053:祓魔師はタフな人たちなんだ(side:エゴン)
がさがさと草を掻き分ける音が聞こえる。
クラスメイトの中で刃物型の聖刃を持つ人たちは、邪魔になる草を切っていた。
僕はガントレッドであるから、そんな人たちの後ろを黙ってついていく。
少しぬかるみを帯びた土を踏みしめれば、引き上げる時に僅かに力を使う。
「……ぅ」
蒸し風呂のような環境に、思わず声が出る。
陽の光があまり届かない所ではあるが。
熱が籠っているのかじめっとした暑さを常に感じる。
此処はライツの領内で。
間違っても熱帯雨林では無い筈なのに……何なんだろう、本当に。
地獄を模していると先生は言っていたけど。
本当に地獄はこんな所なのか。
僕は見た事も無いし、他の人だって知らないだろう。
けど、想像と違うと思っているのは僕だけじゃない筈だ。
熱さによって体力が奪われて行き。
顎から汗が滴り落ちていく。
どれほど歩いたのかは分からないけど。
まだまだ、僕たちは拠点に帰る事は出来そうにない。
林間学校初日であり、まだ僕たちはそれらしき事を何一つ出来ていなかった。
一体、こんな危険な場所で僕たちは何を学ぶのか。
僕自身は不安だけじゃなく、期待も込めて先生の教えに従うつもりだった。
そんな事を考えていれば、前を歩くヤン君とレン君がぼそりと呟く。
「……何かやばくねぇか?」
「……あぁそりゃそうだろう……あっちぃのに悪寒が止まらねぇよ」
「「「……」」」
レン君とヤン君が呟きに、僕は静かに頷いた。
他の皆も同じよう事を考えているようで、黙って歩きながら周りを警戒していた。
草が鬱蒼と生い茂り。
見た事も無いような大木は軽く十メートル以上はありそうな気がした。
葉っぱの隙間から僅かに差す陽の光。
そこから何かが見えていて、恐らくは鳥だと思うけど……。
先ほどから獣か魔物か分からない鳴き声が聞こえている。
まるで、森の中に入った僕たちを威嚇しているようだ。
武器を持ったのは正解であり、丸腰だと安心できないと身に染みて分かる。
視線を常に感じていて、草の向こう側で僕たちを食べようと魔物たちが狙っている気がした。
視線を前に戻せば、ボブさんが歌を歌っている。
邪魔な草も何のそのであり、気にせずずんずんと歩いていく。
大きな声で知らない歌を歌っていた。
アレは獣避けなのかもしれない。
でも、僕たちには歌を歌う勇気は無い……それに……。
「……!」
グゥとお腹が鳴る。
少し恥ずかしく思いながら周りを見れば。
皆も同じように腹を抑えていた。
陽の光はあるが、昼は既に大きく過ぎている。
弁当も貰っていなかったから、お菓子しか食べていない。
その上、不安定な足場で歩き続けているから結構、体力の消耗も激しい。
……ボブさんは煙草だけ吸っていて、バスでは寝ていたけど……お腹は空いていないのかな?
