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【完結】祓魔師《エクソシスト》は休みたい  作者: うどん


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060:祓魔師たちの惨劇(side:エゴン)


※スプラッター、グロ注意!


「……んん……んー……ん?」


 何だかすごく暑い……目が覚めてしまったな。


 頭は半覚醒状態であり、まるで“夢の中のようにふわふわ”としている気がする。

 僕はゆっくりとベッドから起きる。

 すると、ヤン君たちはよく眠れているようだった。

 起こさないように靴を履いてから、トイレに行こうとした。


 ……何だろう……視線を感じる気が?

 

 外から誰かが中を覗いているような気がした。

 僕はごくりと喉を鳴らして、窓の方に近寄る。

 ゆっくり、ゆっくりと近寄って……いない。


 窓から外を確認しても、誰もいない。

 やはり気のせいだったと胸を撫でおろし――“誰かがいた”。


「……?」


 先生たちの建物から誰かが出て行った。

 暗くてよく見えなかったけど……誰だろう?


 こんな真夜中に何をしているのかと思った。

 いや、それよりも先生たちの建物の扉は“開いている”。

 幾ら、先生たちが強いと言っても不用心であり。

 このまま見なかった事にして寝てしまえば……ちょっとまずいよね?


 あまり、真夜中の森の中は歩きたくない。

 先生も、一人で勝手に行動するなと言っていたし。

 けど、先生の建物はすぐ近くであり、これくらいであれば問題は無い筈だ。

 僕はそう解釈し、誰も起きていない事を確認して扉のロックを解除する。

 そうして、そぉっと外に出てから、扉を閉めて先生たちの建物に向かって歩いていった。


 歩いて、歩いて、歩いて……“暗いな”。


「……っ」

 

 明かりはつけていないようだ。

 まぁ当然だとは思うけど……それなら、誰が出て行ったんだろう?


 そんな事を考えながらも、入って良いのか迷ってしまう。

 もしも、このまま勝手に入って先生たちに敵だと思われたら……多分、死んじゃうと思うな。


 比喩とかでは無く、確実に先生は僕を殺す筈だ。

 別に、今更であり、何度か死ぬような目には遭ってる。

 全く怖くないといえばウソになるけども……うーん。


 僕は腕を組んで悩む。

 入るべきか、入らないべきか――


「何してんの?」

「ひゃぁ!?」

「シィー……皆、起きちゃうじゃん」


 背後から声が聞こえて変な声が出た。

 振り返れば、ジト目で僕を見つめるアデリナさんが立っていた。

 その装いはジャージ姿であり……ちょっと良い匂いがするなぁ。


 頬が赤くなりそうになるのを誤魔化しながら。

 僕はこんな時間に起きているなんて珍しいと伝える。

 すると、アデリナさんはお互い様だと言って開け放たれた扉を指さす。


「……それ、どうするの?」

「えっと……取り敢えずは、中にいる誰かに声を掛けて……ですかね?」

「……まぁそれでいいんじゃない? 私は何も知らないけど……誰か出て行ったの?」


 アデリナさんは疑問を口にする。

 僕は起きてからの状況を簡単に伝える。

 出て行った人は影しか見えていなかった事とその人は森の中に入って行った事。

 それと、関係があるのかは分からないけど、起きてから暫く外から視線を感じていた事も伝えた。

 すると、アデリナさんは身震いしながら、きゅっと唇を結んでいた……あれ?


「……そういの、やめてよ……私、そういうのに耐性がないから……いや、マジで」

「そ、そうなんですね……あ、じゃ僕が中を見て来るのでアデリナさんは」

「――は? 此処で待てって言うの? 女の子一人で? 本気で言ってる?」


 アデリナさんは僕の服をがっしりと掴む。

 そうして、目を大きく見開きながら殺気を放っていた……こ、怖い。


 女子を怒らせてはいけないと本能で理解しながら。

 それなら、一緒に見に行こうと提案する。

 すると、アデリナさんは暫く考えてから静かに頷いてくれた。


 僕は一応、持っていたスマホのライトをつける。

 何故か、あの建物には“発電機が置かれていて”……あれ、何でだろう?

