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【完結】祓魔師《エクソシスト》は休みたい  作者: うどん


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071:祓魔師は美食を求める

《はい、それじゃ。皆さん、さようなら》

「「「……さ、さようなら」」」


 俺は椅子に座りながら、骨付き肉を食う。

 そんな俺に挨拶をしつつ、生徒たちは訝しむような視線を俺に向けて来た……あぁ?


 煩わしい視線を鬱陶しく思いながらも。

 肉を食う手は止めない。

 豪快に齧り付き、そのまま良く噛んで……足りねぇな。


 クソの悪魔の呪いの効果は切れたが。

 数百年レベルの飢えは想像以上に俺を苦しめていた。

 三食食べて規則正しい生活を送っていたと言うのに。

 今では間食を挟みまくっていた。


 ポテチなどの菓子に、出店で食える揚げ物。

 何でも食っており、ジュースなどの甘いもんも体が欲していた。

 食欲がまるで衰えない、底なし沼のようだ。


 生徒たちはちらちらと俺を見ながら帰っていく。

 が、何故かお決まりのメンバーが俺の前に立つ……何だよ?


 アデリナは顔色を悪くしながら、震える声で言葉を発した。


「せ、先生……もう、やめよう? ちょっと……いや、かなり……太いよ?」

「丸々としている。顎も二重になってトドみたい……ぷふ」

「……ちょっとの間、休んでて心配はしたけどよぉ……流石にまずいだろ、それ。何があったんだよ。いや、マジで……」

「女にフラれたか。はたまた、女に浮気されたか」

「ち、違うよ! 先生がそんな……せ、先生! 修行! 修行に行きましょう! ね!?」

「……修行できるのか。こんなデブな状態で? 僕だったら歩く事も……ふふ」


 奴らは俺を憐れむような目で見て来る。

 そんなに太っていないだろうと自分の体を見ようと……ん?