荷物を詰め込んだり、僕たちを運んだり。
結構、動いている筈なのにまるで疲れていない。
恐らく、ボブさんも祓魔師なんだろうけど。
対魔局の人たちはこれほどまでに体力があるものなのか。
僕がそんな事を考えていれば、ボブさんは足を止める。
釣られて僕たちも足を止めて、どうしたのかと質問した。
ボブさんはゆっくりと振り返る。
訝しむような視線を僕たちに向けながら、ひげのそり残しが残る顎を撫でている。
「うーん。お前たちの事を第一にってパイセンに言われてたからなぁ……腹減ってるだろ? 飯とまではいかねぇが。軽食でもとらせるべきかと思ってなぁ」
「「「……!!」」」
僕たちは目を輝かせる。
そうして、何度も頷いてしまう。
エルナさんに至ってはだらだらと涎を垂らしている。
よほど空腹だったんだろう。
目は血走っており、その笑みは何処か狂気じみていた。
ボブさんはそうかそうかと頷いて、近くに立つ木に近寄る。
そうして、ひとさし指を立てたかと思えば魔力を薄く流して――突き刺す。
「うーん。食った痕があるから多分……お、いたいたぁ!」
「「「……ぇ」」」
べりべりと木の皮を素手で剥がす。
すると、その中にはもぞもぞと動く虫の幼虫がいた。
白い色をしており、木の皮を剥がした事でくねくねと動き出していた。
五匹ほどいて、栄養を沢山取っているのかぷりぷりとしている。
先生はそれを一匹捕まえてから、僕たちの方に向ける。
「よし――“食え”!」
先生は満面の笑みで虫を差し出す。
僕たちは口を小さく開けて放心していた。
が、ようやく言葉の意味を理解し、僕は必死にことばを選んで発言した。
「え、え、え、あ、あの……む、虫をですか?」
「あぁ? 当たり前だろ……あぁ、アレルギーか?」
「え、い、いや、そうじゃなくて……え、え?」
僕たちは戸惑いながら虫を見つめる。
明らかに虫であり、もぞもぞと動いていて活きが良い。
鮮度は抜群でも虫であり、今まで生きてきて生きている虫を食べた事なんて無い。
抵抗感はかなりのものである上に、これを食べたらお腹を壊しそうな気もする。
火を通したものならば……いや、それでも厳しい気がする。
先生と虫を交互に見る。
すると、先生はすごく面倒そうな顔をしていた。
「……別に虫とかどうでもいいだろぉ? 食えるんだからさぁ……言っておくけどな。俺だって気遣ってやったんだぜぇ? カブトムシとかよりも、カミキリムシの幼虫の方がお前らにとっては美味いと思ってこいつにしてやったのによぉ……はぁぁ、温室育ちはこれだから嫌いなんだよなぁ」
「む、虫なんて嫌だよ! マジで無理!! そんなキモイの絶対に嫌!!」
「はぁぁぁだりぃぃなぁぁ」
アデリナさんが顔面蒼白で首を激しく左右に振る。
ほとんど涙目であり、僕たちも同意を示していた。
が、唯一エルナさんだけがボブさんに近づいて……え?
彼女は両手を差し出す。
すると、ボブさんはニッと笑って虫をエルナさんの手に載せる。
彼女はジッと虫を見つめてから――口に入れる。
「ちょ!? え、エルナ!?」
「く、食いやがった!? 正気かよ!?」
「す、凄い!」
僕たちは驚きながらエルナさんを見つめる。
彼女は口を動かして咀嚼してからゆっくりと飲み込んだ。
「……美味しい。むにゅっとしてるけど、クリーミーで臭みも無い……焼いたらもっと美味しいかも?」
「お! 分かってんじゃねぇか。お前はこの中で一番頭が良いなぁ! よし、残りも全部にお前にやるよ! まだいるか?」
「いる。ください」
「おし、じゃちょっと待ってろよぉ。お前たちも気が変わったら言えよぉ」
「「「……っ」」」
エルナさんは残りの虫を掴んで口に入れていく。
お腹が減っていた彼女にとって、虫である事はあまり関係ないようだった。
彼女の顔を見れば分かるが、無理して食べている訳でもなさそうだ。
本当に美味しいようであり……僕たちは喉を鳴らす。
「……僕、食べてみます」
「う、嘘!? やめた方が良いって! ぜ、絶対にお腹が壊すよ!?」
「……いや、あのアフロ野郎はプロだろう? アイツが食えるって言ったんだったら、その心配はねぇんじゃねぇか? だったら……俺も食ってやるよ。どの道、何か腹に入れねぇと力が出ねぇし」
「お、俺も……食ってやるよ!」
「わ、私も!」
皆が虫を喰う覚悟を固める。
アデリナさんは唯一何も発言していないカブラギさんを見た。
すると、彼女も腹は減っていると言った。
「……虫くらい、どうって事は無い」
「……み、皆……う、ぅぅ、ぅぅ!!」
クラスメイト達が虫を食べる事を決意する。
唯一、アデリナさんだけが頭を抱えて蹲り激しく悩んでいる。
ぶつぶつと虫は嫌だと呪文のように言っている。
それを心配しつつも、腹を括るしかないとは思っていた。
本気で嫌だろうけど、何か食べないとこれから行う事も出来ないかもしれない。
恐らくは食料調達であり、狩猟のような事もするんだろう。
もしも、狩猟が失敗すればおのずと虫などでたんぱく質を補給する事になる。
その事をアデリナさんに伝えれば、彼女はがばりと顔を上げる。
「…………食べる…………食べれば、いいんでしょう…………ぅぅ!!」
「アデリナ、安心して。虫は美味しい」
「そんな心配してないよ!!」
アデリナさんは叫ぶ。
すると、獣たちの鳴き声が更に強くなる。
彼女は悲鳴を上げてその場にまた蹲る。
すると、ボブ先生が手を振りながら帰って来た。
いつの間にか服を脱いでいて、鍛え上げられた鋼の肉体が露になっていた。
女子生徒が数名少し感嘆の息を漏らしている。
ボブさんはそんな視線には気づかずに、上着で包んだ何かを僕たちの前に下ろし……うぅ!!
