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【完結】祓魔師《エクソシスト》は休みたい  作者: うどん


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54/134

054:祓魔師は残業をする

「「「……」」」

《どうしましたか? さっさと食べてください》


 生徒たちの前に並べられた料理。

 いや、料理というにはあまりにもどろどろとしていた。

 魔物の肉や沢山のきのこや山菜を大鍋にぶちこみ。

 ボブのアホが訳も分からないままに幾つものスパイスやら調味料やらを投入した結果……これが出来た。


 見た目は“緑色のゲル状の何か”で。

 ボブのアホが料理は火力だと抜かし。

 偶々あった灯油を使って無理矢理に高火力にし鍋で焼きまくった結果――ゲル状になってしまっていた。

 

 スプーンで掬えばどろりとし、口に入れれば……悪くは無い。


 食感はぶよぶよとしているものの。

 最後の仕上げはクラーラがやっていた。

 こいつはシビレマメの時も意味不明な材料で最高の料理をしていたから期待していたが。

 その腕はやはりプロを超えて神のレベルのようで。

 絶対にマズいであろうあれを一口味見しただけで理解し、流れるように飯として成り立つように軌道修正をしていた。

 もしも、クラーラが何もしていなければ確実にこの料理で死人が出ていただろう……まぁ“この後にどうなるか”は知らんがな。

 

 生徒たちはパクパクと料理を食べる俺たちを見つめていた。

 エルナの奴は気にせずに食べており、美味いとも言っている。

 新食感であり、捉え方によっては新しい道が開けると思える。

 

 生徒たちは俺たちが食っている事で、食べられると判断し。

 おずおずとスプーンを摘まんで食べ始めた。


「……あれ? 案外……いけるな」

「……何て言うか……こぅ、新しいつぅのかなぁ……ふにふにしていてドロッとしていて……でも、味は濃厚ながらもえぐみがねぇんだよなぁ」

「……虫なんかよりは百倍マシだよ……うん、マシマシ……いや、普通に美味しくない?」

「ひ、ひひ、わ、私みたいで親近感が湧いて来る……美味しい」

「……変な感じだけど……悪くは、無いのか?」

「魔物を食べる経験何て滅多にない事だよ! まさか、普通に食べられるなんてなぁ……良い思い出になったなぁ!」


 生徒たちはわいわいと食べている。

 まぁ食えるのなら良かったと思う。

 そもそも、魔物の肉自体は食べる奴はそんなにはいない。

 大体が“毒を持っている”ような奴が多いからな。

 此処にいる魔物であれば、毒もほとんど無いと分かっているから食べられるが。

 得体の知れないものを食べようと思う者はいない……まぁ俺たちは食うけどな。


 俺たち祓魔師は、如何なる状況下でも任務を続行しなければならない。

 装備が無くとも、食力が底を尽きようとも。

 自らで考えて工夫をし、生き残る為の最善を尽くす。

 生き残ってこそであり、その上に任務も達成するのだ。

 だからこそ、虫であったり魔物であったりで食べる事が出来ずに餓死するようでは点でダメだ。

 何時も何時も、満足な飯が食える訳では無いからこそ。

 普段からあらゆるものに関する知識を蓄えて、食べられるのなら食べるという認識を持たないといけない。

 

「……」


 食べる手を止める。

 ふと、脳裏に昔の景色を映った気がした。

 

 俺は昔を思い出していた。

 記憶にある中でも大変であった任務が幾つもあるが。

 中でも、俺がまだモナートでもなかった頃。

 とある研究施設の防衛任務を与えられていた時の事だ。

 その施設でどんな研究が行われていたのかは知らない。

 全てが極秘であり、研究が完了するまでの間の悪魔から襲撃からの防衛任務だった。

 人を餌としてしか見ていない悪魔たちが態々、襲撃を計画するほどの研究であり。

 その研究の情報を盗まれる事は、人類にとっての大きな損失であると聞かされていた。

 故に、ケーニヒは勿論の事、当時はまだダーメであった俺も招集される事になった。

 