 

 携帯の充電も出来るので助かる。

 現代っ子にはスマホは欠かせないものだ……でも、結局、電波は届かないんだけどね。


 僕は部屋の中に足を踏み入れる。

 アデリナさんは僕にぴったりとくっついてきた。

 何故か、腕の方に柔らかな感触を感じるけど、僕は至って平静を装った。


「せ、先生? お、起きてますかぁ」

「お、お邪魔しまーす……うぅ」


 玄関から入る

 作りは僕たちの建物とは違い。

 扉が幾つかあって仕切られているようだった。

 まず最初に、左の扉を開けた。

 すると、むわっと――“鉄錆のような臭い”がしてきた。


「な、何これ。く、臭いぃ」

「……嗅いだことのあるような、無いような……胸騒ぎがしますね」


 僕がそんな事を言えば、アデリナさんの震えは更に増す。

 脅かすつもりはなかったけど……いや、仕方ない。


 僕は気を取り直して、部屋の中を見て回る。

 此処はリビングのような空間か。

 ソファーやテレビや、様々なものが置かれている。

 奥にはキッチンなどもあり、何故か水の音が聞こえる。

 僕たちはごくりと喉を鳴らしながら、ゆっくりとキッチンの方に近づいていった。


 ゆっくり、ゆっくりと近づいて……“目に入る”。


「……? アレって……何?」

「えっと……肉、でしょうか?」


 キッチンの台に置かれているのは肉だった。

 それもそれなりに大きな肉だ。

 でも、見た事がないような形をしている。

 骨付きであり、楕円というかなんと言うか……臭いな。


 臭いの元はこれであり。

 視線を横に向ければ、流し台には蛇口から水がぽちゃぽちゃと流れている。

 蛇口があるという事は水道が繋がっているのか……“何だか、凝ってるなぁ”。


 キッチンもそうだし、蛇口などもそうだ。

 家具だって豊富で、まるで普通に豪華な住まいだ。

 家の内装にもこだわりがあり、職人の技のようなものを感じる。

 これほどの建物が――“あんな簡易的なキットで作れるものなのかな”?


 そんな事を思って――悲鳴が聞こえた。


 ハッとして悲鳴が聞こえた方に視線を向ける。

 すると、アデリナさんが腰を抜かして震えていた。

 どうしたのかと聞けば、彼女は近くにあったゴミ箱を指さしていた。


「あ、あ、あ、ぁぁ、あ……うっぷ!!」


 アデリナさんは口元を抑える。

 が、堪えきれずに床に吐しゃ物を撒いてしまう。

 僕はアデリナさんの背中を摩りつつ、彼女が見たものを確認する為にゴミ箱に近づく。

 ゆっくりと近づいて、スマホの光を向けて――“視線が合う”。


 

「――」


 

 言葉が出ない。

 否、心が一瞬――“完全に停止した”。


 

 ゴミ箱に入っていたものは、虚ろな目をしている。

 

 それは口と鼻から赤い液体を垂れ流していた。

 

 そうして、ハエがたかって腐敗した状態でもその特徴的なアフロヘアーで誰かは分かった。


 

 

 理解した瞬間――強烈な吐き気を覚えた。


 

 

「……っ!!」


 

 

 口を手で押さえる。

 そうして、キッチンの流し場に全てを吐き出す。

 皆で食べた魔物の肉やきのこが全て流れて。

 僕はそれでも嗚咽を出しながら吐き続けた。


 何で、どうして――もしかして――いや、そんな筈は――。


 僕は心が急速に冷えていくのを感じた。

 映画でも見る事が無いようなショッキングな光景。

 それもリアルであるからこそ、心を覆おうとする恐怖はかなりのものだった。

 アデリナさんはガチガチと歯を鳴らしながら両手で頭を抱えている……僕だけでも、しっかりしないと!