 顔が下を向けない。

 肉が邪魔で首が動かない。

 腹を手で触れば大きく出ていて――椅子が壊れる。


 すごい音を立てて床に転がる。

 俺は天井を見つめながら、生徒たちの笑い声にいらつく。


《起こしてください》

「……立てないの? う、嘘だよね、先生……こ、こんな先生――耐えられないよぉぉぉぉ!!」


 アデリナは泣きながら教室を飛び出していった。

 ヤン達も呆れたように首を振り去っていく。

 カブラギの野郎も俺を無視して出て行き。

 どんどん生徒たちの気配が消えていき……エルナとエゴンが残った。


《……起こしてください》

「……先生」

「……分かった」


 二人はゆっくりと俺の背に手を回す。

 そうして、俺の体を起き上がらせてくれた。

 俺は静かに息を吐き……二人に外で待つように伝える。


「「……?」」

《すぐ終わります》


 二人はどういう事かと顔を見合わせる。

 が、俺の指示に従って廊下に出て行った。


 扉が完全に閉じられたのを確認し。

 俺は教室内に結界を張り、そのまま自分の周囲も結界で覆う。

 服は異空間に収納し、そのまま俺は魔術を起動し――全身を強く燃やした。


 轟々と燃え盛る炎。

 呼吸も出来ないほどの灼熱で。

 体に溜まりに溜まった脂肪が燃焼されて行く。

 そのまま痛みによって筋肉が刺激されて。

 傷ついた肉体が再生し、破壊されて行くのを繰り返す。


 俺はそんな中で、自らを――“シェイプアップ”させていった。




《お待たせしました》

「「…………え?」」


 完全に肉体のシェイプアップを終えて出る。

 二人は一瞬にして完成された肉体美に戻った俺を見て目を点にしていた。

 どういうメカニズムか聞かれたが、企業秘密と答えてやった……さて。


《これからご飯を食べに行きますが……起こしてくれたお礼に、奢ってあげますよ》

「……い、いや! 流石に痩せられるって言っても、あの食生活は……ねぇ?」

「……胃を休める事は重要。美味しいものは消化するのではなく、味わうもの……解決策を考える」


 二人は俺の事を心配してくれているようだった……つってもなぁ。


 解決策と言うのなら一つ思い当たる。

 百年を超えるほどの飢餓を経験したんだ。

 ちょっとやそっとの飯くらいでは、経験した苦しみを乗り越える事は難しいだろう。

 もしも、これを解消できるものがあるとすれば――“百年の不幸を忘れるほどの幸福しかない”。


 そんな事を悪魔の事はぼかしつつ言ってみれば、二人は首をひねって考える。


「……つまり、先生のショックをやわらげるほどの“美味しいもの”を……うーん、僕はそんなにお店には詳しくないので」

「――私に考えがある」

《……ほぉ》


 エルナはキリっとした顔で自信ありな発言をする。

 エゴンは少し不安そうであったが。

 俺には何となくエルナの自信は確かなものだと感じた。

 こいつは隙さえあれば何かしらを口に入れている。

 ただ食うのではなく、美味いものを厳選して喰っている節がある。

 謂わば、美食家であり、お菓子であってもその拘りは並々ならぬものを感じるほどだ。


 エルナはついてこいと手を動かす。

 俺たちはそんな自信に満ち溢れるエルナ大先生の後を追っていった。


 

 ◇



 タクシーに乗り、駅から列車に乗り込んで。

 途中で降りてから、ガキ共を抱えて運動が手から走り……いつの間にか山に来ていた。

 

 バルト州を超えてヒュルケンブルク州にまで来てんじゃねぇかよ。

 隣り合っているとはいえ、放課後に二時間も掛けて移動なんて……寮には俺から報告はしたけど。

 

 何処にでもある山であり、道は綺麗だが民家も休憩所も無い。

 静かな場所だと正直思っていたし、人の気配は途中まで本当に全然しなかった。

 が、目的の場所へと近づいて行けば何故か、どんどん人が現れて行った。

 そうして、目的の場所に着けば平日だと言うのに大勢の人間でごった返していた……何だ、これ?


 山の間に経っている建物としては異常にデカい。

 まるで、王宮であり白を基調とし黄金も散りばめられていた。

 三ツ星ホテルといっても信じられるほどには格がある。

 集まっている客たちも、高級スーツを着ていたり上等な着物を着こんでいて……ただものではない雰囲気を醸し出している。

 

 エゴンは俺の腕から離れて、周りをきょろきょろと見ながらこれは何かとエルナに聞く。

 彼女はくつくつと笑いながら、端的に説明した。


 

「此処は世界中の美食家が集まる場所――“食峰・三千世界しょくほう・さんぜんせかい”」

「さ、三千世界……それっぽいなぁ!」

《世界中の美食家、ねぇ……ふふ、それは良いですねぇ》



 俺は顎を撫でながら微笑む。

 美食家が態々集まってくるほどなら、さぞや美味いものを食べさせてくれるのだろう。

 俺はそんな事を考えながら、早速、店の中に入ろうと伝える。

 が、エゴンは大勢の人だかりを見てすぐには入れないんじゃないかと言う……確かに。


《……予約をして、後日にしましょうか》

「ふふ、心配はいらない。大船に乗った気でいて」

「「……?」」


 エルナは自信ありげに歩いていく。

 俺たちはそんな彼女についていった。


 エルナは列には並ばず。

 そのまま扉の前に立ってい黒スーツにグラサンの男に話しかける。

 そうして、彼の前にエルナはぴかぴかと光る金色のカードを提示する。


「……三名様、ご来店です……どうぞ、お通り下さい」

「ん……行こう」

「お、おぉ……何だか、エルナさんが凄い人に……」

《やはり、ただの大喰らいではありませんでしたか》


 エルナは得意げな顔で扉を開けて中に入る。

 中はかなりの広さであり、これでもかと黄金が散りばめられている。

 何故かは知らないが、ほぼ全裸の汚ねぇおっさんの像が多く。

 バリエーションも豊富で、それが輪をかけて不快にさせるが。

 豪華さや黄金によってそれが中和されて嫌でもすげぇ腹立つな。


「……?」


 足を止める。

 そうして、ゆっくりと天井を見つめる。

 暫くその場で止まっていれば、二人が声を掛けて来る。

 

 

 ……あぁ……“いる”な、これ。


 

《行きましょう》

「「……?」」

 