 あの時はまだまだ俺は未熟であり、仲間たちを危険に晒してしまった。

 その結果、俺たちは敵の魂を代償に発動した強固な結界内に閉じ込められて。

 脱出する事も不可能な中で、俺はたった一人で二十四時間、常に襲ってくる敵と戦い続けた。


 ケーニヒは負傷し、ダーメたちも戦える状態では無く。

 唯一、傷の再生能力と不死性を持つ俺のみが戦える状態で。

 俺は死ぬ気で研究施設の防衛を行い。

 無限に沸いて来る悪魔のような何かと戦い続けた。

 

 腕がもがれても、足が斬られても。

 頭が吹き飛ぼうとも、体中が焼かれようとも。

 再生を繰り返し、血反吐を吐きながら――俺は戦い続けた。


 戦って、戦って、戦って……結果、結界内で長い時間閉じ込められていたが、何とか脱出できた。


 もしも、“奴ら”がいなければ。

 あのまま後どれくらい閉じ込められていたかは分からない。

 研究所内にあった食料もそれほど多くは無く。

 仲間たちは勿論の事、そこの職員の奴らも見る見るやつれていったのを覚えている。

 幸いにも一人も死なせる事無く生還できたが……あれはかなり堪えた。


 食事もできず、寝る事も出来ず。

 ただひたすらに敵を警戒し戦い続けた。

 俺の呪いがあったからこそできる技であり。

 他の奴らでは絶対に出来ない狂気の仕事だ。


 まぁその功績があったからこそ。

 俺は後に階級を上げられて、モナートの位になったともいえる。

 積み重ねであるが、アレも昇進に大きく関わっていたんだろう。

 正直、全く嬉しくは無かったがな。

 

 ……そういえば、あの時に助けた研究員の一人の名前が……“カブラギ”だったな。


 俺はちらりとカブラギを見る。

 黙々と飯を食っており、時折、エゴンたちと話している……まさかな。


 当時のその研究員は二十代であったが。

 今も生きているのであれば、百歳を超えている事になる。

 死んでいると考えるのが普通であり、生きていれば……いや、いい。


 俺は昔の思い出を振り返るのをやめた。

 カブラギはカブラギであり、もしもアイツの孫かひ孫であっても関係は無い。

 アイツの過去には何かありそうだが、今は詮索も深入りもしない。

 時が来ればであり、その時が何時かは分からない。


「……」


 俺は飯を食い終えてから、立ち上がる。

 そうして、クルトとクラーラに生徒たちに温泉の場所まで案内してあげるように言う。

 二人は互いに顔を見合わせてから、俺に笑みを向けて了承の意を示す……さて。


《少し離れます》


 俺はそれだけ伝えてから、皆の元を離れて――地を蹴る。


 一気に空中に上がり、適当に森から出る為に動く。

 ぐんぐんとスピードを速めて行けば、広大な森の出口があっという間に見えて来た。

 俺はそのまま速度を緩める事無く地面へと方向を変えた。

 そうして、そのまま地面を滑りながら着地し。

 警備を行っていた祓魔師に手を上げてから歩いていく。


「お、お疲れ様です!」

「……」


 新入りらしき男。

 俺の事は知らない筈だが、敬意に満ちた顔をしていた。

 敵では無いと分かっていて、空から現れたのであればかなりの実力者……そんなところか?


 一応はフーゴ・ベッカーとしての自分は伝えてある。

 もしかしたら、慈愛の教師かなんとかの情報だろうか。

 面倒臭せぇと思いつつ、俺は端末をポケットから取り出す。

 指で操作してから、俺は“ある男”に連絡を繋ぐ。


 

 ワンコール、ツーコール……出た。


 

《“先生”ですか? どうされましたか》


 

 しわがれた声であり、年配の男の声だった。

 自信に満ちて、声だけで力のある存在であると分かる。

 久しぶりに聞いた男の声に安堵しつつ、俺はある事を聞いた。

 

