083:祓魔師の帰還
「ハアァァァッ!!!!!」
「――!」
轟音と共に閃光――瞬きの合間に、万を超える行動が行われる。
攻撃、回避。
移動、加速。そして、回避――瞬で終わりの影だけが無数に残っていた。
空を翔ける。
光となり、世界を飛ぶ。
互いに魔力を込めた攻撃を連続して放ち。
それらが激しくぶつかり合う。
黒と白。
いや、今は漆黒と黄金だ。
それらが眩いばかりの輝きを見せて、空には見た事も無いような色が広がっていく。
オーロラか。いや、もっと複雑で神秘に満ちている。
そんな光の中を駆け抜けながら、互いの全力を出す。
攻撃、攻撃、攻撃攻撃攻撃攻撃攻撃攻撃攻撃攻撃攻撃――拮抗している。
互いの力が、互いの意志が。
互いの生命を奪えるだけの力が。
ぶつかり混ざり、消えていく。
同じだけの力が、対消滅を引き起こす。
後に残るは残りカスとなる粒子と世界を彩る色のみだ。
無数の光が爆ぜる。
衝撃が地上を空を――“世界を揺らす”。
「「――ッ!!!!」」
互いに離れる。
一秒も無い時間で空に軌跡を描き、そのまま加速し――ぶつかり合う。
発生した衝撃によって突風が吹き荒れる。
互いの輝きが後ろへと広がっていき、星が叫びをあげているように音が鳴り響く。
手にした武器から火花が散り、互いに歯を食いしばりながら力を込め続けた。
肉体がダメージを訴えて来る。
皮膚は裂けて血が噴き出し、それでも互いに力を込めた。
漆黒の光は命を奪い、俺の黄金は全てに生命を与える。
ニンドゥでの戦い。
それを彷彿とさせるがレベルが違う。
奴の光は世界を朽ち果てさせて、俺の輝きは世界を芽吹かせる。
破壊と創造――相反する二つの概念がぶつかり合っていた。
風が死を運び、光が誕生を齎す。
死したものの中から命が芽吹き。
枯れ果てた木々から新たな木が生まれる。
枯葉から花が咲き誇り、命無き世界に色がついていく。
互いの脳裏に駆け巡っているであろう光景。
感じる。星の辿った記憶を。
この地で生まれた命たちの心を。
それを全身で感じながら――俺は舞う。
「……!」
「――!」
剣で奴の剣を弾く。
そうして、そのまま奴へと加速し回転する。
残像の上に更に残像を生み出し。
時を加速させるが如き速度で剣を振るう。
奴は歯を食いしばりながら、後方へと強制的に押し出され。
それでも尚、喰らいつくように此方の速度に合わせて剣を振るう。
無数の斬撃。
黄金の輝きが軌跡を描く。
それらが一つに集約されて、一つの生命に至る。
「――これは!?」
「――ッ!!」
黄金を纏いし龍。
命の輝きに満たされたそれが敵へと喰らいつく。
奴は魔力を纏わせた上に結界を展開し防御する。
が、それすらも砕けさせるほどに龍は力に満ちていた。
俺はそんな龍と一体化し、大空を駆け抜けて奴を空へと上げていく。
空の青みが濃さを増していき、雲を突き抜けて――
「舐めるなッ!!!」
「……!」
奴がケガレに満ちた魔力を解放する。
それを浴びた龍は悲鳴を上げながら消え去る。
俺はそんな龍の亡骸から飛び出し。
更なる成長を遂げた奴へと迫っていく。
放たれるケガレを、全て一瞬にして相殺する。
まだだ、まだまだこんなもんじゃねぇ。
もっと、もっとだ。もっともっと――力を寄越せッ!!!!
