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【完結】祓魔師《エクソシスト》は休みたい  作者: うどん


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65/134

065:祓魔師と悪魔と教師と?

「うぅ、どうなってるの……さっきから、この揺れは……?」

「せ、先生。大丈夫なんですか? 本当にこれは、防犯教室なんですか? う、うぅ」

「……」

 

 全ての生徒と職員が収容できるだけの地下のシェルター区画。

 そこには多くの生徒と職員が身を寄せ合っていた。

 俺はそんな生徒たちを“認識阻害”と“透明化”で隠れてこっそり見ていた……ふふ、いいぞぉ。


 揺れが発生する度に、チカチカとライトが点滅する。

 それにより、此処にいる生徒は勿論、教師たちにも恐怖や不安が伝染していく。

 本当にこれはイベントなのか。それとも、実際に悪魔が攻めて来たのか……まぁほとんどの奴らが現実逃避している。


 誰しもが、もうこれはただのイベントでは無いと心の中では悟っているだろう。

 中でも、俺の“愛する生徒”たちは一番に今がどうなっているのかを理解していた。

 全員で集まりこそこそと話をしている。

 俺はそんな奴らに近づいて、何を話しているのかを聞く。


「……なぁ、ベッカー先生とバーデン先生がいないって事は……これ、先生たちじゃね?」

「……多分……いや、確実に先生だと思う。この前みたいに、僕たちに……いや、修道院にいる人全員に何かを学ばせようと……」

「なぁ、もしかしてまた、俺たち、その催眠にかかってんじゃ……ちょっと、誰か俺を殴って――やめろ、カブラギ!」

「……まぁ冗談はおいておいて……催眠では無いと思うぞ? あの時は僕でも分かるくらいの違和感があったし……そもそも、何千人もいる中で同じ体験をさせるのなんて無理だと思うけど」

「……じゃ、今起こってる事はリアルで……もしかして、本当に死人が出てんじゃねぇのか」

「「「……」」」


 全員が無言で頷く……よく俺の事を分かってんじゃねぇか。


 これは催眠ではない。

 実際に“俺”が悪魔に扮して奴らを襲っている。

 今も手応えのある奴らと戦闘を行っているようだった……これが噂の生徒会か。


 中々にやるものだと感心する。

 まさか、ナンバーワンとナンバーツーが自ら囮になるとはな。

 良い判断であり、あの二人以外では真面に時間稼ぎも出来なかっただろう。

 その結果、死体の“収納”などを行っている“俺”が、奴らがシェルターに向けて逃走していると情報を送って来る。


 修道院内で生き残っているのは。

 このシェルターに隠れている奴らと。

 囮として戦っている二名。

 そして、シェルターに向かっている十名の生徒会役員たち。

 戦っていたのは会長と副会長を含めた五名であり、残りはバックアップとして一階で待機してやがったな。

 気配を消す事に長けた奴らのようであり、恐らくは隠密に特化しているのか。


 それぞれが通信を行えているのならば。

 俺たち教員が使うような校内限定での通信装置を生徒会も持っている事になる。

 中々に悪魔視点では厄介だが……まぁ“プランに問題は無い”。


「……」


 怯えるだけで助けを待つだけの奴ら。

 職員としてルールを形だけでも守っているつもりで何もしようとしない無能。

 そして、それとは対照的に信頼できる仲間たちと共に話し合い行動を起こそうとしている生徒たち。

 実に対照的であり、中々に盛り上がる展開だ。


 ざっと見ただけでも、何グループかは行動を起こそうとしている。

 見込みがある奴らであり、この中にあの生徒会の奴らが合流すれば……来たな。


「「「……!!」」」


 地下へと繋がるエレベーターから音が鳴る。

 そうして、扉が開かれれば生徒会役員たちが立っていた。

 呼吸は乱れて汗はかいているものの、まだ戦意は喪失していない。


 奴らはぐるりと避難している生徒たちを見る。

 すると、職員たちが彼らに駆け寄って外の状況を聞いていた。

 代表して眼鏡の七三訳が声を抑えて説明する。

 悪魔が襲来し、既に修道院内では職員と生徒たちが殺されていると。

 それを聞いていた職員たちは恐怖で悲鳴を上げる。

 が、その声に反応し生徒たちにも恐怖が伝染していった……いけないなぁ。


 敢えて、生徒会の奴らが気を回して小声で伝えたのに。

 これでは完全に外でやばい事が起きていると教えたようなものだ。

 生徒会メンバーは少し慌てるものの、またしても七三が一歩前に出て皆に声を掛けていた。


「心配ない!! すぐに祓魔師たちが来る!! 必ずだ!! だが、その間、何も行動せずに我々は待つ事はしたく無い……そこで、急ではあるがこの中で我々と共に地上にて行動してくれる人間を集いたい!! 戦闘を行える自信がある者は名乗り出てくれ!!」