 謎のほぼ全裸のおっさん像にムカムカしながらも俺たちは進んでいく。

 エルナは迷うことなく迷路のような通路を進んでいった。

 そうして、そのままエレベーターの前に立つスーツ姿の従業員らしい青年に話しかける。


「“食王様”に会いに来た……今日は会える?」

「少々お待ちを……エルナさまがお見えです……えぇ、はい。かしこまりました……お待たせしました。どうぞ、お入り下さい」

 

 青年がそう言うと、エレベーターが勝手に開く。

 俺たちはエレベーターの中へと乗り込んだ。

 扉は静かに閉じられて、ボタンも押していないの動き始めた。


 沈黙が流れる。

 俺は我慢できずに、先ほどのワードについて質問した。


《……食王様とは?》

「食の王様。美食家の中で、知らない人間は誰一人としていない。すごい人。粗相のないように」

「……ど、どんな人何でしょうね?」


 エゴンは緊張でそわそわとしている。

 俺はその食王なるものが“アレ”ではないかと嫌な予感をさせて……エレベーターが止まる。


 扉が開かれて外へと出れば……やっぱりかよ。


「ふふ、良く来たな。エルナたん!」

「食王様、こんにちは」

「「……」」


 俺たちは黄金の玉座らしきものに座る裸の王を見ていた。

 でっぷりとした腹に、見ているだけで胃をムカムカとさせる顔。

 何故か下はもっさり系のブリーフであり、赤いローブを纏っている。

 王様を気取っており、王冠を被っているがどう見てもあの悪趣味な像のモデルだった。


 俺はすこぶる嫌な顔をする。

 エゴンも真顔で固まっていた。

 すると、食王はそんな俺たちに不機嫌そうに声を掛けて来た。


「お前たちは何だぁ? エルナたんの友人みたいだから仕方なく入れてやったが……何だぁその顔はぁ? ムカつくなぁ」

《ははは、気にしないでください。変わった人を見るとこんな顔になるので》

「あぁ? 変わった人ぉ……ふふ、そうかそうか。確かに、余は普通の人間とはまるで違う。この洗練された姿を見れば、そう思うのも自然よなぁ!」

《ははは、仰る通りです。食王様は最上級のロースハムのようなお方です》

「ふふん! 最上級か! そう褒めるで……いや、お前、今余をハムって言った?」

《ははは、気のせいですよ。私はハンサムだと言ったんですよ。まさに神。よ、タダレ神!》

「おぉ! ハンサムだったかぁ! それに神と申すとは、どれだけ余の事を……ねぇ、やっぱ馬鹿にしてるよね?」

「「――!!」」


 エルナとエゴンは俺の口を押える。

 本当は機械音声だから意味は無いが。

 これ以上はやめておくことにした。


 食王はイライラした顔をしているが。

 エルナが頼みごとがあると伝えれば。

 途端に笑みを浮かべて対応する……ロリコンかよ。


「食王様、この人にこの世で最も美味なるものを食べさせて欲しいです」

「……へぇ、この世で最も、ねぇ……いくらエルナたんの頼みでも、それはねぇ」


 腹立つ顔で首を振るロリ王。

 俺たちはそんな奴を冷めた目で見ていた。

 すると、エルナは顔の前で手を組み懇願する。

 

「お願いします……食王様だけが、頼りなんです」


 彼女の言葉を聞いた瞬間――ロリ王はカッと目を見開く。

 

「……ッ!!! よ、余だけが? そ、それって……分かった! 分かったよぉ!!」

「――食王様!」

「ただしぃぃ!!! 条件がある!!」


 食王は掌を向けて待ったを掛ける。

 俺は嫌らしい条件を突き付けてきたら秒で燃やそうと考えた。

 が、奴はそういう不純な事は言わず試練のようなものを課してきた。


「余に貴様らの全力の料理を振舞え。余を少しでも驚かす事が出来たのなら……考えてやらんでもないぞ?」

「しょ、食王様をうならせる料理……ぅぅ」

「そ、そんなのどうすれば……先生?」


 俺は一歩前に出る。

 そうして、どんと胸を叩く。


《任せてください》

「おぉ、かなり自信があるようだな……よろしい。では、その隣の調理場と豊富な食材を提供してやる。そこにあるものなら好きに使えばいい。存分に腕を振るえ……あまり、余を待たせるでないぞ?」