「さぁどんどん食えよぉ。これから大仕事なんだからよぉ」
「「「……っ!」」」
もぞもぞと蠢く幼虫たち。
全てがカミキリムシの幼虫だった。
今の一瞬でこれほどの量を集めたのか。
何人かは口に手をやり吐き気を誤魔化していた。
僕は山盛りの幼虫を見つめてから、震える手で一匹を摘まむ。
そうして、口の中へと入れて噛んで……あぁ。
ぐにゅりとしてぷちゅりと中の液体が出る。
本当にクリーミーであり、少し木屑の感じはするけど。
それでも味はとても美味しいと思える。
雑味とか苦みのようなものはなく、見た目さえ気にしなければいける。
僕はゆっくりと飲み込んで、汗を片手で拭い皆に親指を立てる。
すると、全員が幼虫を摘まんで食べ始めて……そこからはあっという間だ。
一回食べる事が出来れば、何となくいけると分かる。
ほとんど抵抗は無く、二個目も摘まんで食べられた。
いつの間にか、僕たちは笑みを浮かべながら虫を食べていた。
すると、ようやく復帰したアデリナさんも近くに立ち。
顔面蒼白を通り越して土気色の顔で。
両目から涙を流しながら、虫を摘まんで……食べる。
「う、ぅう、ひぐ、ぅぇ……う、うぅ……っ……はぁぁぁ!」
アデリナさんは呼吸を再開する。
そうして、汗をだらだらと流しながらも二匹目を掴んで食べた。
アデリナさんの場合は抵抗感は消えて無さそうだけど。
それでも吐かずに食べているところを見るに問題はなさそうだった。
ボブさんを見れば何かをぼりぼりと食べていて……え?
口の端から昆虫の足が見える。
僕は震えながら何を食べているのかと聞く。
すると、ボブさんはバッタだと言っていた……え?
「……あぁ、安心しろよ。こいつばライターで軽く焼いてるからなぁ。“寄生虫”の心配はねぇよ」
「……え、これは……?」
「あぁ? それは心配ねぇよ……多分な! ははは!」
「「「……」」」
食べる手を止める。
ボブさんはカラカラと笑っていた。
一気にこの人の事が信用できなくなっている気がする。
アデリナさんを見ればお腹と口元を抑えて白目を剥きそうになっている。
そんな僕たちの様子を見て、お腹が一杯になったと勘違いしたボブさん。
彼は暗くなる前に獲物を捕まえるぞと言ってまた歩いていった。
僕たちは無言であの人について行く。
先生とは比べ物にならないほどにいい加減で。
正直、ついていくのも嫌な気はするけど。
此処で僕たちで帰ればどんな目に遭うかは目に見えていた。
だからこそ、誰もが嫌な事一つ言わずにこの人についていくしかなかった――
「アアアアァァァ――ッ!!!??」
「「「エゴォォォォォン!!!??」」」
「頑張れ頑張れぇ、ははは……おもしれぇ」
魔物との初戦闘――駄目かもしれない。
大きな体躯の猪の魔物。
体長にして五メートルはありそうなそれ。
目は真っ赤であり、体毛は黒く白い文様のようなものが描かれていた。
ボブさんに連れてこられたのは魔物の縄張りで。
そこで複数の魔物との戦闘を余儀なくされた。
ヤン君を始めとした五人のクラスメイトが盾で攻撃を防ぎ。
杖によってアデリナさんたちの魔力隊が支援攻撃を行う。
エルナさんたちが連携攻撃によって相手をかく乱し。
コルネリアさんが痺れ薬などで獣の動きを封じている……が、上手く行っていない。
相手は悪魔じゃない。
それでも、地獄にいる生き物で。
それらの攻撃性や本能は馬鹿には出来なかった。
暴力そのものであり、相手は僕たちを殺しに来ている。