 僕は何とか冷静になろうとする。

 そうして、恐慌状態のアデリナさんの肩を掴んで必死に呼びかける。

 すると、彼女はぽろぽろと涙を流しながらも僕の目を見てくれた。


「……アデリナさんは、今すぐ皆の所に戻ってください。そして、皆をすぐに起こして絶対に部屋から出ないように言ってください」

「え、エゴンは?」

「……僕は、先生たちがどうなっているのかを確認します……大丈夫です。先生が、そう簡単にやられる訳ないです。だって、あの人は…………強いですから!」


 僕は笑みを浮かべて親指を立てる。

 すると、アデリナさんは静かに頷いて小さく笑う。

 彼女の手を握りながら、彼女を建物の外まで連れて行く。

 そうして、玄関から周りを確認し、誰もいない事が分かれば彼女に振り返らず皆のところまで走るように言う。

 彼女はしっかりと頷いて――走った。


 すぐに皆が寝るところに着いた。

 彼女は焦りながらも、扉をしっかりと閉めていた……よし。


 僕はそのまま、先生たちの安否を確認する為に動く。

 左は見たから、残すところは右と上で……大丈夫。大丈夫だ。


 僕はそう自分に言い聞かせる。

 そうして、震える足を無理矢理に動かして床を踏みしめていく――




 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……うっ!!」


 僕は呼吸を大きく乱しながら、建物の外に飛び出す。

 そうして、既に空っぽの筈の胃の中身を地面にぶちまけた。


 建物の中はひどい状態だった。

 先生たちは――“殺されていた”。


 首の骨を折られていたクラーラさん。

 白目を剥いて泡を吹いていて、その表情は恐怖に染まっていた。


 両手足を鋭利な刃物で貫かれて、壁に串刺しにされていたバーデン先生。

 スーツはボロボロで、内臓も飛び出していた。

 光が消えた瞳。そして、血に混じるように涙の跡が見えていた。


 頼みの綱だった先生は――ひどい状態だった。


 体をバラバラにされた上に。

 頭は完全に潰されて。

 体は念入りに焼かれていた状態だった。

 ガソリンの臭いと、肉が焦げたような不快な臭い。

 大人たちが惨殺された現実が、僕の心を恐怖に染め上げた。

 必死に足を動かして建物の外に出たが……もう、ダメだ。


 怖い、怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い――嫌だぁぁ。


 アレは悪魔の仕業だ。

 間違いなくそうであり、建物から出たのは人の姿に擬態した悪魔だ。

 そうでもなければ、ただの人間が先生たちを殺せる筈が無い。

 恐らく、暗殺者としての力に特化した悪魔だ。


 

 もしも、もしもだ――“アイツが戻ってきたら”?


 

「……っ!!」


 