《……支部長から聞きましたが、仕事でライツに来ているらしいですね……ライツには、まだいますか? 急で申し訳ないのですが、頼みたい事があります》

《……いやはや、機械音声の上に敬語とは……それ以上に、貴方から直々に“我々”に頼み事をするのはよほどの事でしょうな……もしや、また誰かへの教育ですかな?》


 男は昔を思い出して楽しげに喋る。

 ガキの頃からこういう余計な事を喋る癖は変わっていない。

 酒が入るともっと饒舌であり、うざったいほどに絡んでくる。

 俺は少しムッとしながら、俺は今まで誰かを育てた事はなかったと伝える。

 そもそも、俺は先生と呼ばれるような上等な人間でも無かった。

 傍若無人であり、好きなように振舞っていた。

 そうハッキリと伝えてやれば、奴は笑いを堪えている様子だった……クソが。


《く、くく……まぁ貴方がそう仰るのなら、そういう事にしておきますよ》

《とてもムカつく言い方ですが……まぁ良いでしょう》


 俺はムッとしつつも、今回は頼む側であるからこそ言いたい事を我慢する。

 

《……して、今回は何を? 技術的な事でしたら、私では無く“ムサイ”の方が》

《いえ、違います――私の生徒たちに、祓魔師にとっての“恐怖”を教えてあげて欲しいんです》

《……ほぉ恐怖ですか……それは別に構いませんが……本当に我々でよろしいのですかな?》


 男は尋ねて来る。

 どういう意味かと惚けてやれば、奴はハッキリと言ってきた。


 

 

《我々は加減を知りません。最悪――“心が壊れますよ”?》

「……」

 

 

 

 男は誇張などしていない。

 事実を言っただけであり、今までの付き合いで何をするのかは分かる。

 普通の新人であれば、確かに危険だろう。

 傷は癒せても、心の傷というものは簡単には癒せない。

 もしも、過度なストレスを掛けて心が砕けてしまえば。

 如何に俺であろうともそれを修復する事は容易くは無い。

 故に、男は俺と生徒を思って聞いてきて――俺は笑う。


《問題ありませんよ。全く心配などしていませんから》

《……ならば、私は何も言いません。引き受けますよ。何時、行けばいいですか?》

《色々と準備もあるでしょうが。ある程度の必要なものは此方で用意します。武器なども持って来る必要はありません……そうですね。“二日後”までに来られますか?》

《……確認しました。問題ありません》

《では、詳細な集合場所はこの後に送ります。現地の祓魔師には私から報告しておくので》


 俺は伝える事を伝えて通話を切ろうとした。

 すると、男がくすりと笑った気がして思わず聞き返した。


《いえ……ただ、羨ましいと思っただけです。貴方にそこまで信頼されている存在たちに……少し興味が沸きました》

《……そうですか。加減しろとは言いませんが、本気で潰すのだけは控えてくださいよ》

《ふふ、分かっています。では》

《――それと、私は貴方にも期待していましたよ。昔も、今も》

《……ずるいお方だ。やはり、貴方は先生だ……それでは、また》


 男は言いたい事を言って通話を切る。

 俺は静かに息を吐く。

 そうして、森林地帯を覆う壁に背を預けながらルインを見た。

 校長から連絡が来ており、すぐにかけ直した。

 すると、通話はすぐに繋がる。


《あ、ベッカー先生ですか? もぉ、今まで何をされていたんですか? 全く繋がらないので心配していましたよぉ》

《……ん? 通話は訳あって出来ないと伝えていませんでしたか?》

《おろ? それは……あ、確かにそう言っていた気が……あぁすみません。私が勘違いをしていたようです……それで、生徒たちはどうですか? 何か問題は?》


 校長は生徒たちが無事かどうかが気になるらしい。

 俺は怪我はしたが治したから無傷であると伝える。

 今は狩りで捕まえた獲物を食べている事も伝える。

 すると、校長は「狩りで?」と少し驚いていた。


《私なりの林間学校ですよ。自然に触れて、自分の手で食材を集めて、感謝しいただく……ただそれだけです》

《おぉ、それは何とも……先生の行っている事を聞いてしまえば、他の生徒にしている事が稚拙に思えてしまうようで、教育者として何ともお恥ずかしい限りですが……そうですか。生徒たちは多くの事を学べているよですね》


