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神話

読書回。台詞が少ないです。

 序文

 精霊と数々の英雄達による旧帝国メロゥから続く神話を、ここに新たに記す機会が与えられた事に感謝を。

 メロゥ神話は、旧帝国メロゥ(レイリオス歴前530〜後683)とその周辺地域において伝えられていた創世神話を一つのものとして前380前後に時の皇帝アスティリアスによって編纂されたものを原本としており、歴史の中で何度も改訂が施されながら、それが翻訳される事で各地に広まっていったとされている。

 その為メロゥ神話は帝国の文化だけでなく、周辺国家にも大きな影響を及ぼしている。この神話について語る時、様々な慣習や行事の存在はもはや切っても切り離す事はできない存在だ。

 そしてこの度、私達は我が国ではおよそ60年振りとなるメロゥ神話の改訂に踏み切る事となった。

 今回の改訂では一部の文言を時代に沿ったものに変更し、注釈を付け加えた。これは、この神話が人々の生活の極めて近い位置にあり触れる機会が多い為、理解しやすくあるべきだという考えがあってのことである。

 853 マソル・ロビンソン


 創世記

 第一章

 初め、この世界にはまだ何もなかった。果てしなく続く無だけがあった。神はそこに自らの力を分け与え、生み出した精霊を向かわせた。

「大地よ現れよ。遥かに広がり、天を象れ」

 初めに生み出されたのは、土の精霊だった。それは大地と天を創った。

「光よ現れよ。地を照らす昼となれ。闇よ、地を覆う夜となれ」

 次に生み出されたのは、光の精霊だった。それは光を創り、昼と夜を創った。

「水よ現れよ。一つに集まり、海となれ。天を写し出せ」

 次に生み出されたのは、水の精霊だった。それは水を創り、海と空を創った。

「命よ現れよ。海で生まれ、空でふえ、地を満たせ」

 最後に生み出されたのは命の精霊だった。それは様々な生き物を生み出し、地を満たした。

「我々を象り、人を作ろう。そして、世の全てを治めさせよう」

 土の精霊が形を作り、光の精霊は知恵を、水の精霊はその形に水を与えた。そして命の精霊が形に命を与え、人を生み出した。精霊達はもう一人の人を作り、初めの人を男、次の人を女とした。

「人よ、全ての緑と命を食物として与えよう。そのほかに望むものは、全て用意されるであろう」

 精霊達は初めの人と共に在った。そして彼らが道を違えないよう導いた。


「一章終わりっ…と。キリスト教っぽい感じなのかな、でも多神教の感じとかギリシャ神話っぽくもある………」

「………………というか、うん………まさか、光の精霊ってそんなに凄い存在だったとは………適当に名乗っちゃったけど、相当やばいなこれ………詳しく聞かれたら詰むから詳細考えないと………いや、そこは『私を誰だと思っている』とかで乗り切れる………?いやでも………」

 頭を抱えてブツブツと呟く。過去の軽率な発想と発言で自分の首がどんどん絞まっていくのが感じられる。タイムマシンがあるなら、今すぐ過去の自分を殴りに行きたい。そういう魔法ないかな………ないよね。

「一回、後ろまで読もう。どうにかする方法見つかるかも、だし」


 第二章

 暫くして、人は三人の息子と五人の娘を持った。始まりのから長く時が経っていたが、人は衰えを知る事はなかった。人は羊を飼い、畑を耕して暮らしており、収穫の一部を精霊に捧げていた。

 一番上の息子のカベルと三番目の娘のダリアの間には二人の息子がいて、それぞれクイルとケインといった。

 クイルは家畜を、ケインは畑を持っていた。ある年、二人はどちらがより素晴らしい捧げ物をできるか勝負をしていた。クイルはよく肥えた純白の子羊を、ケインは黄金に輝く麦の穂を二束持ってきた。カベルは言った。

「この素晴らしい麦を土の精霊に捧げよう。そしてこの子羊で宴をしよう」

 宴では普段は下座のケインが上座に座り、カベルとダリアはケインを褒め称えた。普段は口を開かぬ土の精霊が、捧げ物を非常に喜んだからである。クイルは言った。

「何故ケインだけが褒め称えられるのだ。私の子羊はこの宴程の価値しかないのか」

 ある日、クイルはケインを野原に呼び出して殺し、地に埋めた。そしてケインの代わりに畑を耕し、実の大きな素晴らしい麦を捧げた。土の精霊は、クイルの捧げた麦にケインの血が染み付いているのを感じ、言った。

「クイル、お前は家畜を持っていた筈だ。ならば、捧げるのは子羊ではないのか。しかし、この麦は畑からとれたものだ。畑を持っていたのはケインだろう。ケインはどうした」クイルは言った。

「知りません。森に行ったきりなので、私が畑も耕していたのです」土の精霊は憤って言った。

「何故偽るのか。私がそんな事を知らないとでも思っていたのか。お前は子孫まで永劫に畑を持つ事ができなくなり、お前とお前の子孫が踏み込んだ畑は実をつける事がなくなる」クイルは憤り、家畜を連れて家を出て他の家に向かった。土の精霊は言った。「人は増えていく。私達だけでは人を見続ける事ができない。各々の力を分けた精霊を創り出そう」そして土の精霊から火の精霊と雷の精霊、水の精霊から風の精霊、光の精霊から闇の精霊、命の精霊から死の精霊が生まれた。

マソル・サー・ロビンソン

レイリオス歴853年にメロゥ神話の改訂を主導し、発刊した研究者。

その活動が認められ、国王よりナイトの称号を授与された。

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