それが分かるほどの殺気であり、戦える事が奇跡にも近いかもしれない。
が、時間が掛かっており、焦った僕は前に出て――捕まった。
空を飛んでいた魔物がいた。
そいつの接近に気づかずに肩を掴まれて、連れて行かれそうになっていた。
仲間たちが僕の名を叫んでいて、僕は必死に身をよじる。
拳を固めて鳥の足を攻撃するが、まるでダメージになっていない。
そもそも、奇妙な顔の鳥型の魔物は一切僕の事を見ていなかった。
僕はこのままではまずいと判断し――魔力を解放する。
ニンドゥで教わった魔力の全力解放だ。
それにより、肉体の能力を飛躍的に向上させて――鳥の足を掴む。
一気に手に力を込めれば、バキリと音がした。
瞬間、痛みで悲鳴を上げた鳥が暴れて足の力を緩めた。
僕は解放されて――地面に落下していく。
「アアアアァァァ――ッ!!!?」
このままでは、落下死で――誰かが僕を受け止めた。
顔を上げれば、にやにやと笑うボブさんだった。
彼は助けていなければ死んでいたと言う。
「もうちっと体を鍛えるか。考えるかだなぁ……ま、次に期待するぜぇ」
「あ、ありがとうございます……て、皆は!」
僕はお礼をしながらも、ボブさんの腕から離れて。
そのまま皆の下に走る。
方向感覚を狂わせるような森ではあるけど。
距離が離れていなかった事もあってすぐに元の場所に戻れた。
「――あ」
「――――ッ!!!!!」
見れば、猪の魔物がヤン君たちを弾き飛ばして。
支援に夢中だったアデリナさんたちに突っ込んでいっている。
僕は考える間もなく走り出し。
そのままガントレッドに力を込めた。
魔力を集中させて練り上げて――飛ぶ。
そのまま、猪の横っ面に――叩きこむ。
魔物は顔を大きく歪ませる。
そうして、僕の解き放った魔力を受けて地面を転がった。
そのまま大木にぶち当たり、よろよろと倒れる。
魔力による攻撃であり、後の事も考えていない一撃だった。
偶々、命中していたからいいものの。
もしも避けられていたら、僕は死んでいたかもしれない……でも、そんな事よりも。
「はぁ、はぁ、はぁ……大丈夫ですか!?」
「え、あ、うん……エゴン、凄いじゃん!」
アデリナさんは僕の胸を軽く小突く。
僕はアデリナさんに褒められて少し顔をにやつかせた。
そうして、ハッとして周りに視線を向ける。
すると、今まさにエルナさんが魔物にとどめをさしていて。
他の魔物に関してはカブラギさんが始末していた……凄いなぁ。
「……」
カブラギさんは何も言わない。
ただ、黙ったままナックル型の聖刃を外す。
ちらっと見たけど、ボブさんと似たような聖刃であるが。
カブラギさんの場合は、割と何でも使いこなせる気がする。
彼だけであれば、一瞬で魔物たちも殲滅できただろうけど。
彼は僕たちに合わせて動いてくれていた……それは少し悲しい事でもある。
まだ、僕たちは弱い。
先生に追いつくどころか。
同じ仲間であるカブラギさんにも遠く及ばない。
確実に成長しているのに、僕は……ボブさんが手を叩く。
「はい。上出来上出来……じゃ、次は“解体”の授業をすっぞぉ」
そう言いながら、ボブさんは何処からともなく三つのアーミーナイフを取り出す。
二つを僕たちの前に突き刺し、もう一つを持って彼は死んだ魔物の前に立つ。
彼はよく見ているように言ってきて、僕たちは少し怯えたような目でボブさんを――
◇
「はぁい。お疲れさぁぁん。じゃ、さっさと飯の支度すんぞぉ」
「「「ひゅー! ひゅー! ひゅー! ひゅー!」」」
僕たちは何とか地獄から帰って来た。