 校長は感心と共に納得したように声を出す。

 あまり俺の言う事を鵜呑みにするのはどうかとも思うが。

 この人はこの人なりに生徒たちの事を思っているんだろうと思う。

 だからこそ、最初の時のように有象無象のように思う事は無い。


《……それにしても、先生から最初に提案された時は驚きましたよぉ。まさか二泊三日の林間学校を――“六泊七日”に延長したいとは》


 校長はからからと笑う。

 生徒たちには伏せてある情報だ。

 他のクラスの生徒たちは知っているが。

 アイツらだけは二泊三日であると思っている。

 奴らを監視し、他の生徒から情報を与えられないように細心の注意を払っていた。

 その結果、奴らはその情報を得る事無く今日と言う日を迎えた。


 カブラギへの対応と防犯教室の準備。

 それと同時に林間学校での準備も進めて。

 あまり眠れてはいないが、祓魔師をメインにしていた時よりはマシだ。

 急ピッチな事もあって、まだまだ不安な部分もあるが……問題は無い。


 俺の計画通りに事を運ばせる。

 例え生徒たちがついてこれなくなろうとも。

 俺が何とかしてついていけるように持っていく。

 奴らはただ真っすぐ走るだけであり、道の補強とアシストは俺の仕事だ。


《……提案を受け入れて頂きありがとうございます。此方の方は何も心配はいりません。校長は他のクラスの方々のサポートに専念してください》

《あ、そうですね! では、Eクラスの子たちを頼みます。それでは、おやすみなさい》


 校長はそれだけ言って通話を切る。

 俺は端末をポケットに戻そうと……仕事か。


 端末に表示されたメッセージ。

 此方の事情を理解しており、専用の通信を行ってきた。

 緊急時に使われるものであり、事は一刻を争うようだった。

 メッセージを開いた瞬間に暗号が解かれて行き。

 仕事の内容が表示された……クソが。


「……」

 

 俺は舌を鳴らし、端末をポケットに仕舞う。

 そうして、生徒たちの方へと急いで戻る為に大地を強く蹴る。


 空を飛びながら、目に魔力を集中させる。

 そうして、“目印”を頼りに進み――到着する。


 ゆっくりと地面に降り立つ。

 見れば生徒たちが片づけをしていた。

 ヤンは温泉の事をクルトに聞いている。

 クルトはそんな彼に丁寧に説明していた……ん?


「……で……だから……な?」

「……おぉ……よし……だ」

 

 視線を向ければ建物の影に隠れるように話す集団が見えた。

 魔力で視力を強化しながら、透過の術で確認すればレンとショーンがボブと何かを話している。

 何故か、気配を殺し小声でひそひそと話していた。

 透過によって奴らの姿は丸見えでボブに対してレンが紙幣を渡しており……あぁ、クソ。


 俺は気配を殺して奴らに近づく。

 すると、ボブの野郎が気づきやがった。

 奴はさっと紙幣をポケットにねじ込み。

 奴らの肩を抱いて出て来た。

 ニコニコと笑いながら野球の話をしている。


《……何をしていたんですか?》

「あ、パイセンじゃないっすかぁ! いやぁこいつらとのトークが面白くてねぇ! 若いって言うのに物知りなもんでぇ、なぁ!」

「え、あ、あぁ、そうそう! 俺たちめっちゃ詳しいんでね! 野球!」

「そ、そうそう! 一歩足打法はシブいって話をさぁ!?」

「……」


 レンとショーンの目は泳いでいる。

 唯一、キングオブクズのこの男だけは動揺していない。

 昔からこういう事に慣れているせいで、凄腕のメンタリストでもこいつの心を読む事は出来ない。

 俺は目を細めながら笑うボブを見つめて……小さくため息を吐く。


《まぁいいでしょう。さっさと片づけをしなさい。そして、温泉によくつかり、すぐに寝なさい。明日も大変ですからね》

「「は、はい!!」」


 俺は踵を返して歩いていく。

 後ろで二人がほっと胸を撫でおろすのが分かった。

 俺は足を止めてから、一応は――“忠告”をしてやる。



 

