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【完結】祓魔師《エクソシスト》は休みたい  作者: うどん


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045:祓魔師は新たな伝説を築く

 化け物どもを――“消し飛ばす”。


「――ボルテッカァァァ!!!!!」


 技名もクソも無い、単純な魔力の放出で化け物どもは消し飛んだ。

 そのまま空中を光速で飛行し、向かってくる死を見つめた。


 その形態は変化し。

 三メートルほどの人型になっていた。

 あの巨大な姿は世界そのものを相手取る時の形態で。

 黒い瘴気を全身から発しながら、奴は真っ赤に光る四つの瞳を殺意で満たす。

 今のこいつはたった一人の敵を相手にする為の形態をとっていた。


 俺は笑みを深める。

 そうして、短剣を振りかぶり――ぶつかる。


 死は六本の腕を生やし、その全てで攻撃を行う。

 俺はそれらの攻撃を捌きながら、万を超える斬撃を放つ。

 魔力同士がぶつかり、白き光が奴の瘴気と喰いあう。

 空では黒と白が互いに殺し合いをして――地球が悲鳴を上げているように感じた。


 海は荒れ狂い、大地には亀裂が走り。

 空気は激しく振動し、放たれた瘴気と光が命を狂わせる。

 死に絶え、灰から蘇り――“矛盾”だ。


 生と死が存在し、互いが自らの力を主張する。

 死んだと思えば生き返り、生き返ったかと思えば死に――あぁ、そうだよなぁ。


 絶対に死なない存在なんていやしねぇ。

 絶対にずっと生き続けられる存在なんていねぇ。

 目の前には死を司る存在がいるってのに――“俺は生きている”。


 死ぬはずの俺が生きているんだ。

 戸惑い、恐怖し――奴の瞳に怒りと殺意が満ちる。


「――――ッ!!!!!!!」


 目の前の存在が咆哮を上げる。

 それだけで空間には罅が入り。

 時空に歪みが生じていた。

 俺はにやりと笑いながら、白い光を強くする。

 そうして、崩壊する世界を“治し”ながら――俺は空を翔けた。


 もっと、もっと、もっともっともっともっともっともっと――こんなもんじゃねぇだろォォ!!!!


 俺は笑う。

 声を大にして笑いながら更に自らの枷を――解く。


 体が炎に包まれる。

 全身が強い熱を発していて、白い光と混ざり白炎が噴き出した。


 死は距離を取ろうとする――が、逃がさない。

 

 俺は一瞬で距離を詰める。

 そうして、短剣を振るい奴へと攻撃を仕掛けた。

 死は俺の全ての攻撃を弾こうとするが――奴の瘴気が抉られる。


 千を超え、万を超え、更に、更に、更に――“終わりはない”。


「ハハハハハハハ!!!!」

「――――ッ!!!!!」


 無数の斬撃、無限に等しいそれが空に線を描いていく。

 細くしなやかな白い線が無限に発生し。

 それらが死へと向かい螺旋を描いていく。

 死は全ての攻撃をはじき返すことが出来なくなり。

 その手に大きな亀裂を走らせる。

 奴の表情が曇り、奴の瞳を通して――“恐怖を感じた”。


「――――ッ!!!!!」

「あぁぁぁ!!?」

 

 瞬間、奴は絶叫する。


 空間に亀裂が走り――砕け散る。


 そこから何かが飛び出した。

 それは瘴気を纏っている。

 鎧のようなものを着こみ、槍や剣を持っていた。

 

 感じる。途轍もない力であり――“強い”。


 ケーニヒはおろか、普段の俺であれば勝てない相手だ。

 そう認識した。

 それが数にしてざっと一万を超えている。


 時空の裂け目から飛び出したそれが俺に襲い掛かる。

 目にも留まらぬ速さ。光を超える速度で飛ぶそれら。

 遠慮なしの全力攻撃であり、斬撃や打撃によって体が痛みを発していた。

 耳元では肉を裂き、骨を砕く音だけしか聞こえない。

 命を終わらせようと襲い来る兵士たちであり。

 それはあの死を守らんとする行動だ。


 俺は一秒にも満たない時間で。

 即死級の攻撃を浴び続けた。

 視界が弾けて、俺の目の前は真っ黒な瘴気で染まる。


 ただジッと一点を見つめながら俺は考えた。


 地上は今、どうなっているのか。

 悪魔だけでなく、化け物どもが結界を破ったのか。

 ケーニヒたちは上手く戦えているのか。

 生徒たちは安全何だろうか。


 

 エゴンにヤンにアデリナにエルナに――“あぁ、いけねぇな”。


 俺は体を崩壊させながら――“笑う”。


 

 今のは俺が悪かった。

 最大の侮辱であり、最大の粗相をしてしまった。

 今俺は命を懸けて戦っている。

 相手は今までに無いほどの強敵で。

 俺が枷を外すほどの相手だった。

 そんな相手がいるというのに――別の事を考えちまった。


 

