雨によって身動きが取れなくなったであろう“敵対戦車砲陣地”へ、先頭を代わった戦車小隊のM4A3中戦車4両と歩兵から構成される小さな戦闘団がゆっくりと前進を始める。
30分後、発砲炎が目撃された場所に達した小さな戦闘団が目撃したものは、第775独立戦車大隊B中隊と第136野砲兵が砲弾で作り上げた無数のクレーターとクレーターで途切れながらも一直線に続く――箒のようなもので何かを掃いた跡だけであった。そこには砲の残骸はおろか誰かが砲撃または銃撃で死傷したことを示唆する痕跡さえも残っていなかった――ただ一つ木で作られた機関銃を模した玩具を除いては――
「We plastered a dummy! The real bastards suckered us and slipped away.(ダミーだよ!本物のジャップは俺達を騙して逃げ去ったんだ。)」
その場に居る米兵たちは苛立ちと怒りに打ち震えている。
「Decoy position! Wooden MG only, no gun, no bodies. Swept withdrawal tracks. Request new fire mission on likely escape routes.(欺瞞陣地!木製機銃のみ、火砲無し、遺体無し。撤退経路を掃いた痕跡有り。予想退避ルートへの射撃を要請する。)」
小さな戦闘団の指揮官である歩兵中隊長は上級司令部に報告を送った。
その頃、1km先のM4A3を正面から撃ち抜いて撃破した日本軍の小さな一隊――班というには少々大きいが部隊と呼称するにはあまりにも小さ過ぎる――はバックというにはあまりにも速い速度で移動している。
彼等は対戦車自走砲に数名の歩兵を乗せて米軍の猛砲撃を避けていた。現に彼等が元居た方向からビリビリと空気を震わせながら連続する爆発音が轟いている。
「軍曹殿、どうやらアメさん、既に俺達が逃げ去った後だと気付いたようですね。」
歩兵科一等兵が九九式短小銃を手に対戦車自走砲の主砲砲身の傍らにてエンジンの排熱で暖を取りながら彼等の指揮官に軽口を叩く。
「全く、コイツがホニIだったらとっくに御陀仏だっただろうな。」
対戦車自走砲を指揮する砲兵科軍曹は軽口に応じる。
「本車は砲が後ろ向きですからね。お陰で撃ったらすぐ逃げられます。まあ、弾がクッソ重いのが玉に瑕なんですがね。」
と対戦車自走砲の装填手である砲兵科二等兵は愚痴る。
「何しろコイツの主砲はラ式八糎高射砲という、5トンを超えるクッソ重い高射砲ですからね。まあ、お陰でM4シャーマンを一撃でやれるのが最高ですけどね。」
対戦車自走砲の砲手である砲兵科兵長が装填手の愚痴に道理を以て答える。
「この一式八糎八対戦車砲は有力な敵戦車をやるために開発されたからな。まさか、アメさんがまだコイツに耐えられるような戦車を用意出来ないとは思わなかったがな(笑)。」
車長、もとい砲を指揮する砲兵科軍曹が笑いながら対戦車自走砲こと一式八糎八対戦車砲を次の待ち伏せ地点へと進めていく。
そして彼は3年半前――昭和16年9月頃に一式八糎八対戦車砲を装備した部隊へ配属された時のことを思い起こしていた。
という訳で、今回出演の架空兵器は何処かで鹵獲したFlak18の対戦車自走砲Ver.たる一式八糎八対戦車砲です。
用語紹介
大きな(太平洋基準)戦車
M4A3中戦車シャーマンは30トン級の中戦車ではあるが、対する大日本帝國陸軍がメインとする中戦車は九七式中戦車(15トン強)なので……
半装軌車
第二次世界大戦期の米陸軍主力APC。
歩兵1個分隊を纏めて輸送可能。
ドイツ製の半装軌車に比べて実用性と機動性が高い。
オープントップ、StG44にすらぶち抜かれる軽装甲、そしてあおり無しと防禦が脆弱過ぎるという欠点が存在している。
レンドリース向けの廉価版としてM5ハーフトラックが存在する。
実は履帯だけでなく前輪も駆動する。
機動一式四十七粍速射砲