《もし、私の前で秩序を乱す事をすれば――どうなるかは分かりますね?》

「「……!!」」




 俺は少しだけ殺気を放つ。

 すると、レンとショーンはガチガチと歯を鳴らしていた。

 が、ボブが笑いながら二人の肩を叩く。


「分かってますよぉ! パイセンの恐ろしさは俺がよぉぉく知ってますから。こいつらの事は俺に任せて……ね?」

《…………良いでしょう。私の信頼を――裏切らないでくださいね》


 俺は殺気を消す。

 そうして、もう言う事は無いと歩いていく。

 クルトが駆け寄って来てチラリとボブを見た。


「……何かするつもりでしょうか」

《分かりません……が、碌でもない事です。念の為に、奴を監視してください。私は伝える事を伝えれば“仕事”で此処を離れるので……なるべくすぐには戻ります》

「分かりました……クラーラ様には私から」

「聞こえてるよぉ……ダーリン! 任せて! あのドブカスは私がちゃぁぁんと見張っておくからね」


 クラーラがぬっと現れて俺の腕に自らの腕を絡める。

 クルト君は真顔でクラーラを見つめていた。

 俺は離れるように言いつつ、任せる事を伝えた。


 ……あのクズは金を貰って何をするのか。


 俺はろくでなしのクズのする事を警戒しつつ。

 林間学校の途中で急な仕事を入れて来た鬼畜眼鏡を恨む。

 何でも、大型の飛行特化の悪魔であり最上級に位置するそれが三体。

 上空を高速で飛行しながら、何処かを目指しているらしい。

 迎撃に当たった戦闘機は破壊されて、情報によれば近代武装のような確認されているらしい。

 

 機関銃らしきものと爆弾。

 爆弾を使用していない事から、それはかなり危険だと思われる。

 ライツまでの最短ルートを通っているところを見るに。

 狙いは此処であり、大方、それを使って俺を殺そうとしているのか。

 俺のする事はそんな悪魔の殲滅であり、久しぶりの遠距離スナイプをする事になる。


 面倒でかったるいが……仕事は仕事だ。


 俺は生徒たちを呼びつける。

 そうして、虚空から袋を取り出して生徒たちに見せた。


《片づけを終えた生徒から順番に袋の中身を受け取ってください。クルト先生に渡しておくので》

「……? それは何ですか?」

《簡単にいえば胃薬のようなものです。もしも、体調に不調が見られればすぐにこれを服用してください。水はいりません》

「「「……?」」」


 生徒たちは首を傾げていた。

 俺はクルトに袋を渡す……これでよし。


 俺は片手を上げてそのまま飛んでいった。

 ぐんぐんと離れていきながら、空中で装いを変更する。

 漆黒の装いに髪色も戻してから、聖刃の一つである巨大な狙撃銃……いや、“狙撃砲”を取り出す。


 そうして、耳にインカムをつけてからコンタクトレンズになった小型ディスプレイもつける。

 装着すればすぐにオペレーターであるカーラに繋がる。

 敵の座標が送られてきて、狙撃可能エリアに到達するまでの時間は――およそ、十五分。


《間に合うかい?》

《――誰に言ってるんですか?》


 俺は重く硬いレバーを動かし、巨大な弾を装填する。

 そのまま更に加速し、五分で狙撃ポイントに行く事を伝えた。

 彼女は無駄な質問をする事無く、ポイントからの狙撃に必要な情報を計算し始めた。

 俺はそれを聞きながら、面倒な仕事をさせるクソ共への殺意をふつふつと高めていった。

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