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市壁にて

 トラックがドレージの市壁目前に到着すると、キャビンはパッドをトラックの上に登らせて周囲を警戒するよう指示し、市壁に向かって声をかけた。


「門番います? 聞こえてますか?」

「ああ、いるぞ! お前たちは誰だ! サハギンの中を突破するなんて、ギルドが用意した凄腕冒険者か?」

 市壁の上から、驚いた様子の門番の男が声をかけた。


「いいえ、バンプール基地から来た王国軍の輸送隊です。少量ですが支援物資を運んで来ましたので中に入れていただけませんか?」

 キャビンが腕についている隊章をかざすと、門番は双眼鏡でそれを確認してうなずいた。


「あー輸送隊の方。受け入れたいのだが、周囲のサハギンが来たらまずい。ドレージの海側を警戒しているため門を開閉する際に兵を出せない。その荷台に人手はあるか?」

「少しお待ち下さい」

 キャビンはそう言ってからパッドに尋ねた。

「パッド、何かいいアイデアはある?」

「えっとぉ、今の状況を見ると、阻塞の魔法と隊長の小規模攻撃で牽制が出来れば十分かなぁと。サハギンは水がないとジャンプできなそうですし、歩くのも遅いのでぇ。阻塞魔法は準備ずみです」

「わかったわ」

 キャビンはうなずいて、門番に向き直った。

「開けてもらえばサハギンの侵入はこっちで防ぎます」

「わかった! 門番長に話を通してくるから、準備して待っていてくれ」

「わかりました」

「パッド交代。私が上に乗るから運転お願い」

 キャビンは荷台の囲いの上に飛び乗った。

「オッケーよ」

 上に登って見回すと、橋の所までは水辺がないためかサハギンは近くを歩いてはいないようだ。

 しばらく警戒しながら待っていると、門番が戻ってきた。

「おーい。待たせた。今から開けるが時間がかかる。その間にサハギンが入らないように頼んだぞ」

 門番は、訝し気な門番長を連れて来て早速準備してくれた。


「もちろん」

 キャビンが返答すると、閂が外れ大きな音を立てながら鉄門が開いていく。

「ゆっくりですねぇ」

「その分頑丈よ」

 ぎぃぃと硬く、耳をつんざくような音を出して少しずつ門が上がっていく。


 門が動く音に反応して、サハギンの叫び声が聞こえてきた。


「来るわね。川から上ってきたみたい。阻塞魔法は出せる?」

「わかりましたぁ、発動します」

 パッドが呪符に魔力を込め阻塞魔法が発動する。

 継ぎ足しの城壁のようにトラックの後部半円に身長くらいの紫色の光の壁が出現した。

 サハギンは、陸地だとジャンプ力が大してないのでこれでも通れないらしい。

 高すぎると視界が妨げられるのでこれくらいがちょうどいい。


「見た目ほど耐久性はないんですぅ。魔力依存の防御で、最初は石壁並みですが、弱ればポテチですぅ」

「粉々ってわけね。乗り越えないよう吹っ飛ばすわ」

「うわ、来てます」

「わかってる。けど、まだちょっと遠い」

 サハギン数体の群れが唸り声をあげながらトラックに駆け寄ってくる。

 キャビンは右手を握って魔力を集中する。

「炎弾!」

 狙いを定めながらキャビンが手を開くと、指先から小さな火の塊が複数打ち出された。

「ぎゃうっ」

 一匹に命中し、そのまま倒れる。他のサハギンはそいつを見て、足を止める。

「いい練習台ね」

 キャビンは更に集中して、手を銃の形にして狙いを定めながら、止まったサハギンに当てていく。


「まだまだ来ますぅ」

 見えてなくてもサハギンの叫び声でパッドは脅えている。


「ねぇ、魔力ちょっとだけ込めるのはムズムズするんだけど!ぶっ放しちゃ駄目なんだっけ?」

「だ、駄目ですぅ。道が壊れると後続が運べなくなります。牽制で十分です。隊長!門が開いたので動きます。トラックが門内入ったら閉まるまで、近づかせないでください」

 パッドがそういいながらトラックを進めた。

「入りましたぁ。再度、阻塞魔法を出します!」

 さっきの壁がサハギンに叩かれて、光の粉になって消えていった。

 パッドはそれを見て、城門のすぐのところにまっすぐの阻塞魔法を発動した。

 サハギンは更に近づいてきたが、キャビンは尚もトラックの上から撃ち続ける。


「もうヤダ、限界」

 キャビンは指先にむず痒さを感じて必死に耐える。普段は掌までしか魔力が通らないので、指先の魔力線が過負荷になっている。

 キャビンの悲鳴を聞いて、パッドが運転席からトラックの屋根によじ登った。

「そしたら隊長。阻塞魔法に魔力込めてください。強度を上げれば割られません」

「どのくらい込めていいわけ?」

 パッドは難しい顔で考える

「大砲打ち出すくらいですかねぇ」

「それでもチョロチョロ打ってるよりはいいわよ」

「かなぁり手加減してくださいね。呪符渡します」

 キャビンは呪符を受け取ると、加減しながら魔力を込めた。


 あーやっぱり勢いあるのっていいなぁなど考えながら阻塞が伸びていくのを眺めていたら、肩を叩かれて、魔力を止める。

「隊長、もう十分ですぅ。門も閉じましたので、ドレージの基地に行きましょう」


 門の内側から少し進んで見上げると、首が上がらないくらい阻塞魔法の天辺が、そびえ立っていて塔のようになっていた。

「これ通れなくない?」

 吹っ飛ばすかと考えたキャビンだったが、パッドは慌てて告げた。

「か、解除すれば通れますぅ。ほい」

 パッドが、解呪の符に魔力を通すと紫の光が阻塞魔法へ散乱していき全体を覆い尽くすとじんわりと消えていった。

「これで大丈夫」

「なら、さっさと基地に行きましょう」

 二人はトラックに乗り込み、馬に乗った兵士に先導されて進み始めた。


「「「お疲れ様でした!!!」」」

 何!と驚いてキャビンが見ると、後ろの方で、門番やら兵士が道の端に整列していた。

 キャビンは運転しなが片手を思いっきり振って、笑顔で応えた。



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