 僕は両手で体を掻き抱く。

 勝てない、勝てる筈が無い。

 先生でも勝てなかった相手に、見習いである僕たちが――


「――ぃ。おい! エゴン! しっかりしろ!」

「……っ! や、ヤン君……ぼ、僕は……っ」

「……取り敢えず、さっさと戻るぞ。なんか、やべぇんだろ?」


 ヤン君は僕の体を何とか立たせた。

 そうして、足取りがおぼつかない僕を支えて建物まで連れて行ってくれた。

 中へと入れば、既に全員が起きていた。

 明かりがつけられており、カーテンはしっかりと閉められている。

 女子たちも隣に繋がる扉を開けて、ぞろぞろと入って来る。


 ヤン君は僕を開いているベッドの縁に腰かけさせてくれた。

 そうして、レン君がコップに入った水を持って来てくれた。

 僕はお礼を伝えて水をゆっくりと飲む。


「……で、どうだった?」

「……ダメ、だった……先生たちは、もう……っ!」

「……っ。そうか……クソ、どういう事だよ! 此処は、対魔局が管理している筈じゃねぇのか!?」

「知らねぇよ!? 連絡も出来ないし、そもそも状況だって何も分かんねぇのに……なぁ? 本当に先生たちは」

「――やめてよッ!!! 先生が、先生が……死ぬ、訳……う、あぁ、あああぁぁぁ!!」


 全員が動揺している。

 ヤン君は髪を乱暴に掻きむしり、レン君たちは必死にスマホを弄っていた。

 アデリナさんは大声で泣いていて、エルナさんたちが必死に宥めている。


 空気が重く、誰もが絶望している状況で――カブラギ君が声をあげる。


「……おかしくないか」

「あぁ!? 何がだよ!?」

「いや、エゴンが死体を見たのは分かったけど……それは“本当に先生たち”だったのか?」

「「「……え?」」」


 全員が目を丸くして驚く。

 どういう意味かと思っていれば、カブラギさんは小さくため息を吐く。


「……説明しているよりも、僕が確認して来た方が早そうだな……ちょっと行ってくる」

「あ、おい! 外はあぶねぇんだぞ!? 正気かよ!?」

「……問題ないよ。もしも、本当に先生を殺した奴がまだいるのなら――“とっくに僕たちは死んでいるから”」

「「「……っ!!」」」


 カブラギさんはそう言って、一人で外に出て行く。

 僕たちは互いに顔を見合わせてから、すぐに電気を消し。

 鍵を掛けてから、カーテンから見える外の景色を見つめた。


 カブラギさんは躊躇う事無く家の中に入って行く。

 僕たちは無言で彼女が出てくるのを待つ。


「……なぁ、カブラギが言ってたこと……意味わかるか?」

「……先生たちの死体が……偽物って事かな。でも、何でそんなこと」

「……だよな。偽物の死体を用意して何になるんだよ……きっと、カブラギは俺たちの事を気遣って」

「「「……」」」


 カブラギさんの言葉で、少しだけ心を持ち直す。

 もしも、本当に先生たちの死体が偽物なら……その時、アデリナさんは何かを考えているように見えた。


「……なら……あの人は……どうして……っ」

「……?」


 何を考えているのか、そう聞こうとして――誰かが声をあげる。

 

「――! 出て来たよ!」


 扉が開く。

 そうして、中からカブラギさんが出て来た。

 彼女は軽く手を振っていて、僕たちはホッと胸を撫でおろし――瞬間、“先生たちの建物が爆発した”。


「あああぁぁ!!!?」

「きゃあああああ!!!!」


 凄まじい爆発であり、その衝撃によって窓ガラスが吹き飛ぶ。

 僕は咄嗟に、アデリナさんたちを庇う――うぐぅ!?


 体中に窓ガラスの破片が刺さる。

 肉が裂けて、血がだらだらと出ていた。

 僕は痛みを堪えながら、何とか立ち上がり窓のあった場所に近づいた。

 そうして、外を見れば――辺り一帯が紅蓮の炎に包まれていた。


 何処を見ても炎だ。

 昼間のような明るさであり、炎の熱で体から汗が噴き出す。

 パチパチと音を立てながら木々が燃えていた。

 獣たちが鳴いており、鳥たちが驚いて羽ばたいていく。

 が、そんなものよりも僕たちの目には――“彼女だったものが見えていた”。


「あ、う、うそ、そん、な……いやああぁぁ!!!」

「う!! マジかよ、こんなの、こんなの……あああぁぁ!!!」

「……っ。でも、あれは……現実……っ」


 全員が火だるまになったそれを見つめる。

 手足はもがれて、黒く炭化するほどに燃えていた。

 彼女のお気に入りのパーカーの一部が落ちている。

 僕たちはその光景を見つめながら、誰しもが言葉を発する事無く――“恐怖で震えていた”。

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