 俺はしっかりと頷く。

 そうして、壁から出現した扉に向かって歩いていった。

 二人も慌ててついてきて、俺たちはそのまま調理場に入る……おぉ。


 金ぴか続きで目が痛かったが。

 調理場は普通の豪華さだった。

 最新の調理器具に、冷蔵庫もバカでかいものが四つもある。

 ご丁寧にエプロンなども備えられていて……ふふ。


 俺はすぐにエプロンを纏う。

 そうして、コック帽を装着した……良い。


《さぁ準備をしなさい。助手たちよ》

「せ、先生?」

「……頑張る」


 俺は腕を捲り、適当に取った包丁をくるくると回した。

 そうして、すぐに助手たちに指示を出す。


《エゴン君ッ!! 肉を取ってきなさいッ!!! 良い感じに脂がのっていてデカい奴を全てッ!!》

「え、あ、はい!」

《エルナさんッ!! 野菜と魚ですッ!! 新鮮ででっぷりとしていていい感じのものをッ!!》

「ひどく抽象的!?」

 

 野菜や肉、魚を取ってこさせた。

 それらを宙に飛ばし、流れるように粉みじんにする。

 そのままそれらを大きな鍋へと入れる。

 俺はそのまま調味料をどぼどぼとぶち込んでいった。


 心を無にし、フィーリングで入れる。

 相手は食王であり、普通の手段で奴を驚かす事は出来ない。

 ならば、此方は狂いに狂って――舞う様に料理を作る。


 俺は調味料をぶち込み、そのまま火をつける。

 が、火力が足りない――ならばッ!!


 俺は刻印を起動し魔術を使う。

 そうして、鍋の周りに極薄の結界を展開しながら超高火力で料理を作る。

 鍋は真っ赤に赤熱し、溶けなギリギリの限界で焼いていく……今だッ!!


 火を止めて、今度は氷を生成。

 一気に鍋を冷やせば、中のものも個体となった。

 そんな鍋を掴み、俺は中身を魔術によって抉り取る。

 デカいアイスのようになったそれ。

 俺はエゴンに指示し、何か意味ありげに置かれていた葉っぱを持ってこさせた。


《これを――こう!!》

「お、おぉ!」


 葉っぱで個体になったそれを包む。

 そうして、そのまま空中で高速回転させる。

 凄まじい回転であり、残像が見えるほどだ。

 そんな高速回転アイスに向かって魔力を流した包丁を向けて――削り取っていく。


「す、凄いッ!! 包丁を動かす手が見えないッ!!」

「凍った謎の物体がまるでかき氷のように!?」

《まだまだですよッ!!!》


 そのまま削ったそれらを風の魔術によって一点に集める。

 そうして、えっと、あれだ、あの――圧縮ッ!!


 一気に削った筈のそれをまたしても固めた。

 が、今度は重力を掛ける事によって飴玉ほどのサイズにする。

 俺はそのまま残っていた髑髏が書かれた血のように真っ赤な調味料たちを開けてぶちまける。

 それらが圧縮されたそれの周りをコーティングしていく。

 飴玉から野球のボールほどになり――後少し!!