「ふ、ふざけるなよ!? やばい事が起きている地上に……だ、誰が行くって言うんだよ!? 冗談じゃねぇぞ!!」

「分かっている! 無理強いはしない。あくまでも、協力を申し出てくれた者のみでいい……誰か、いないか!」

「「「……っ」」」


 誰しもが口を閉ざし下を見つめる。

 すると、勢いよく立ち上がる奴らがいた。

 俺はそいつらを見てにやりと笑う。


「ぼ、僕でよろしければ!!」

「……僕も行くよ」

「……! ありがとう。君たちの名は?」

「い、1年E組のエゴン・アルホフです!」

「……同じく。カブラギだ」

「「「……っ!」」」


 生徒会のメンバーがハッとする。

 どうやら、俺の事を聞きたいようだった。

 七三は静かに頷き、他にはいないかと聞く。

 すると、ゆっくりと立ち上がる奴がいた……へぇ。


「……! ヤン君!」

「……勘違いすんなよ。俺はただ……あのクソ野郎が、また何処かでほくそ笑んでいるのがムカつくからだ」

「……はぁぁぁ、しゃあねぇなぁぁ」

「うっし、だったら……俺も行きまぁす」

「お前ら……たく!」


 ヤンに続いてレンとショーンも立ち上がる。

 林間学校でアレほどに傷ついていた癖に。

 それでも立ち上がる姿は見直した。

 すると、アデリナたちはエゴンたちを呼び止める。


「ね、ねぇ。何で……怖く、ないの? 本当に死ぬんだよ? すごく痛いと思うよ。絶対に、耐えられる筈……っ」

「……怖いですよ。痛いのも嫌です……でも、僕は決めてますから」

「え?」

「――先生を超える男になる。そして、あのランベルト・ヘルダー様の右腕になるって!」

「「「……っ!!!」」」

 

 エゴンの言葉に全員が驚く……言うじゃねぇか。


「……死んでも、生き返れる保証があるんです……多分ですけど……そんな中で、恐れていたら。先生に笑われちゃいますからね……それじゃ、行ってきます!」

「……待って! 私も……私も行くよ」

「…………だったら、私も行く」

「エルナ……うん、行こう」


 アデリナとエルナも決意の炎を瞳に灯す。

 それに触発されるように、E組の奴らも名乗りを上げる。

 何名かはまだ引きずっている様子ではあるが。

 仲間たちの勇気に触発されて、何とか立ち上がっていた……やるじゃねぇか。

 

 すると、それまで黙って聞いていた別のグループの奴らも名乗りを上げていた。

 どんどんやる気のある奴らが集まっていく。

 少なくとも、E組の奴らは“ほぼ全員”が参加で、これには俺も少しばかり嬉しさを覚える。

 十人以上は、残る事を選択し、離脱と覚悟はしていたが……嬉しいじゃねぇか。


 そんな光景を見つめていれば。

 ゆらゆらと立ち上がる影の薄い女がいた。

 奴は目を細めながら頬を赤く染めて。

 じゅるりと涎を垂らしながら、此処が好機だと言わんばかりに手を上げようとしていた。


「ひ、ひひ、わ、私も……に、人気のグループに、こ、これで、私も……ひ、ヒロイン」

「――ありがとう! では、すぐに作戦会議を開こう! こっちに集まってくれ!」

「ひぐぅ! ま、待って。わ、私も、わたしぃも、い、いるのにぃ……うぶ!」

「……」


 一人だけモチベーションが明らかに違う馬鹿がいやがる。

 ラストを飾ろうとして盛大に無視されていた。

 奴は羞恥と哀しみで今にもゲロをぶちまけそうで。

 慌ててアデリナたちがコルネリアを迎え入れていた……まぁいい。


 これによってE組の奴らは全員が参加し。

 他のグループの奴らも参加して……合計で65人か。


 想定よりも多い人数に関心する。

 奴らはすぐに行動を起こすべく。

 速やかに情報の交換を始めた。

 真っ先に俺への連絡をしようとして、生徒会の奴らが端末を貸していた。

 通話に出ずとも録音付きのメッセージで生徒たちが声を掛ければ応えるとでも思ったんだろう……今の内だな。

 