第二次世界大戦後期に於ける大日本帝國陸軍の主力対戦車砲。
待ち伏せと近距離かつ側背からの射撃によりM4シャーマン中戦車に対してかなりの活躍を見せた。
とはいえ威力が足りないと判断したためか大日本帝國陸軍は九〇式野砲を対戦車砲として使い出すことになる。
ちなみに、九七式中戦車や一式中戦車の主砲は同じ弾薬を使う一式四十七粍戦車砲である。
バギオ
ルソン島北部の大日本帝國陸軍部隊を指揮する司令部があった。
アメリカ第6軍
フィリピン攻略を担当する合衆国陸軍の軍の一つ。
軍司令官はウォルター・クルーガー中将。
連合国軍南西太平洋地域総司令官マッカーサーの指揮下に配備されている。
現在は南方軍という中南米と西インド諸島を統括する統合軍となっている。
第14軍団
第6軍隷下の部隊。
麾下に
第37師団(第129.145.148の3個歩兵連隊基幹)
第40師団(第108.160.185の3個歩兵連隊基幹)
第25師団(第27.35.161の3個歩兵連隊基幹)
第158連隊戦闘団
第13装甲団
第6レンジャー大隊
などが存在している。
国道9号
バギオを通るフィリピンの主要道路。
第37師団
合衆国陸軍の歩兵師団。
なお第二次世界大戦期の合衆国陸軍の歩兵師団は唯一自動車化や機械化がされているのが普通だった模様。つまり実質アメリカ陸軍装甲擲弾兵師団。
第775独立戦車大隊
合衆国陸軍の戦車大隊の一つで、アメリカにおいて独立戦車大隊の戦車は歩兵を支援するための戦車。
フィリピンはルソン島の地形と過去の戦訓に基づいた戦術(本文参照)によって大日本帝國陸軍の待ち伏せ攻撃を捻じ伏せることで国道9号を突き進んでいる。
副操縦手
アメリカの副操縦手の主なお仕事は車体前面に装備されている機銃を撃つこと。
M2ブローニング重機関銃
現代でも現役な御長寿兵器にして重機関銃の最高峰。
今回は半装軌車に装備されたものが反撃で使用されている。
実はM4A3中戦車にも装備されているのだが、如何せん場所が場所なので今回は出番無し(砲塔の後ろなので今回のシチュだとかなり使い難い)。あと太平洋戦域では戦車に上がってきた日本兵に勝手に使われて随伴の歩兵などが洒落にならない大損害を被ったという事態が発生したこともあって外した車輛もわりとしばしば居るそうで。
37.5口径75mm戦車砲M3
アメリカ陸軍が開発した75mm戦車砲シリーズの2番目。
M3中戦車の後期型やM4中戦車に主砲として装備された。
派生型として航空機搭載型のM4と軽量型のM5、及びM5の車載型であるM6戦車砲が存在している。
師団砲兵
師団に常設されてる砲兵の部隊にして師団のメインアタッカー。
師団に所属していたり師団に配属されたりしている部隊をその火力で支援するのが役割。
放列砲車重量
第一話では本文には出てこないけど、解説上必要なので記載している。
定義は砲本体と砲架を含む戦闘準備状態での重量であり、日本ではkgを使うのが一般的(日本ではlbを日常使いしてる人ってかなり稀ですからね)。
牽引砲の性能を見積もる際に結構便利であり、一般に重いほど砲としては高性能なのだがその代わり取り回しや取り扱いが難しくなる。
本作で大日本帝國陸軍が国府軍から鹵獲したFlak18が各種自走砲の主砲として活躍するのはFlak18のコレが凄まじいのが原因と言っても過言では無い。
105mm榴弾砲M2A1
米陸軍師団砲兵のDS大隊に配備されてる22.5口径105mm軽榴弾砲にして楽器。
放列砲車重量(砲本体と砲架を含む戦闘準備状態での重量)は2,258kg。
最大射程は11,155m。
1962年に「105mm榴弾砲M101」と改称される。
自走砲型としてM3ハーフトラック車台の「T19 HMC 105mm自走榴弾砲」やM3中戦車車台の「M7プリースト」及びM4中戦車車台の「M7B1プリースト」及び「M7B2プリースト」が存在している。
ちなみに、派生型の一つにM4(105)やM4A3(105)中戦車に搭載されている「105mm榴弾砲M4」が存在する。