 もっと意表を突く為に、俺は明らかに食材では無さそうな謎の生き物の皮を手繰り寄せた。

 俺はそれを一瞬にして糸状に加工する。

 そうして、真っ赤な野球ボールのようなそれに纏わせていき。

 俺は両手でそれを包み込み、更に圧縮し、豆粒ほどまでにし――


《仕上げですッ!!!》

「ああぁぁ!!!?」

「うああぁぁ!!?」


 俺は異空間からゴーグルを取り出し。

 驚く二人にさっと被せた。

 そうして、そのまま両手に魔力を集中せて――電撃を放つ。


 凄まじいスパークであり。

 雷をも凌駕するほどの電流が一気に流れる。

 バチバチを音を立てながら、目の前の豆粒に強烈な電流を浴びせて……ゆっくりと手を下ろす。


《……皿を》

「……え、あ……はい」


 エゴンは驚き固まっていた。

 奴はすぐに正気に戻り、この幻の一品に相応しい純白の皿を用意した。

 俺はそれを受け取り、宙に浮遊しどくどくと心臓の鼓動のように真っ赤な光を放つそれを皿の上に載せた。


《――完成です》

「こ、これが……何て威圧感なんだ」

「こんな料理は見た事が無い……これなら、もしかして」


 二人はごくりと喉を鳴らす。

 すると、扉が勢いよく開かれた。

 そこには涎をだらだらと垂らすロリ王が立っていた。


「ふ、ふふ……感じる。感じるぞぉ……まだ見ぬ、食が……余の五感を激しく刺激する――料理がッ!!」

《……さぁ召し上がってください》


 俺は奴に至高の逸品を渡す。

 奴は待ってましたと言わんばかりに皿を受け取る。

 そうして、あらゆる角度でそれを眺めていたが。

 ひょいっと指で掴む。


「ひんやりとしている。いや、何故か熱も感じるぞ……指から感じるこの痺れは? この光も、まるで生命のように……ただよう危険な香りは、余の食欲を大いに刺激し……あぁ、ダメだ。手が、勝手に! ……うぅぅ!!!?」


 ロリ王は震える手でそれを――口に入れた。


 二人は拝むように見つめて。

 俺はうんうんと頷いておく。

 すると、ロリ王は皿を手から落とし――泡を噴いて倒れた。


「「ああああぁぁぁ!!!?」」

「あ、ああ、ぅ、ぁぁ、ぁが」


 ぴくぴくと陸に打ち上げられた魚のように痙攣している。

 そうして、がくりと力なく頭を横にした。

 俺はそんな男の様子にしっかりと頷く……やっぱダメかぁ!


「どどどどどど、どうするんですか!? こ、こぉこぉ、ここれ!? し、死んでるじゃ!?」

「しょ、食王様を毒殺した何て知られたら……も、もうおしまい」

《ははは、生き返らせるから問題ないですよ…………あれ?》


 奴の死体に触れる。

 そうして、治癒によって蘇生させた。

 が、奴は微動だにしない…………あ、あれぇ?


 俺はロリ王の顔を叩く。

 往復ビンタをするが、奴は白目を剥いたままだった……はは!


 俺は立ちあがる。

 そうして、さわやかな笑みを浮かべた。


《――さ、帰りましょうか》

「帰れないですよぉぉぉぉぉ!! え、あ、え、えぇぇぇ!!?」

「短い人生だった……俳句を読もう」


 二人は大いに焦っていた。

 が、俺は至極冷静に奴の状態について説明した。


《蘇生はしたので死んではいませんよ。ただ、ちょっとあれの刺激が強すぎて意識が飛んでいるだけです。暫くすれば戻るので問題ないですよ》

「そ、そうなんですか……なら、一先ずは……え、でも、暫くって……」

「……食王様は本来なら多忙。私の為に時間を作ってくれたけど……たぶん、この後も色々と用事がある。もしも、食王様がこんな状態だとバレたら……最悪、社会的に死ぬ」

「「「……」」」


 俺たちは沈黙する。

 すると、調理場の外から声が聞こえて来た。


「あれ? 食王様がいらっしゃらない? たく、何処に行ったんだあの馬鹿」

「知らねぇよ……また、調理場で盗み食いしてんじゃね? 見て来いよ」

「「「……ッ!!」」」


 エルナが口をパクパクと動かす――“たぶん側近”、だと。


 俺は急いで馬鹿の死体を近くにあったロッカーの中に詰める。

 無駄にデブいせいで腹がつっかえる。

 俺はデブを足で蹴って無理矢理に中に入れた。

 そうして、自らの姿を一瞬にして――ロリ王に変える。


「食王様ぁ……あ、やはり此処でしたかぁ。おや? エルナ様と……そちらは?」

「と、友達です……しょ、食王様、きょ、今日はありがとうございました」

「と、とっても有意義な時間でした。そ、それじゃ僕たちはこれで――うぐ!?」

《一緒に生きましょう、ね?》


 俺はロリ王の顔でにこりと笑う。

 こうなれば死ねば諸共だ。

 側近の男は、また変なことしてると言いたげな顔で俺を見ていた……こいつ、人望ねぇのか?

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