 俺は奴らが録音に夢中になっている隙に、自らの体を魔術によって変えていく。

 顔を強制的に変える時の応用であり、骨の音や肉の音は限界まで抑え込む。

 今度はカブラギでも察知できないように距離を置き。

 最大限、魔力の発生も抑えて……よし。


 身長は縮んだ。

 ぼさぼさ頭の十五歳の少年だ。

 もやしのような体系だ。

 この時の為に用意しておいた修道院の制服に一瞬で着替える。

 そうして、俺は誰にもバレないように集団の中に紛れて、瞬きほども無い一瞬で認識阻害と透明化を解除する。


「……ん?」


 近くにいた奴がちらっと見て来た。

 俺は首を傾げるだけだ。

 そいつはぺこりと頭を下げて前に向き直る……セーフだな。

 

 録音を取り終えてメッセージで送信した奴ら。

 暫く待っても、端末には返事は返ってこない……当然だな。

 

「……だ、ダメですかね?」

「……ダメだな……そっちは諦めよう。では、早速、作戦会議をしよう」

「……」 

 

 奴らはまるで気づいていない。

 俺はそんな中で生徒会メンバーの指示に従う奴らに習ってその場に座る。

 全員が各々の考えを聞いて、生徒会の七三が話を纏めていく。

 俺はただ頷くだけであり、発言は自らは進んでしない。

 ただ、こいつらの仲間のように振舞って見ているだけだ……だが、ただ見ているだけではない。


 それだけならば透明化をしていた方が楽だ。

 今の俺の役割はお助けキャラのようなもので。

 今回は悪魔の侵入を想定しての教師や生徒たちの自主的な行動を促す事が目的だが。

 全くヒントや手助け無しでは正直、経験の無い人間にとっては厳しいだろう。

 だからこそ、俺は奴らがより柔軟な思考が出来るようにちょいちょいっと手助けをする……ふふ、まるでテーブルゲームだな。


 ちょっと楽しくなりつつ。

 俺は奴らの会話を聞いていった。

 すると、現在ある情報では、敵の悪魔は近接攻撃に特化した大剣使いだと。

 魔術の類は使用していないものの、奴が投げて来た死体はいつの間にか消えていた。

 そこから、死体を消す魔術を使用するのではないかと考えていると七三は言う……うーん、おしいなぁ。


 良い線は言っている。

 正直、あんな危機的状況で死体が消えている事に気づいたのは百点だ。

 だが、それを安直に死体を消すだけの能力であると片付けてしまうのは頂けない。

 俺は此処で少しそれっぽい事を呟こうとして――カブラギが発言する。


「いや、死体を消すだけじゃないだろう」

「……何?」

「そんな事をしても意味無いし……例えば、死体を消したんじゃなくて――移動させたんじゃないのか?」

「……えっと、それってさ……誰かが運んだとか。或いは、何処かに飛ばしたとか……そういう事?」

「そうだ……本物の悪魔である可能性はほとんど無いし。マジで先生が僕たちを殺しに来ているんだったらさ……絶対に命に対して何かしらの保険を掛けているんじゃないのか?」


 カブラギがそう発言すれば、E組の奴らも納得したように頷いていた。

 しかし、明らかにそれは普通の人間たちにとっては常軌を逸しているように見えたのだろう。

 何名かは理解できず首を傾げて、理解できそうな奴らは少し怯えていた。

 七三はたらりと汗を流しながら、眼鏡をくいっとあげる。

 

「……待て、その言い方だと……君たちの担任は死者を蘇生させる事が出来ると聞こえるが……」

「「「…………うん」」」


 七三が眼鏡の位置をズレる。

 奴は震える手で何とかそれを直していた。

 黙って聞いていた生徒会メンバーは間抜けに口を開けていた。

 他に聞いていた奴らも、流石に嘘だろうと言っていたが。

 カブラギが心臓の止まっていたエゴンを蘇生させて。

 全身が火だるまになって炭化していたヤンも無傷の状態で復活していたと説明する。

 アデリナたちもあの時の事は伏せつつ、自分たちも死ぬような目に遭って。

 それでも先生のお陰で助かったと伝えていた。

 

 すると、全員の視線が四人に向かい、エゴンとヤンは照れくさそうに笑っていた。


「……そ、そうか……君たちは、よほど……うん、相当に……危ない橋を渡って来たんだな」

「い、いやぁそれほどでも……ありますね、はい」

「……今回の事も、何故か割と冷静でいられる自分がこえぇよ。マジで」

「先生だもん……もう驚かないよ……たぶん」

「ゲームの世界の住人の気分。先生に不可能は無い」

 

