『「病弱な従妹が心配だ」と私の治療費を横領してメイドを口説き回っていた婚約者様、そのメイドは私の護衛(男)ですよ? ~国の公金を使い込んだ偽善の騎士、夜会で実態を暴露されて無事に詰む~』
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このお話は、病弱な従妹をダシにして善人ぶる婚約者が、知略令嬢にボロ雑巾のように捨てられる短編です。
約5分で読めるスカッと展開ですので、お気軽にお楽しみください!
「リリア、君は残酷だ。リゼットは今、生死の境を彷徨っているのだぞ?」
王立夜会の中心。エドモンド・ヴァルモント伯爵令息は、悲劇のヒロインを守る騎士のような面持ちで溜息を吐いた。
エドモンド.......「婚約者の君を放っておくのは心苦しいが、私は人として、苦しむ彼女を見捨てられない。……今日も彼女の枕元で祈り、夜を明かした私を責めるのかい?」
周囲の貴族たちから、私を蔑むひそひそ話が漏れる。
「なんて慈悲深いエドモンド様……」
「それに比べて、リリア様は嫉妬に狂って。あんな病人を妬むなんて、公爵令嬢としての品格を疑うわ」
私は扇で顔を隠し、キーッと金切り声を上げた。
「許せませんわ! 私との夜会よりも、あんな死に損ないの従妹が大事だと言うのですか!」
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これよ、これ。
周囲が私を「冷酷な悪女」と見なし、エドモンドを「聖人」と崇めるほど、後の転落が楽しみになる。
私は扇の陰で、獲物の喉元を狙う毒蛇のように目を細めた。
(さあ、登り詰めなさいエドモンド。貴方が積み上げた『偽善の塔』が高いほど、墜落した時の音は心地よいはずよ)
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エドモンドが「病弱なリゼットを支える聖人」を演じ始めたのは、半年ほど前のことだ。
リゼットは、かつて国を救った英雄の末裔。その血筋ゆえ、彼女には国から多額の『国家特別療養支援金』が支払われ、民衆からも多くの寄付が寄せられている。
私の父は、エドモンドを婿養子として育てるため、彼をその基金の事務局長に推薦した。
だが、エドモンドがやったのは「看病」ではない。
彼は病室には一度も入らず、廊下で私の家のメイド「アンナ」を待ち伏せする日々。リゼットの治療費として引き出した公金で、アンナに贈るためのサファイアを買い、最高級の香水を自分に振り撒いて悦に浸っていた。
一方で、病室のリゼットは凄惨な状況だった。
魔法治療の副作用で髪は抜け落ち、肌は土気色。彼女は、エドモンドが家に来ているのに自分には会いに来ていないことを察しながらも、周囲に迷惑をかけまいと「エドモンド様は、会いに来られてますよ」と健気に庇い続けていたのだ。
そのリゼットの「健気な嘘」を、このクズは自分の「美談」に塗り替えていた。
リゼットが苦痛で吐いた血の数よりも、この男は嘘を重ねてきたのだ。
エドモンド.......「皆さん! 皆さんの寄付金は、間違いなくリゼットの命を繋いでいます! 私は毎日、彼女の手を握り、皆さんの慈悲を伝えてまいりました!」
夜会の演説。エドモンドは感極まったようにグラスを掲げた。
今だ。私はヒステリックな演技を止め、凍てつくような無機質な声で割って入った。
「素晴らしい演説ですわ、エドモンド様。では、その『皆さんの慈悲』で購入されたはずの、こちらの宝石についてもご説明いただけますか?」
私は、宝石店から発行された領収書を掲げた。
「な、何を……リリア、君はまた嫉妬で……」
「嫉妬? いいえ、これは『国庫横領罪』の告発です。……エドモンド様、貴方がリゼット様の治療費として計上したこの金貨36枚。実際には、貴方がそこのメイドに贈ろうとして拒絶された、サファイアの代金と一致しますわね」
会場が凍りつく。エドモンドの顔から血の気が引いていく。
「さらに、貴方が彼女に贈ったとされる香水。……リゼット様は現在、化学物質に敏感な病状ですわ。貴方がその香りをさせて病室の扉の前に立つたび(入っては来ませんが)、彼女は激しい発作を起こしていた。貴方は、皆さんの善意を、彼女の寿命を削る『毒』に変えていたのよ!」
「嘘だ! 証拠があるのか!」
「ええ、ありますわ。……カシアン様」
リゼットの兄、カシアンが怒り狂った形相で乱入し、エドモンドの胸ぐらを右手で掴み上げた、、その左手には紙束が握られている。
「これが証拠だ! 貴様が『面会した』と嘘の記録を書いた事務用箋。その裏には、メイドを口説く下劣なラブレターが書いてあったぞ! 国印入りの公文書を、浮気の道具に使うとは……万死に値する!」
「あ、アンナ! アンナはどこだ! 彼女が証言してくれるはずだ!」
エドモンドは、救いを求めるように私の背後にいるメイドを見た。
私はクスクスと、今日一番の愉悦を込めて笑った。
「ああ、アンナならここには来ませんわ。……だって、貴方が半年間必死に口説き続けていたその子、女装した私の護衛(男)ですもの」
「…………え?」
「貴方は女の顔すら見ていなかった。ただ、『薄幸な従妹の家のメイドを、身分で屈服させている自分』というシチュエーションに酔っていただけ。……ちなみに彼、貴方に抱きつかれるたびに『吐き気がする』と泣いていましたわよ」
周囲から、爆発的な嘲笑と蔑みが巻き起こった。
「寄付金を横領して……」「相手が男とも気づかずに……」「なんて不潔で愚かな男だ」
エドモンドは力なく膝をついた。
さっきまで彼を「聖人」と讃えていた人々が、今はゴミを見るような目で彼を見下ろしている。
「憲兵隊は外で待機しています。……さあ、偽りの騎士様。あとは獄中で、じっくりとご自分の『騎士道』を反省なさって」
・・
・・
数日後。
エドモンドの家門は没落し、私は「有責による婚約破棄」を成立させ、ついでに彼の家の鉱山利権を全て奪い取った。
私は、静寂に包まれたリゼットの病室にいた。
不快な香水の匂いはもうしない。リゼットは、少しだけ穏やかな顔で眠っている。
「さて、カシアン様」
私は、入り口で控えるカシアンに微笑みかけた。
「エドモンドから没収した資産で、リゼット様のために国で一番の療養所を建てましょう。……それから、エドモンドがいた『事務局』のポスト。次は私の息のかかった者に、正しく管理させますわ」
私は窓の外、青い空を見上げた。
ゴミの片付けは終わった。
私の手元には、莫大な資産目録。
「ふふ、次はどんな『整理』を楽しもうかしら」
終り
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*ひどい誤字と読み返してイマイチな表現があったので修正してます(あかんなぁ)
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