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街へ

★は別視点という意味です。目線の人は変わります。

主人公だけは☆のままです。

「嬢ちゃん、俺達もサスエティに向かってるんだ。ついでだ、乗ってくかい?」

 少女は目線を地面に落とし、考えている。恐らく、部の悪い賭けだろう。

 彼女の小柄な体から発せられる力に押される。隠す気がないんだろう。

 化物の中で実力を隠すことが得策だとは思えない。

『………いや、いい。自分で行ける』

「………そうか。二日くらいか。道に気をつけろよ。近くまで行くと野党が出るかも知れねえ」

『………ん』

 一瞬こちらを見て小さく会釈をすると、道の先を見つめて僅かに身を屈め、次の瞬間。

 少女は風を纏って飛び出していた。

 みるみるうちに小さくなっていく影が丘の向こうに消えたのを見て、ようやく肩の力を抜いた。

「………ゲイザさん?あの子って………」

 まだ警戒が解ききれていないカリンが、恐る恐るといった感じで話しかけてくる。

「わかってる。あれは人間じゃねえ」

 ため息を一つ吐くと、空を見上げる。青く透き通った大空は何も語ってくれなかった。

「………ま、二度と会いたくはねえな」




 ☆

 親切な人だったな。見た目こんなので見るからに怪しいのにちゃんと教えてくれて。

「………………」

 反省点があるとするなら、初めて会った人だったから言葉が通じるのかとか、剣とか持ってて警戒してしまっていたのもあって、冷たい感じの話し方になってしまったことだろうか。

「………」

 後ろを振り返ってみても、坂の向こうでもうあの人たちが乗っていた馬車は見えない。

 なんとなく反射的に断ってしまったことに、後悔の念が押し寄せて来る。

「………やっぱり、ついてけば良かった………」

 私はこの世界について殆どなにも知らないから、それを埋めるためにも人とコミュニケーションをとって、情報を得ないといけなかったのに。

「にしても、二日か………馬車とは言え、結構遠いのかな?………ん?」

 今、向こうの山の方で、何かが光ったような………

「あそこが街、サスエティだっけ?なのかな………思ったより時間かからないかも。倍率上げよっと」

 今までのも十分速いが、をの速度を更に二倍くらいまで引き上げて少女は進む。

「………あ、もしかして街に入るのって身分証とか必要だったりする?」




 ★

「………博士」

「………なんだ?」

「リンドウの森の方角から高魔力体の反応が。近づいて来ています」

「………………距離は?」

「………およそ、50ロスかと」

 近くに引き寄せた魔力望遠鏡を覗く。言われた方向に向けると、遠くに酷く明るい点が見えた。

「………………動きは?」

「………街道沿いに、低空飛行を続けています」

「………………」

 無言で席を立ち、研究室の扉を開く。

「………………私はあれを起動する。動きを追っていろ」

「………!?あれを、ですか………?」

「事態は一刻を争う。下手をすれば国自体が存亡の危機だ」

「………………了解です」


 早歩きで階段を降り、地下へ。途中、兵士に会ったが見向きもしなかった。

 レンガ造りでところどころに灯りのある薄暗い地下道を脇目も振らずに歩く。

 複雑に折れ曲がった先の行き止まり。手入れがされていないのか、いくつかのレンガが不規則に飛び出たり、凹んだりしている。素早いが丁寧に右手を伸ばし、これといって特徴のない飛び出たレンガを押し込む。

 レンガが丁度嵌った時、一瞬緑の紋様が輝き、光の幕が体を通過する。

 そしてレンガが音もなく動き始め、人1人が通れるだけの隙間を作る。奥は、先ほどと同じように等間隔に灯りが置かれている。隙間を通り過ぎた途端に再び無音でレンガが壁に嵌っていく。

 作られた凹凸は、先程のとは違うものだった。

 そして、隙間が閉まり切った時奥へと続く通路は消え、目の前には石造の台座とそれに少し浮いて乗る緑の透き通った八面体の結晶体。その前に立って初めて、思い出したかのように言葉を発する。

「………………生きてる中でまさかこれを動かす日が来るなんてな」

 台座の、向いて正面にある斜めの石板に触れる。結晶体がゆっくりと回転し、空中にいつくかの文字が現れる。

「………範囲は、この街全域………強度は………【都市級】」

 文字が形を変え、結晶体に吸い込まれる。一際強い光を放つと地面に波紋が生じ、すぐに消えた。

 記録おつけていた助手は、城壁の上に一定間隔で緑色の八面体の結晶が少し浮いて並んだのを見た。

 薄暗くなってきた中で、そこだけが淡く輝いている。

 そして本体は結晶体の中の光が消え、澱んだようになった。もう透き通っていない。

「………………頼んだぞ」

 そう呟くと踵を返し、元来た道を戻っていった。



「戻った」

「あっ、丁度いいところに」

「………動きは?」

「これです。………今は、5分ほど前から動きを止めています」

「………そうか。引き続き頼んだ。俺は上と話をしてくる」

「了解です」

ロス

距離の単位。こちらでいうキロ的な存在。1キロが約0.9ロス。

一つ下のメートル的存在にラス、一つ上にトロスがある。メートルからなおすにはどれも0.9倍すればいい。

「ス」の部分が距離、長さの単位であることを表している。

なぜ90なのかと言うと、農業国家である国の主要な生産物の背丈がそのくらいだから。

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