 奴らは遠い目をしながら俺を語る。

 それを聞いていた七三は乾いた笑みを零していた。

 

「……兎に角、そういう事だから。今回の事は、確定で先生が仕込んだものだ……死ぬは死ぬけど。復活できると思ってもいい」

「……うん、まぁそれを鵜呑みには出来ないが。少しは余裕が出て来た……で、だ。件の教師がこれを行っているとして……彼は一体、何をもってこのイベントを終了させるつもりなのか。分かる人間はいるか?」

「「「……それは……」」」


 カブラギが良い感じに纏めるが。

 七三の言葉で、全員が口ごもる。

 奴らが腕を組み首を傾げていた……まぁ流石に分からんか。


 林間学校での催眠は、恐怖そのものを理解するものだった。

 だからこそ、死そのものが終了を意味していた。

 今回もある意味で、死そのものが終了の場合はあるが。



 それは全ての人間の死による――“ゲームオーバー”だ。


 

 それは俺が望むもではない。

 今回はちゃんとクリア条件を設けている。

 それを伝える為に、俺はすっと手を上げた。

 すると、全員の視線が俺に集まる。


「……君は……腕章からして、二年だね……何か気づいた事が?」

「……恐らく……このイベントは……一人でも多く……生存する事……それと……外部との……接触……それが……達成条件……だと思います」

「……つまり、我々だけで何とかしてあの結界を打破し。外にいるプロの祓魔師を呼ぶと? ……だが、それならば既に到着している祓魔師が、結界を破ろうとしていると思うが……もしも、生き残る事が目的であれば我々は可能な限り奴を此処から遠ざけた方が……」

「それはそうかも……しれません……ですが……現役の方々が……未だに……此処に来ていない事……それは、つまり……難航している……という、事です……それって、妙だと……思いませんか?」

「……確かに妙だ……そうか。この結界は、外部から入る人間を阻止する事に重きを置いている……つまり、待っていても我々が全滅する方が……だが、逆に言えば。外部の人間を入れないが為に、内側からの攻撃に脆くなっている可能性があるのか」

「……多分ですけど。その襲われた上級生たちをすぐに倒しに行ったのも、その特性があるからじゃないでしょうか……じゃなきゃ、一番危険度が高い生徒会の方々を後回しにするとは思えません」


 エゴンがすかさずフォローを入れる。

 俺は何度も頷いてやった。

 すると、カブラギの奴が何故かジッと俺の事を見てきやがった……な、何だアイツ。


 まさか、気づいてやがるのか。

 いや、そんな筈はねぇ。

 今回は細心の注意を払って、態々、ノイズを感じさせない自然な声を出してみたんだ。

 魔力だって魔術を使っていないように調整しているんだぞ。

 ハキハキとは喋れねぇ事には違和感を抱くかもしれねぇけど、それは逆に陰キャっぽさを醸し出していると思える。

 故に、バレる心配は微塵もねぇ筈だが……カブラギは視線を逸らす。


「……それなら、結界を一部でも破壊して祓魔師を中に入れればクリアか?」

「……そうだと思う……でも、先生がそう簡単にクリアさせるとは思えないよ。きっと、内側の人間たちが結界に触れた瞬間に、すぐに攻撃に向かって来ると思うよ……何か、悪魔になりきってる先生の注意を引けたら」

「「「……」」」


 あぁもどかしいなぁ。

 もうすぐそこまで来ているじゃねぇかよ。

 死体を運んでいったのなら、その死体は何処にある?


 俺が本当の悪魔で、死体を回収する事が目的だとして。

 それをどうすれば、俺が焦ったり嫌に思うと考える。


 考えろ。頭を働かせろ――悪魔の目的を潰せ。


 俺は必死に念じる。

 すると、エルナがぼそりと呟く。


「……死体の回収。つまり、悪魔にとって嫌な事は。その回収した死体たちの……奪取?」

「「「……え?」」」


 全員が彼女の発言に驚く――いいぞぉ!!


