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ドラゴンファイアーワークス

 制御室に向かいながらパラケルススが説明してくれる。

「スタブ殿は館の魔道具の管理をしてくださっているのですよ」

「ただの魔力補充要員じゃないんか?」

 エイテルが尋ねる。


「補充は冒険者の方に依頼しています。スタブ殿は魔力は少ないそうですが、魔道具に詳しく、展示の配置等は彼がやっています。彼は魔導学院の卒業生で、祖父の研究室の学生さんでした。道化師は趣味ですね」

 館長は嬉しそうに丁寧に答える。

「趣味にしては様になっているなぁ」

「えぇ、毎日練習してますし、彼のショー目当てで何回も来るお客さんがいるくらいですから」

「確かにダンスは華があったわね」

「ダンスを褒めてあげると喜びますよ。さて、着きましたよ」


 館長に案内されて、埃っぽい部屋に到着した。

「これが、魔力線で、こっちは吊りひもと繋がっていて……」

 館長が色々とエイテルに説明しているをキャビンは横で聞いていた。

「キャビンさんはこちらの線を握って魔力を放出してください。ドラゴンに魔力が伝わります。参考に、そちらにメモリがあります」

「わかったわ!もういい?」

 早速魔力を補充しようとして線を掴むとエイテルに手を掴まれて止められた。

「ちょい待ち、準備せな」

「どういうこと?」

 エイテルがこそこそとキャビンに伝える。


「まだ、頭とか一部しか開放してへん。キャビン隊長はどんくらい魔力入れるつもりなん?」

「さっき言ってたメモリ上限まで!」

「はぁ、そうやと思ったわ。したら固定紐全部外さんと、千切れ危ないで」

「そうなの?」

「ドラゴンの仕組み調べたんやけど、屋敷の一階を一周するようにレールがあって、それを回るようになっとる。それと合わせて光だとか音だとかの魔法も出るなー。どういう音だとかまではわからん。わからんけど、かなりの数の魔法陣がかかれてるから、うちでも相当魔力持ってかれそうや」

「それなら迫力ありそうね」

「せやけど、館長さんはちょっと頭動く程度と思てるからなぁ」

「じゃあ、エイテルが入れる振りして私がやればいいのかしら」

「どうしてもやりたいんやな、てか明日の運転は平気か?」

「ほとんど減ってないから平気、寝たら全快すると思うわ」

「ほなら、いいかぁ……ったく膨大やなぁ」

 エイテルは、はぁとため息をついてからパラケルススに相談する。


「館長さん。キャビンちゃんが魔力補充するのちょっと手伝ってもいいかなぁ?制御にちょっと不安があるみたいで」

「ええ、構いませんよ。エイテル殿がやってくださるなら固定紐も全部取っておきましょうか」

「すまんなぁ。片付けも手伝うから……」

「魔力補充していただくだけで充分ですから」

 恐縮するパラケルススと一緒に固定紐を全部外す。


「さ、キャビンちゃん。やろか」

「準備オッケーってわけね。そういえば魔力補充した後はどこから見ればいいの?」

「部屋を出れば少しだけ見えますが、1階に降りていただいた方が迫力はあります」

「じゃあ、補充したらみんなで降りて見に行こか」


「ドキドキしてきたわ。それじゃ、始めるわね」

 キャビンが紐を握って、それに合わせてエイテルも手を添える。

「ホンマに加減しぃや」

「わかってるわよ……っと」

 キャビンはメモリを見ながら少しずつ魔力を注いでいく。


 ドラゴンの咆哮が聞こえてきて、次いで観客の驚いた声が聞こえてくる。

「思ったよりでかい声やな」

「見たいみたいみたいー!」

「ちゃんと制御せな。あ」

 エイテルが気づいてメモリを見ると上限を超えて輝きだした。


 がしゃんと大きな音がした後、衝撃波と言える程の咆哮が響き渡った。

 空気がビリビリして観客の悲鳴が聞こえてきた。

「だぁほ!!だから言うたやん」

「な、なにが起きたんですか」


「見に行きましょ!」

 キャビンは我先にと一階に向かう。エイテルは動揺した館長を引っ張ってキャビンを追いかけた。


 一階の大広間に行くと、レールから外れ空中に浮いたドラゴンが咆哮を上げながら空中で光や音を上げながらうねっていた。

 しばらくした後、竜はレールの進路に沿ってふわふわと屋敷内を回り始めた。

 時たま咆哮を上げて見上げる客を威嚇している。


「すごい、すごい!」

 キャビンが跳ねながらドラゴンを眺めているとスタブが駆け寄ってきた。

「あれはお嬢さんが魔力補充したのですか!こんなに動くのをみることになるとは」

「あー、あれはエイテルよ。彼女Sランク冒険者なの流石よね」

 とぼけるようにスタブに説明すると得心したようにうなづく。

「成程、流石Sランク冒険者。すさまじい魔力量ですね」


 追いついたエイテルは唇を噛みしめるように答えた。

「すまんなぁ。ついやりすぎてもたわ。ところで、あれは安全なんか?」


「安全です。あれは炎国の祭りで使う竜を模したもので、攻撃性はありません。音や光は派手ですが障害物を避ける機構も付いてますし、教授が室内から出さない魔法陣を組んでいたのも存じております。本来は屋外で使うものですので、屋内では少々刺激が強いかもしれませんね。私は驚いたお客様の介抱に行きますね」

 スタブが館員に声をかけながら観客に安全ですよーと声かけをして落ち着かせていたり、気絶しているものを端に寝かせたりしていた。


「少々ねぇ……」

 ドラゴンは確かに障害物やらを避けてはいるが、耳を劈くような大咆哮やら、地面を焦がす弾ける火魔法の花火やらを眺める。

 これは安全の範囲なんかなぁと耳を塞ぎながらエイテルはドラゴンの回遊を眺めていた。


「あれが…魔法で動いてる!?魔物じゃないの!意志を持ってるみたいだ…!」

「まるで踊ってるみたい…ドラゴンなのに、こんなに優雅だなんて」

「これが魔法の世界の芸術か…心が震える…!」


 ほとんどの観客がパニックになっているなか、キャビンははしゃいでドラゴンを追っかけて行った。クインテと朱雀は呆れながら、シシオンは爆笑しながらドラゴンが回っているのを眺めていた。


 さて、行くかと意を決してエイテルはスタブに倣って観客の介抱に向かった。



 パラケルススはぶつぶつと言いながら放心していた。

「おじい様、こんなに凄いものが……他のものも魔力さえあれば本来は……」


 数十分してドラゴンが静かに元の位置に戻ると、エイテルはうまく紐を固定して元の状態に戻した。

 外れたレールとがれきまでは戻せずそのままだった。


 後日、ドラゴンの咆哮と光が街中にも響き渡り、パラケルススは各地へ謝罪行脚することになった。

 合わせて、魔導博物館の名が広まり観光名所として更に名を上げるのだった。

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