俺は自らの魂に命じる。
すると、心臓の部分が更に熱を持ち。
全身に力が駆け巡っていく。
俺は目を細めて、剣をクロスさせる。
奴はそんな俺にケガレを纏わせた斬撃を見舞う。
それらを回避すれば、軌道を変えて斬撃が追い掛けて来る。
俺は空を超えた宇宙でそれらを躱していき。
そのまま進化した黄金の輝きによって――打ち消す。
「……!」
奴が目を見開く。
俺はそんな奴に視線を向けて――眼前に飛ぶ。
奴は咄嗟に攻撃を仕掛けて来た。
俺は奴の攻撃を受けて煙のように消えた――後ろだ。
「――なっ!?」
「――」
奴が振り返ろうとする。
俺はそれよりも速く、手を軽く動かした。
瞬間、無限に等しい斬撃が奴を斬り刻む。
「ウグァァァァァ!!!!?」
奴は悲鳴を上げた。
が、ぎょろりと目を動かして斬り飛ばされた手で俺の首を掴む。
そうして、全力でケガレを俺の体に流し込んできた。
奴はそのまま距離を取り、一瞬で体を再生させる。
「――」
俺は考える事も無く。
体から黄金が流れる炎を出す。
そうして、それで首を絞めて来る手を浴びせて――消滅させた。
祓われたそれらは、灰となる事は無く。
花を芽吹かせて、ひらひらと花弁を舞わせた。
ケガレを祓い、命を与えた。
「――ぐぅ!?」
再生した奴が胸に手を当てた。
瞬間、奴の体から――“命が芽吹く”。
草花が生え、木々が姿を現し。
奴の体が新たな植物へと変貌していく。
奴は大きく目を見開きながら、ケガレを放ちそれらを死に至らしめる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ――まだだァ!!!!!」
奴の体から黒い靄が噴き出した。
それらが奴の分身体を生み出した。
一気に千を超える敵となり、それらが全力で重力の術式を生みこんだ魔力弾を放つ。
四方八方、全てがケガレに満ちていて――“俺は、奇跡を起こす”。
『――――』
「……それは!」
言葉ではない、人間の言語ではない。
聞き取る事も訳す事も出来ない。
人間が耳にすれば思考を止めて、理を変えてしまうほどの力を秘めたモノ。
自然と口から出たそれが――全てを花へと変えた。
魔力弾も敵の分身も、花弁となり宙を舞う。
目に映るものが花であり、それらが大気圏の中をハラハラと舞った。
俺はそのまま目を細めて――奴の前に立つ。
「――ッ!」
奴は一瞬反応が遅れた。
その瞬間に、俺は二振りの剣を奴の体に突き刺した。
そうして、軽く捻り――奴の体が燃え上がる。
「ガアアアァァァ――ッ!!!!」
透き通った炎に、黄金の粒子が駆け巡る。
奴は絶叫をしているが、それは苦しみからのものではない。
体を巡る不浄を取り除いている。
全てのケガレを浄化し、死となろうとしている奴に生命を与えている。
絶叫しているのはデイヴィ・ジョーンズではない“ナニカ”だ。
奴はキッと俺を睨む。
そうして、剣を両手で掴んできた。
ケガレを全身から噴き出させて、強引に剣を抜こうとしてきた。
俺はそれを静かに見つめながら――更に突き刺す。
「グゥゥアアアァァァ――ッ!!!!」
奴の中のケガレが薄まっていく。
不浄なるものが祓われて行く。
俺はそれを見つめて――奴が笑う。
その姿がドロドロに溶ける。
水――いや、泥か。
それが剣を包み込み、俺の体を覆ってきた。
気が付けば、デイヴィ・ジョーンズの気配が無数にしている。
地上にも空中にも、あらゆるところから気配を感じた。
「ははは!! 馬鹿が!!! 今の俺に不可能は無い!!! 全てだ!!! 全てをお前の敵に変える事だって出来るんだぜ!!! 間抜けがァ!!!」
奴はそう叫びながら、無数の分身体からケガレを集めていく。
それらがこの星にある全ての生命を死へと導く。
星が苦しんでいて叫んでいて――“助けを求めている”。
俺はその声を聞きながら、静かに目を閉じる。
そうして、己が心臓に意識を集中させた。
奴はその間も膨大なケガレを集めていく。
それは巨大な塊となり、星にも匹敵する大きさになった。