 そう、そこだ。

 ちょっと言い方に語弊はあるものの。

 大体は当たっている。

 すると、七三メガネは何かを考えていた。


「……つまり、悪魔としての目的である死体。いや、この場合は生きている可能性が高いから、捕縛された人間たちの解放か……そうか。つまり、悪魔が捕縛している人間たちの居場所を突き止めて、そこを襲撃すれば……自然と敵は、二つの個所を守らなければならなくなる!」

「それです! つまり、結界を攻撃するチームと人質の解放を行うチームに別れて同時に攻撃を行えば、その瞬間に悪魔は決断を迫られる!」

「……少なくとも、人質が解放されれば振り出しに戻る。結界を壊されれば、このイベントはクリア……どんなに強固な結界でも、時間を掛ければ破壊できる……フルの状態だったら、人数を分散させれば、悪魔は彼らの殲滅で時間を掛ける事になって……その間に、僕たちは結界の破壊を再開すれば……いけるな」

「……お前、ナチュラルに解放した人間たちを囮にしようとしてんぞ?」

「……? それが何だ?」

「「「……はぁ」」」


 ヤンたちはため息を零す。

 が、その判断もある意味で正解だ。


 戦う事もしない無能であれば、囮に使う他ない。

 食って寝るだけであれば誰だって出来る。

 問題はその分の対価をどうやって払うかだ。

 労働にしろ金にしろ、払うものが無ければ与えられる事は無い。


 ……いいねいいねぇ。大体、纏まって来たなぁ。


 奴らはすぐに死体となった人間たちが何処に運ばれたのかを考え始めた。

 すると、生徒会の奴らはすぐに当たりを突き止めた。

 そう、こいつらには教員と同じ連絡手段が与えられている。

 アイツらと同じように避難せずに配置についていたのなら。

 事前に、俺がグラウンドに持ち込んでいたものにも気づいている。

 つまり、死体は全てそこに運ばれて蘇生されていたという事になる。


 捕縛されている人間たちの居場所。

 それが分かれば、後はするすると話は進んでいく。

 元々、実戦を何故か経験してそうだった生徒会の奴らがいるんだ。

 作戦を考える事にも慣れており、どんどん形になっていく……くくく。

 

 俺が設定した悪魔にとっての目的は。

 この修道院の人間たちの確保だ。

 それなりに上質な餌の確報であり、死体であっても問題は無いが。

 今回は死体から俺が復活させる術を持っている。

 だからこそ、殺してから復活させての収容の流れが自然だと考えた。

 如何に悪魔であろうとも、腐った肉を好き好んでは食わないだろう。

 グルメを気取ったカスもいるようで、鮮度が重要だ。

 その為、生かして捕らえたという設定で……つまり、悪魔は一度は捕らえた存在たちを解放されるのが我慢ならねぇ。


 結界の破壊と天秤に掛ければ五分であり。

 その時の状況によって判断するだろうが。

 今回の事であれば、俺自身の考えであるから問題は無い。


 奴らはどんどん話を纏めていく。

 結界の破壊と人質の解放。

 二つのチームに分けさせて、どのように動いていくのかを。


「あ、でも、僕たち武器が……」

「その心配はいらない……あれを」

「は、はい!」


 下級生らしき生徒が動く。

 そうして、シェルターの壁に触れて操作をすれば――壁が展開されて武器が出て来た。


「うわぁ、これ全部……聖刃かよ?」

「すげぇ、まるで映画じゃん」

「……此処は避難所ではあるが。災害の規模によっては祓魔師たちの拠点ともなる場所だ。食料なども備蓄されているし。勿論、侵入を想定して武器も保管してある……この中から、各々の適正にあったものを使ってくれ」

「あ、ありがとうございます……よし、これなら」


 エゴンたちは気合を入れていた。

 良い顔であり、俺はくすりと笑う。

 すると、またしてもカブラギの野郎がジッと俺を見ていた……な、何なんだ?


 俺は無表情で固まる。

 そうして、怪しまれないように素数を数える。

 奴は若干引いたような顔をして目を背けていた。


 俺も武器を選ぼうと立ち上がる。

 すると、何故か七三に呼び止められた。


「……さきほどはありがとう。君の気づきがなければ、この作戦は生まれなかっただろう……えっと」

「……“タカハシ”です」

「そうか、タカハシ君だね……共に頑張ろう……こう言うと変に思うかもしれないが……君を見ていると、とても心が安心するような……そんな“信頼”を感じてしまうよ」

「……どうも」


 俺はぺこりと頭を下げる。

 そうして、そそくさと武器を選びにいった。

 何にしようかと考えて、適当にショートソードを選ぶ。

 基本的に戦闘らしい戦闘はしないつもりで。

 悪魔役の“俺”との戦闘でも見守る事に徹しようとは思うが……なぁんか脱線しちまいそうな気がするなぁ。


 得体の知れない不安。

 目に見えぬイレギュラーを警戒する。

 最後まで俺自身の正体はバレないように立ち回る。


 はてさて、こいつらは無事にこの“イベント”をクリアできるのか……ゲームスタートだぁ!

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