 

 悪かった。マナー違反だな――“もう、しねぇよ”。


 

 

「――――燃え盛れやァァァァ!!!!!!!!!!」

「「「――――」」」


 


 俺は白い炎を放出した。

 闇を払い、瘴気を打ち消し。

 襲い来る強者たちを一瞬にして無に帰し。

 俺は自らに聖刃を突き刺し――“取り込んだ”。



 死が見えた。

 遥か彼方、空を超えて宇宙で立っていた。

 奴は今までの僅かな時間によって巨大な瘴気の塊を生み出していた。


 まるで星であり、空が全て暗黒に染まっているように感じた。

 コメ粒ほども見えない奴は笑っている。

 そうして、白い炎を巻き上がらせる俺を見ながら――それは地上へと落とした。


 俺は笑う。

 感情が爆発し、せき止めることが出来ない。

 楽しくて、嬉しくて、最高に――ハイってやつだなァァ!!!!


 俺は魔力を高める。

 己の心臓に手を翳して、限界を超えて魔力を生成していった。


 ドンドンドンドンと心臓が激しく鼓動する。

 そうして、魔力が溢れて漏れ出していく。

 それを無理矢理に肉体に留める。

 膨張、圧縮、膨張、圧縮膨張圧縮膨張圧縮膨張圧縮膨張圧縮膨張圧縮膨張圧縮膨張圧縮膨張圧縮――“これくらいだな”。


 光が強い。

 目が潰れてしまうほどの光量を発していた。

 海は蒸気を発していて、結界の薄い大地が炎を上げている。

 俺は準備が完了し、天を覆う瘴気の星を見つめて――“翔けた”。


 加速、加速、加速加速加速加速加速加速加速加速加速加速加速加速――拳を握る。


 拳へとため込んだ魔力を集中させた。

 拳はまるで太陽の如き熱と光を発していた。

 それが世界を覆う闇を払い。

 瘴気の塊が怯えるように揺らいでいた。


 俺は笑みを深めた。

 白い歯を見せながら笑って――決着を告げる。




「楽しかったぜ――もっと強くなって出直せやァァァァ!!!!!!」」

「――――!!!」




 俺は拳を振るった。

 そうして、放たれた魔力が瘴気にぶつかり――吹き飛ばす。


 一瞬の強い閃光。

 世界がほんの一瞬だけ白き光に包まれた。

 そうして、瞬きほどの瞬間に――“闇が晴れた”。


 瘴気は跡形も存在しない。

 雲も無く、何も存在せず。

 少し明るさを帯びた夜空が広がっているだけだっだ。


 その中心で、体を崩壊させる存在を俺は静かに見つめた。

 

「――ッ――ッ――――…………」

「何言ってんのか、分かんねぇよ……あばよ。“王様”」


 死は辛うじて生きていたが。

 ハラハラと粒子となって消えていった。

 一瞬見えた奴は驚きを表すような顔をしていた。

 何かを喋っていたが聞き取れず、そのまま奴は消えていった。


 気が付けば、夜は終わりを告げていた。

 水平線の彼方から、陽が昇ってきている。

 俺は空の果てからそれを見つめながら笑う。



 