巨大なケガレを感じ、奴はそれを宙で掲げながら叫んでいた。
「終わりだ!!! お前も、この星も――死に染まれェェ!!!!」
ケガレが放たれる。
轟音を響かせながら、それが迫って来た。
叫び、怒り、悲しみ、恨み、呪い、拒絶、殺意――あらゆる負がそこにある。
亡者たちの叫び、世界への怒り。
全ての怨念があれには込められている。
人間だけじゃない、あらゆる生命の心であり――なら、こうすべきだ。
俺はそのままケガレを――“受け止めた”。
「……っ!!!!」
全身に焼けるような痛みが走る。
マグマの中に浸かっているように熱く。
太陽無き世界でいるように寒く冷たい。
体中をさび付いたのこぎりで切り刻まれるように痛みが連続して発生し。
胃の中にガソリンを飲み込んだような不快感。
無数の苦しみが、この身を襲う。
あらゆる負と絶望が混ざり合い渦を巻く。
吐き気、熱、寒さ、痛み、苦しみ――感じるよ。
全ての命が辿った記憶。
全ての命が抗えなかった絶望。
その果てに終わりに至ってしまった魂たちの無念。
ケガレとはこの世で成せなかった事への想い。
命が後悔し、その意思だけが残ってしまったもの。
悪魔たちにとっての力となり、正しきものたちを狂わせるもの――が、今なら分かる。
ケガレを、後悔を――“癒せる”。
『――――』
俺は祈る――“全ての魂の安寧を、全ての魂の安らぎを”。
俺は祈る――“消えていった命たちの救いを、今は無き存在たちの誕生を”。
祈りは神へと届く事は無い。が、祈りは全ての魂に――“響き、紡がれて行く”。
俺の祈りが漆黒の光のケガレを――“澄んだ白へと変えていく”。
「――馬鹿なッ!!?」
後悔を晴らし、怒りを鎮め。
恨みを解き、傷を癒す。
祈れ。祈る事こそが救いとなる。
信じる者も、信じられなかった者たちも――等しく救おう。
白き光が世界に満ちる。
それらは世界へと降り注ぎ、傷だらけの世界を癒していく。
想いは刃となり、誰かを傷つけてしまう事もあるだろう。
が、想いは薬となり、誰かの病や傷を癒すものともなる。
「命あるものたちの想いこそが、世界の原動力となる――希望を、未来を、光を望むのなら。与えよう――人の想いは無限であり、あらゆる生命を繋ぎ――“世界は廻っていく”」
「……まさか、記憶が……っ!!!」
俺は剣を振るう。
風が吹き、黄金が羽のように舞った。
白き炎のマントが揺れて、長い髪は揺れていた。
俺はにやりと笑う。そうして――間抜け面を晒すアホに伝えてやる。
「知らねぇよ。何も覚えちゃいねぇ……“”これが、俺だ”。魚野郎」
「……く、ふふふ……ハハハハハハハ!!! 良い!! 良いぞ!!! やっぱりテメェは――最高だなァ!!!!」
奴は笑う。
子供のように目を輝かせて。
心底楽しそうに笑い――空を翔ける。
俺も笑みを浮かべて空を翔ける。
そうして、両手の剣を振るって互いに想いを通い合わせる。
一発一発が必殺で。
掠めただけでも万を超える命が消し飛ぶ。
生命が溢れて、白き輝きに満ちる世界で舞いながら。
俺たちは――笑った。
命を懸ける。
全力であり、相手を殺す気でいく。
が、この戦いには恨みも怒りも無い。
ただ純粋に互いの全力をもってして――相手に応える。
空を翔け、無限に等しい斬撃を繰り出し。
互いに体に傷を負えば血が噴き出して。
再生と破壊を繰り返し、それでも尚止まる事無く駆け抜ける。
斬撃、斬撃、斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬斬斬斬斬斬斬――――“あぁ楽しい”。
今を生きている。
俺は俺だ。
自分がやりたい事が出来ている。
出来なかった事も、諦めていた事も――今なら出来る。
音速を超えて、光となり。
星を何十周もしながら、互いに想いをぶつけ合う。
景色は流れて線となり、光が薄くなっていき。
音も、匂いも、痛みも遅れていき――“無に至る”。
互いの動きがひどくスローモーションに感じる中で。
