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緊急

「………よし。これで完成っと」

 完成したものをテーブルに置く。警戒していたものの、メイドさんはいなかった。

 完成したのは星型八面体。キーホルダーになるように、小さな穴を開けている。光量も、大分控えめに。引きで見るとすりガラスの照明みたいで綺麗。

 光量を削る方法だけど、どうやら光魔法で使う魔力を減らせば良かったらしい。材料が多すぎたということだ。

 削り過ぎると壊れちゃうらしいから塩梅には気をつけないと。

「他のもやってみたいな〜………でも私光の精霊だからな〜………」

 コンコン

「!」

「失礼します。………いらっしゃいましたか。ご夕食でございます」

「あ、うん。………あと、これ」

 星を指差す。

「………こちらは?」

 驚きと疑惑で声の調子が少しズレた。鋼のビジネススマイルが崩れる。

「作ったの。あげるよ」

「………これは………大変嬉しく思います」

 言葉に詰まっているようで、口を小さく開いては閉じている。想定外だったのだろう。小さく震える手でそれを丁寧に取り、目を見開いたまま手の中で光を放つ星を見つめている。

「………」

「………」

「………取り乱してしまい、失礼いたしました。すぐに用意いたします」


「………それでは、用がございましたらお呼び下さい」


 ★

 重い扉を開いた先、駆け込んだのは会議室のような部屋。レッドカーペットが敷かれ、巨大なシャンデリアが吊るされている。絢爛豪華な部屋の中心の不自然な程に長いテーブルで数人が言葉を交わしながら食事を摂っている。

 普通なら入るのが許されない空間に駆け込んで来た侍女のただならぬ様子に、それぞれ食事の手を止める。

「一体何事だ」

 正面の一番奥に座る老人、国王が眉を顰める。

「お前は、確か………成程、何があった?」

 国王の右手側に座る初老の恰幅の良い男性、右大臣が入って来た侍女が誰かを判別し、説明を求めた。

「何を渡されたのです」

 国王の左手側に座る老女、王妃が厳しい顔をして侍女の握り締めた右手を見詰めている。

「我々の話を遮る程のことなんだろうな」

 王妃の隣に座る男性、左大臣が嫌そうな顔で彼女を見据える。さっきまで彼にとって重大な件を話していたのだ。

「精霊様に関する事なら、博士も呼ぶ必要がありますかな?」

 横目に王妃を窺いながら薄く笑みを浮かべるがっしりとした体の男性、将軍が丁寧に問いかける。一挙一投足から余裕が透けて見える様だった。

「せ、精霊様が、これを………」

 普段絶対に一対一で会いたくない相手と同時に五人も会う事になってしまった事と、彼等の纏う圧に顔を青ざめ、言葉に詰まりながらも握っていた手を開いて「それ」をテーブルの上に置いた。

「………」

 王妃が目線を走らせる。すぐに横から召使がやってきて、それを王妃の元まで丁寧に運んで行った。

「………これは………」

 王妃は暫く手の中で形を確かめる様に触りつつ眺めていたが、それをテーブルに置くと目を手で覆って言った。

「将軍、博士を呼んでいただいても?」

 その言葉に将軍は頷くと、「おい」と声をかけた。すぐさま兵士が一人近づいて来たので「急ぎだ」とだけ言って行かせた。王妃は顔を上げて侍女を見ると、諭す様に言った。

「下がってよろしい。明日の朝にでも結論を伝えますから。今日の業務をこなして来なさい」

「は、はい………」

 恐る恐るという様子で礼をすると、逃げる様に部屋を出て行った。扉が閉まった後、暫く誰も口を開かなかった。

「………しかし」

 左大臣が重い口を開いた。

「それ程のことか?私には魔力が込められただけの物に見えるが。陛下は精霊様の事となると大きく見積もり過ぎているのでは」

「………これは、もっと異質な物。………全てが魔力で構築された物だと、私は見ています。そして、それは恐らく間違いではない」

 将軍が場を見回しながら、取り持つように言った。

「人ならざるモノを人の範疇で語る程愚かな事は無いと思いますがね。まあ、今は博士を待つしかできませんね」

「はぁ………博士の研究室をもっと近くには出来んかったのか?この間にも動きがあったらどうするつもりだ」

 右大臣がカトラリーを持ち直しつつため息混じりに言った。

()()も、通路はここにも通っていた筈だが」

「………しかし………」

 左大臣が苦言を呈する。

()()も研究室も、防衛の要となりますからね。他に見晴らしの良い所となると……別館横になりますかね?精霊様の魔力で機械が壊れそうですが」

 将軍が口を挟んだ。軍事に関する大半を管理する将軍は、自分の職務に口を出されるのを非常に嫌っている。

 ギイィ バタン

「はぁ、はぁ………お呼びとの事ですが………っ!………それは………?」

 後ろの小さな扉が開き、博士と呼ばれた若干草臥れた白衣の男が息を荒げながら入って来た。

 この様子からして、兵士が来たのに慌てて研究室から走って来たのだろう。 

【コンプレッション】

物を圧縮する魔法。基本対象は魔力。手元発動系の魔法を使用中の場合はそれを圧縮するが、それがなくても術者の魔力を引っ張り出して圧縮する。何事も盛ればいいってもんじゃない。

圧縮には段階があり、魔法(魔力)→液体→固体となる。水魔法も圧縮すれば固体になる。氷ではない。

【モディフィケイション】

自分の魔力が込められた物に対して色々出来る。形を変えたり魔力量や比率を弄ったり。魔法にも可。

複数人で同じ物に使った場合込めた魔力の大きさで優先順位が決まる。干渉系の魔法の基礎。

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