「あぁ、疲れた……二回戦、しろとは言わねぇよな。えぇ――“ジュダス”」

「――ハッ! やっぱり気づいてやがったか。流石は、俺の――“強敵(ダチ)”だぜ」



 俺の背後に立つ男……いや、悪魔だ。


 俺はゆっくりと振り返り奴を見た。

 すると、相変わらず男らしい顔立ちをしていやがった。

 筋骨隆々で、野生児丸出しであり。

 今回も何となしにこいつが絡んでいるとは思っていたが――“運がねぇな”。


 俺は警戒心を持っていない。

 戦う気力も残っていない。

 いや、戦えというのなら戦うが……モチベーションがねぇな。


 俺はどうするかと視線で聞く。

 すると、奴は笑みを浮かべながらため息を零す。


「今はやらねぇよ。戦いの余韻を邪魔したくねぇ。それにお前とやるんだったら――“全力で”、だろ?」

「……はぁ、面倒くせぇな……テメェは今すぐにでも殺してやりたいが……ま、それでいいさ。次、殺せりゃそれでいい」

「ははは、相変わらずの自信家だなぁ、おい……次に死ぬのは――“お前”だがな」


 奴はそれだけ言って姿を消す。

 完全に気配が消えていた。

 俺は静かに息を吐きながら、地上に視線を戻した……やっぱ、これ以上はダメだな。


 世界への影響がデカすぎる。

 これ以上の負荷は完全にアウトであり。

 如何にアフターケアをしてやっても完全には戻らねぇ。


 だからこそ、自分自身に枷をつけてはいるんだが……はぁ、たく。


 何が楽しくて縛りプレーなんざしなけりゃならねぇんだ。

 全力でやりゃ仕事も一瞬で済むってのによ。

 本当に世界ってのは――“脆くて仕方がねぇ”。


「……ま、いいさ……さてさて、仕事はこれで終わり。後は楽しい楽しい――バカンスの時間だ!」


 俺は手を叩く。

 そうして笑みを浮かべながら。

 これからのバカンスを楽しみだと思った。


 美味い料理に、最高のアトラクション。

 観光名所も周り、ニンドゥの酒を味わい……ふ、ふふふ。


「仕事終わりの一杯ってのが……最高なんだよなぁこれが!」


 俺はそう考えて、ぱちりと指を鳴らす。

 そうして、結界を解いてやってから地上へと降りていく。


 遺跡は何処であったか忘れたが。

 適当に街にでも降りたらいいだろうと考えた。

 一気に地上へと降りていき、街が見えれば速度を落として……あぁ?


 人々がいる。

 それも大勢であり、家から飛び出して空を見ていた……いや、俺か?


 俺は警戒心を持ちながらゆっくりと降りていく。

 すると、そいつらの――“歓声が聞こえた”。


 嫌な予感がどんどん噴き出していく。

 俺は真顔のまま、民衆の中に降り立ち――


「あぁぁ!! 我らがヒーロー! ヘルダー様だ!!」

「あぁ何という事だ。悪魔によって我々が貴方様にほんの一部でも疑いの心をもってしまったというのに――我々を御救い下さった!!」

「王も見ていたでしょう!! 貴方様の活躍を!! 貴方様の新たな――伝説を!!!」

「……?」


 俺はだらだらと汗を流す……なぁんか、既視感があるなぁ?


 俺はそこから逃げようとした。

 が、子供や老婆に抱きしめられて動けない。

 奴らは目に涙を浮かべながら俺に感謝の言葉を伝えて来た。

 遂には奴らの感謝が天元突破し、俺は奴らに持ち上げられて運ばれて行く……え?


「英雄様を讃えよう!! 偉大なるヘルダー様に最大級の感謝を!!」

「宴よ!! 英雄様への感謝を伝える――宴を開くのよ!!」

「主役は勿論、我らがヘルダー様だ!! 貴方様に最高の舞と歌を捧げましょう!!」


 宴を開くといった。

 それはつまり、ずっと俺がそこにいなければいけないということだ。

 それはつまり、俺が予定していた観光などは出来ないということで……は、はははぁ。


 俺は笑う。

 そうして、目から滝のように涙を流す。

 すると、それを下から見ていた街の奴らは勘違いをしやがった。

 我々の感謝に心を打たれたとか、我々の痛みに涙を流してとか……もう、いいよ。


 俺は抵抗しない。

 ただ流されるままで運ばれてやった。

 せめて、せめてだ……美味い酒と料理をくれたらそれでいいから。


 デカい仕事が終わり、面倒な奴にも会ってしまったが。

 一先ずは解決であり、鬼畜眼鏡も満足だろう。

 全てが終われば、奴の狙いも理解できてしまった。


 大規模な儀式。

 それに必要な魔力量を計れば、おのずとどれだけの命が贄として捧げられていたかは分かる。

 あの鬼畜眼鏡は独自の方法で儀式そのもに気づいていたんだろう。

 時間があまり無いからこそ、俺には情報を与えなかった。

 いや、情報を与えた事で奴らの動きが変わる事を恐れたんだ。

 だからこそ、敢えて悪魔たちの作戦通りに俺を動かした。

 その結果、悪魔たちは“国そのもの”を贄とせず、“俺という存在”を使って安全に儀式を終えた……本当に、やべぇな。


 どんなに頭が良くても、すぐにそんな結論を導き出せるものなのか。

 俺という存在がもしも、任務を失敗するとは思っていなかったのか……いや、無いな。


 アイツは絶対に不可能な事はさせない。

 百パーセントでは無いにしても、成功率が高いと踏んだんだろう。

 その結果、奴はニンドゥを救う事が出来たともいえる……あぁ、くそがぁぁ。


 俺は両手で顔を覆う。

 またしても、奴の良いように扱われた。

 その結果、最良の結果を得てしまった。

 またしても、俺は担ぎ上げられて自由を奪われたが……まぁ許してやるよ。


 仕事は仕事だ。

 受けた覚えが無くとも、手をつけたのは俺だ。

 それなら後から文句は言わねぇ。

 終わった事であり、これ以上の事件は起きないだろう……疲れた。


 俺は光が満ちていく空を見つめる。

 異空間から煙草を取り出して、一本出して口に咥える。

 静かに火をつけてやってから、俺は至福の一服を味わう。

 

「……」

 

 煙を空に吐く。

 民衆の声を聞き、背中に感じる手のぬくもりを味わいながら。

 ニンドゥでの長いようで短いひと時を振り返り――俺は小さく笑った。

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