155mm榴弾砲M1
米陸軍師団砲兵のGS大隊に配備されてる24口径155mm榴弾砲。
放列砲車重量(砲本体と砲架を含む戦闘準備状態での重量)は5,806kg。
最大射程は17,886m。
1962年に「155mm榴弾砲M114」と改称される。
自走砲型として155mm自走榴弾砲M41や155mm自走榴弾砲M44が存在している。
砲弾と銃弾のゲリラ豪雨
発砲炎が目撃された場所に大量の榴弾と銃弾を叩き込む対待ち伏せ戦術。
当然ながら弾いっぱい使うので気軽に使える戦術ではない……のだが第775独立戦車大隊などで多用されていた。
戦闘団
師団以下の規模の各部隊を中核とする小規模な臨時編成の諸兵科連合部隊。
ドイツ國防軍やドイツ武装親衛隊の聯隊戦闘団であるKampfgruppeが非常に有名。
アメリカ陸軍が機甲師団限定でドイツのKampfgruppeを真似したのがコンバット・コマンドである。
ちなみに、第二次世界大戦後に行われた「ペントミック」改編で作られた「旅団」はコンバット・コマンドの常設版である。
M4A3中戦車
第二次世界大戦期に於ける連合国軍の主力中戦車の戦車用ガソリンエンジン搭載型。
アメリカで製造開発されて主にアメリカ陸軍で運用された。そして第二次世界大戦後に供与された。
朝鮮戦争ではM26よりも高い機動性により高い評価を得ていたそうである。
主にヨーロッパ向けな52口径76mm戦車砲搭載型や重装甲型のM4A3E2にHVSSサスペンション装備型のM4A3E8にソ連向けのM4A2といったバリエーションまでもが存在している。ちなみにソ連ではT-34-85よりも優秀な中戦車と評価されて最精鋭部隊に配備された。尤も、これらは太平洋が舞台の本作では満洲国を侵略するソ連軍のM4A2と戦後に日本に供与されるM4A3E8を除いて完全に空気なのだが。
九九式短小銃
第二次世界大戦期の大日本帝國陸軍の主力小銃。
タイミングがタイミングだけに微妙な評価をされがちなのだが、銃身膨張という割と重大な不具合への対策や威力強化を図って開発されたので開発を避けるのは余り得策とも言い難い。
陸上自衛隊にて64式小銃や89式小銃に二脚として引き継がれた単脚や径空脅威対策の対空照尺など割と先見の明がありそうな備品が附属している(なお戦争の激化に伴い省略されてしまう模様)。
対戦車自走砲
対戦車戦闘用に高初速砲を車輛に積んだ自走砲。
ドイツで盛んに開発されて戦線投入された。
本作では大日本帝國陸軍がクッソ重いFlak18を対戦車砲として運用するために開発したAFVが事実上の主役を務める。まあ大日本帝國陸軍は重量級火砲用の牽引車あんまし持ってないから仕方無いね。
ホニI
大日本帝國陸軍が開発した自走砲。
砲兵科と機甲科の共同プロジェクトであり、それ故に機甲科が九〇式野砲を装備したホニIを一式砲戦車として運用するという一幕もあった。
派生型に九一式十糎榴弾砲を搭載したホニIIや密閉式固定戦闘室に変更したホニIIIが存在している。
ラ式八糎高射砲
本作の主役。
Flak18は実際に長江に配備されており、それを鹵獲する機会は皆無では無いという事実から本作『極東のアハト・アハト』が産み出された。
尤も放列砲車重量が5トン以上と非常に重い(野戦重砲兵が扱う九六式十五糎榴弾砲すら5トン以内に収まってる)ので本作では対戦車自走砲になったり自走対空砲になったり戦車砲となったりするし大日本帝國陸軍の機械化が史実よりも推進されたりする。
まさか、アメさんがまだコイツに耐えられるような戦車を用意出来ないとは思わなかったがな(笑)。
T26E3(後のM26パーシング)「呼んだ?」
G-20「君制式前だし今対独戦の途中だよね。」
M26パーシング「ダウンフォール作戦で対日戦デビューの予定だったからね。」
一式八糎八対戦車砲
本作オリジナルの対戦車自走砲。
詳細は次回以降。




