麻雀編 東一局 ポーカーフェイス
第2話目も同時投稿です!
皆さんは幻覚剤の使用はおやめ下さいね。……特に勝負の場では。
「それじゃあ……私の親番からでいいかな
ジャックポットと呼ばれた女の実力、見せてあげようじゃないの!」
女主人は俺の対面に腰掛ける。慣れた調子の3人とは裏腹に、俺は張り詰めた空気を感じていた。
「リーチ。」
局の中盤、勝負が動いたのは、ジェイソンマスクの巨漢からだった。厚手の手袋をしているとは思えない手さばきで、牌を河に滑らせる。……思えば、コイツの声を聞いたのはこれが初めてだった。例えるなら、反響する金属音。待ちも表情も、読めたもんじゃない。
「お客さん、この子すっごく強いんだよー?」
女主人が茶化しながら牌を切る。リーチが入っているというのに、攻めっ気たっぷりの捨牌だ。
「この子、ポーカーフェイスって呼ばれてんねん!ちなみにワシはスケルトン。どや、見た目の通りで覚えやすいやろ!」
化け物がからからと骨の音を響かせながら牌を切る。これも危険牌。ガンガン攻める2人とは裏腹に、俺は降りることを決めた。確実な安牌は手元にない……。まずは序盤に切った牌のスジである三萬、これなら比較的安全そうだ。
「ロン。」
降りた人間を刈り取るためのスジ引っ掛け。打点は低いが、幸先の悪いスタートだ。
「全然分からんかったわー!兄ちゃん、気を落とさんとな!」
スケルトンが肩を叩いて慰めてくる。不気味な寒気が走る。
親が変わって東二局、またも中盤に戦況が動く。
「ロン。」
クソっ。俺が切った北が当たってしまう。誰のリーチも入ってない、いわゆるダマテンと言うやつだ。
「この子、全然読めないでしょ!」
女主人が、自分のことかのように自慢げに話す。ヤク中じゃなければ、ほとんど昭和のおばちゃんだ。
「ポーカーフェイスの名は、伊達じゃない……ちゅうことやな!」
化け物は骨の翼をバタつかせて喜ぶ。和了った当の本人は、表情を一切緩めない。いや、表情見えないけど。
2回連続で放銃してしまって、俺には後がない。
前の世界での記憶が思い出される……
裏社会に名前を轟かすほどのギャンブラーだった俺は、ある日麻雀でボロ負けして……
内臓を抜かれて死んだ。嫌だ。もうあんなのはごめんだ。死にたくない。ヤク中も骨も、お調子者っぽい口調で話すが……俺は知っている。ああいうヤツらが1番ヤバいんだ。
頭がクラクラする……
「あ、そういえばさっきお客さんが飲んだ赤ポーション、普通に幻覚剤だけどだいじょぶそ?」
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勝負はまだ、始まったばかりだ。
俺も赤ポーション、飲んでみたいなー!!!
ちなみに、大体の幻覚剤は飲んでから効くまで数十分かかるらしいですよ。さっさと誰かをトバすしかねえ!