汗で全身飛びしゃびしゃであり、虫の息だ。
唯一、カブラギさんだけが僕たちの事を心配そうに見つめていた。
ボブさんは今日の食材となる大量の魔物の肉を軽く担いでいた。
僕たちも集めたキノコや魚を持っているけど、その量は比べるまでもない。
森の中での、初めての魔物との戦闘では――全員で戦って体感で“三十分”は掛かっていたと思う。
危ない場面もあったけど、複数の魔物を倒す事が出来た。
勿論、無傷とはいかずに怪我をした仲間もいる。
僕もそうであり、この後に傷の手当てを受けないといけない。
けど、勝ちは勝ちで……問題はその後だ。
『よぉし、じゃ解体するからよぉく見とけよぉ』
ボブさんはいつの間にか持っていたアーミーナイフで魔物の解体を始めた。
とても見ていられない光景ではあったけど。
僕たちは先生の教えを守ってその光景を見ていた。
そうして、あっという間に解体が終わればボブさんはナイフを持つ僕たちにこう言った。
『じゃ、やってみろ』
混乱しながらも、誰がやるのかと周りを見た。
ボブさんは時間を掛ければ肉の味が落ちるぞと言ってきた。
が、その間にもボブさんは持ってきた小さな袋から取り出した粉末状の何かを肉に振りかけていた……恐らくは腐敗を遅らせる何かだろう。
僕たちは悩んだ結果。
先ずは一匹はエルナさんがし、もう一匹は僕がする事になった。
僕たちの手際はお世辞にもよくはなく。
一度見ただけでは完璧には出来なかった。
けど、その時にカブラギさんが何故か解体の方法を理解していて。
間違えそうになれば、丁寧に教えてくれた。
僕たちはお礼を言い、仲間たちも感心した様に彼女を褒めていた。
彼女は少し照れくさそうにしていたけど……でも、まだある。
次はキノコや野草の採取で。
ボブさんは適当に集めて来いと言ってきた。
言われるがままに、キノコや野草を集めてあの人に見せれば。
あの人は流れるようにダメなものといけるものを選別した。
一回では一人分にもならずに、結局体感で一時間以上も掛けて集めて。
汗だくになりながらも、今度は魚の調達に向かう為に川を探して……結局、五,六時間は掛かったかもしれない。
空はすっかり暗くなり。
何とかボブさんのお陰で帰りは戦闘にもならずに帰ってこれた。
息も絶え絶えに、肉は腐っていないのかと尋ねた。
すると、“腐敗止め”を掛けたから大丈夫だと言っていた……そんなものがあるのか。
地面に腰を下ろす僕たち。
ボブさんは「だらしねぇなぁ」とぼやきながら集めた食材を運んでいった。
見れば、料理をする為の場所も出来上がっている。
先生たちの宿もそうであり……ベッカー先生たちが歩いて来る。
先生は僕たちをぐるりと見渡し、小さくため息を吐いていた。
《……遅いとは思いましたが……まぁいいでしょう。一先ずは、ご苦労様です。少し休んでから、夕食の準備をしましょう。その後には――“温泉”にでも浸かりなさい》
「……おん、せん?」
「――ッ! マジで!? 温泉があるのか!?」
《えぇありますよ。私を誰だと思っているんですか……勿論、未成年である貴方たちを混浴にはしませんよ。男女別ですからね。くれぐれみ不埒な真似はしないように》
「「「……ふっ」」」
温泉らしきワードに興奮するヤン君。
そして、先生が釘を刺したのに意味ありげに笑う男子生徒たち。
僕は少し何かの不安を抱きながらも、ぐぅっと鳴るお腹を摩り。
想像以上に修道院の林間学校がハードであった事に――“やりがいを感じていた”。