互いに剣を振り、最後の一撃を見舞おうとする。
俺は下から上へ、奴は上から下へ。
互いに相手の目を見つめて笑みを深める。
たらりと汗が流れていき、互いに呼吸も忘れていた。
時がゆっくりと流れる。
ゆっくり、ゆっくりと流れて。
互いの剣が相手に迫り――――景色が戻る。
気が付けば、地面に足をつけていた。
俺は剣を上げた状態で止まっている。
背後ではデイヴィ・ジョーンズがいるのを感じる。
「「…………」」
互いに無言。
お互いに一歩も動かない。
汗が流れて、地面に落ちて――“血が噴き出す”。
「……!」
「……ふっ」
俺の肩から血が出ていた。
俺はよろりとよろめき片手で傷口を抑える。
背後では奴が静かに笑い――ぼとりと何かが落ちる音がした。
ゆっくりと振り返る。
すると、体が斜めに切り裂かれた状態で。
奴の死体が地面に仰向けで転がっていた。
俺はそれを静かに見つめる……再生は出来ないな。
俺は傷口から手を離す。
そうして、ゆっくりと奴に声を掛ける。
「最後の瞬間、テメェ――満足したのか?」
「……はっ、ちげぇよ……ただ、嬉しかった。それだけだ……俺はこんな体だから、何を喰っても満たされる事はねぇ……食事も、娯楽も、何もかもがつまらなくて……でも、お前だけが俺の心を満たしてくれた……俺は悪魔だ。魔王様の手下だからよ。テメェは殺すべき存在だが……それでも、礼を言うぜ。ありがとよ」
「……」
奴は俺に対して礼を言う。
悪魔から感謝されても蚊ほども嬉しくはねぇが……野暮は言わねぇよ。
俺は奴の傍に立つ。
そうして、剣を掲げる。
どんなに殊勝な態度を取ろうとも。
俺がやる事は変わらない。
俺は祓魔師であり、悪魔を祓うのが…………あぁ、クソが。
俺は剣を下ろす。
奴を見れば、その体がゆっくりと溶けて行っていた……“何時からだ”?
「テメェ……何時、逃げやがった?」
「はは、バレたかぁ? 悪いな。お前との勝負は楽しいが……役目なんでな……まぁそうは言っても、オリジナルと力はさほど変わってはいねぇよ。それだけ必死だったからな……これで、暫くは会う事もねぇだろう。もし、次に見える機会があったら――次は、俺が勝つぜ?」
「……言ってろ。魚野郎」
奴はにやりと笑って捨て台詞を吐く。
そうして、その体は完全に液体と化した。
俺は静かに息を吐く……て、どうやって戻れってんだよ?
俺は周りを見る。
幸いにも、この状態であれば星が死ぬ事も無さそうだ。
今までの形態はひどく不安定だったのか……分からねぇな。
「……試してみるか」
俺は戦闘中に出来ていた事を思い出す。
それは言語ではない何かを口にした時に起こった奇跡だ。
アレを使えば、あらゆる不可能が可能となる。
もしかしたら、アレを再び使えば地球に戻れるかもしれねぇ。
俺はやってみる価値はあると胸に手を当てて目を閉じる。
そうして、地球の事を想像し――口を動かす。
『――――』
口から勝手に声が出た。
それにより、俺の体がゴムのように伸びたような感覚を味わった。
それは一瞬であり、次の瞬間には――見慣れた空が見えた。
「……あ?」
俺は浮遊感を抱き――“水の中に飛び込む”。
海水だ。
塩の味であり……体が動かねぇな。
指の一本も動かない。
気づけば、あの謎の状態が解かれていた。
俺はそんな事を考えながら、ぶくぶくとと沈んでいき――何かが近づいて来る。
それは勢いよく俺の手を掴めば、そのまま一気に上へと浮上していく。
そうして、さばりと飛び出して俺は船の上に打ち上げられた。
がほりと水を吐き出して、心配そうに上から覗き込む――クラーラを見つめた。
「もっと、丁寧に…………いや、ありがとよ」
「……!! ダーリン!!!!」
奴はぱぁっと笑みを浮かべて抱き着いて来る。
俺は嫌そうな顔をして、離れるように伝える。
が、奴はまるで聞く耳を持っていなかった。
そうして、何時ものように俺が力で引き剥がさない事に気づいたようだった……やべ。
奴はハイライトの消えた目で俺を見つめる。
呼吸は熱っぽくなり、頬は蒸気していた。
獲物を見つめる肉食獣の目であり、俺は必死に見守っているアホ共に視線を送る。
「……ふ、ふふ……この船ね。仮眠室があるんだ……いこっか?」
「助けてくれぇぇ誰かぁぁぁやべぇぇぇ奴が此処にいるよぉぉ」
俺は叫ぶ。
が、誰も助けには来ない。
祓魔師たちはボロボロであるが無事で。
誰しもが笑みを浮かべながら俺を見つめる。
ダテもライブを終えてタオルで顔の汗を拭い。
ゾーヤやボブの気配も他の船から感じた。
ダテはニカっと笑い親指を立てる……いや、助けろよ。
クラーラはそのまま俺を横抱きにしようと――――弾き飛ばされた。
スローモーションに感じる中で。
虚空から姿を晒した――悪魔を見つめる。
「ランベルト・ヘルダーッ!!!!! 死ねェェ!!!!!」
「……ッ!」
姿が見えなかった悪魔。
今まで、姿を能力か何かで消していたのだろう。
普段であれば気づいていた。
が、力を消耗し他の奴らも油断していた。
このクソはずっと好機を伺っていたのか。
誰かの指示か、己の独断か。
結果的に、この状況は――最悪だ。
奴は俺たちが完全に油断した隙をつくように現れた。
クラーラは魔術によって吹き飛ばされた。
海の方に飛ばされて、復帰しようとしているが間に合わない。
他の奴らは攻撃態勢も取れていない。
俺は甲板に転がっているだけだ。
奴が“明らかにやばい気配を放つ短剣”を掲げて俺に迫る。
スローモーションの中で体を動かそうとした。
が、指一本たりとも動かせない。
意識だけが奴を捉えていて、抵抗する事はまるで出来ない。
魔術も使えなければ、先ほどの状態にもなれない。
全力で戦った後だ。
もしも、不死をも殺すような武器で今殺されたらどうなる。
あの武器は危険であり、これは回避しなければならないもので――奴の短剣が軽く胸に当たる。
悪魔は狂気に満ちた笑みを浮かべる。
ゆっくりゆっくりと刃が食い込んでいくのを感じる。
やられる。そう感じて――“奴の体から白い炎が噴き上がる”。
「ギャアアァァァ!!!!!?」
「「「……!?」」」
全員が目を丸くして驚く。
俺を襲った悪魔はそのまま灰となって消えていった。
祓魔師たちはすぐに俺を守るように囲う。
クラーラもすぐに戻り、俺を庇う様に立った。
「さっきのはダーリン!?」
「……違う。俺じゃねぇ、アレは……っ!」
俺はふと空を見た。
すると、遥か遠くの空で、豆粒ほどしか見えないが――“それは浮遊していた”。
「……」
黒いローブで全身を隠している人型の何か。
ジッと俺たちの事を見つめている。
いや、俺たちというよりは俺である気がした。
それは暫くそこにいたが――瞬きの合間に消える。
俺は茫然とそれが消えた跡を見つめる。
仲間たちはその間も周りを警戒していた。
「……アルメリア……お前だったのか?」
俺は小さく呟く。
その呟きは周りを警戒している他の奴らには聞こえていない。
俺はただ奴がいたその場所を見つめる。
悪魔に組した筈の奴が、俺の命を救った。
確実に、俺と同じような事が出来るのは奴しかいない。
故に、アイツだと感じたが……分からねぇな。
デイヴィ・ジョーンズが行った儀式の“真の目的”も。
裏切ったと思われたアルメリアの真意も。
何一つ分かっちゃいねぇ……が、今はこの結果だけで十分だ。
俺たちは勝った。
最高の結果でなくとも、囚われた人間たちを救えた。
今はそれで十分であり……でも、これで分かった事はある。
今のままではダメだ。
中途半端なままでは、何れ奴らに――人類は敗北する。
ニンドゥでの事も今回の事も。
奴らの想う様に進んでいる気がする。
このまま、奴らの好きにさせていれば何れ手痛いしっぺ返しを喰らう事になる。
決断の時であり、俺も覚悟を決めるしかない。
嫌であり、こんな結果で未来を決めたくは無かったが……腹を括れ。
「……」
俺は“アイツら”の顔を思い浮かべながら。
静かに瞼を閉じて、深い闇の中に意識を沈めていった――――…………




