魔導博物館
「あなたのお爺さまがパラケルススさんなの?」
せっかくだから色々聞いてみようと決める。
「さようでございます。私はこの魔導博物館の館長をしております。パラケルスス3世と申します」
「えと、キャビンと申します」
エイテルが前に出て頭を下げる。
「パラケルスス教授に、魔法学院でお世話になりました。教え子のエイテルと申します」
「祖父の教え子の方でいらっしゃいましたか。ようこそお越しくださいました。こちらは祖父が魔法学院を退任してからも作り続けた物も展示してあります。是非見てやって下さい」
朱雀が小声でパラケルスス3世に尋ねた。
「館長殿、青銅の龍はワイヤーで繋がれているように見える。揺れもワイヤーの動力。魔法は使われていないように見えるが」
館長は恥ずかしそうに答える。
「実は3世と名乗っていますが、私は魔力が殆どありません。そもそも、博物館の作品は多いので常に供給するのでは魔力が足りません。祖父でも全てを一時に使う事はありませんでしたし、今は代替で電気を使ってそれっぽく動かしてるだけです。それでも作品自体に魅力があるので多くの方が何度もお越しくださいます」
「魔力供給はなさらないのですか?」
エイテルが少し寂しげに聞いた。
「魔法使いを雇って、時間になったら目玉展示に供給したりしてます。そうですね。これから中庭で魔道具のショーが始まりますので是非見ていってください」
館長はそう言ってお辞儀をするとほかのお客さんの所へ挨拶に行ってしまった。
「ショーだって!丁度いいし見に行きましょ!」
「行くから、慌てんといて」
キャビンはエイテルを引っ張って中庭に向かった。
中庭には大勢の人がショーの始まりを待っていた。
中央に進んでいくと舞台があって、道化師のような恰好をした男が杖を持って踊っていた。
部隊の中央には何体かの人型の人形と、カラフルな道具が並んでいた。
道化師のダンスはショーの前座のようだがそこそこ盛り上がっていて、ちびっこがはしゃいでいて楽しくなってくる。
拍手が鳴ると道化師はお辞儀をして、舞台から降りて行った。
「皆様お待たせいたしました。これより、パラケルススの魔道具ショーが始まります!」
パリッとしたタキシードを着た司会の男が開始を告げると、ファンファーレが鳴った。
「さぁ、ご覧あれ!」
道化師が杖を掲げるとキラキラと光が放たれた。
カタカタと人形が動き出して、たくさんの人形が整列してお辞儀をした。
「まずは人形のダンスです。おっと中に人は入ってないですよ」
真ん中の鎧甲冑が頭をとって空洞であることを客に見せると観客は歓声を上げる。
「空だ!」「不思議~」
甲冑は頭を戻すとまたお辞儀をして列に並んだ。
ゆっくりしたテンポの音楽で人形たちは踊り始める。
キャビンはこれを見て、こそこそとエイテルに話しかける。
「あれ? ほとんど魔力の反応ないと思うんだけど」
「せやなぁー、挨拶した一体以外は中に人でも入ってるんちゃう? あの道化師も大した魔力ないし、あれ動かすんで精いっぱいやろな」
「ふーん。そういうもんかしら」
普段から色々と実験をしているキャビンから見ると素朴に感じる。
いつもは魔道具をみない人を眺めると感激しているようなので、珍しいらしい。
人形劇が終わると観客は解散していった。
「せっかく色々あるのに動かないなんてつまんないわね」
「せやなー。まぁ、どう動くかの説明とかはあったしこんなもんちゃう?」
キャビンたちはこれから展示を見るのもあって、最後に出ていけばいいかと列が掃けるのを雑談しながら待っていた。
「やぁやぁ皆さん、お楽しみいただけましたかな?」
道化師が寄ってきてキャビンに話したかけた。
「えぇ…面白かったわ」
「またまた御冗談を……舞台から観客の皆様のお顔を見ていて御不満そうな顔は一目でわかりますよ。差し支えなければご意見いただけますかお嬢さん。ダンスのテンポですか?はたまた振り付けでしょうか?」
「魔導美術館なのにあんまり魔法使ってなかったところかしら」
「ほぅ……?」
道化師は訝しげにキャビンを見つめる。
「中に人入ってたやろ。それにゆっくり動いてたんは早く操作するのが難しいんからちゃうか?」
エイテルが指摘すると、道化師は露骨に驚く。
「まさか、見抜かれてしまうとは……お見受けするに冒険者の皆さまですかな。それにそちらのお二人は魔法使いですね?普段から魔物を相手に高位魔法を使っていらっしゃる。成程確かに。それでは退屈だったのも道理かもしれません」
道化師はエイテルと朱雀の方を向いてにやりと笑う。
「まぁそんな所や」
「……」
「でしたら、せっかくいらしたんです。少し動かしてみますか?」
「ええんか?」
「大丈夫です。不定期に展示の中に入って魔力補充することもあるので。今でしたら見学の方があちらにお集まりですので行きましょうか」
「俺も」
「拙者も魔力補充は出来ないゆえ見学させていただく」
シシオン、朱雀は見学路に向かっていった。
「お嬢さんは近くで見学されますか?」
道化師はキャビンに尋ねた。
「私も少し魔法が使えるから魔力補充やりたい!」
道化師はわざとらしく笑いながらお辞儀をする。
「これは頼もしいお嬢さんだ。是非、お願いします」
エイテルがそれを聞いて慌てる。
「ちょっ、大丈夫なんか?魔道具ってのは魔力制御ちゃんとやらな壊れたり爆発したりするんやで」
「平気よ!」
「おや、お嬢さんは魔力が多いのですかな?」
「そこそこあるから、大きいのにやりたい」
キャビンがそう言うと道化師は考えるような仕草をする。
「折角いらした記念です。館長に聞いてからですが、入り口のドラゴンに魔力補充してみますか? 首が動いたり、鳴いたりしますよ」
どうでしょう?と手を広げながら不敵に笑う道化師に乗せられてキャビンは答える。
「いいの!?本物顔負けの迫力だったから動いてるの見たかったのよ」
キャビンは目を輝かせて早く早くとせがむ。
パラケルスス3世を見つけてお願いしてみる。
「ほぉ、それは楽しみですね。私も祖父が動かして以来、調整で一部ずつ動かしているのを見たことがある程度です。エイテル殿が魔力補充してくださるのなら楽しみです」
「あーうちちゃう。こっちのキャビンちゃんがやってみたいんやて」
「誰がキャビンちゃんよ」
こそっとエイテルをたたくキャビン
「大っぴらに正体話さないほうがええやろ。キャビンちゃん」
「そちらは……?」
「キャビンと申します。館長さんよろしくお願いします!」
「キャビンさん……?」
「うちが見てるから、ちょっとやらせてあげてもええかな?」
館長は少し悩んだ後答えた。
「いいですよ。どのみち、動かすには大量に魔力が必要ですので、危険な事にはならないでしょうし、魔力欠乏しないように見守ってあげてください。せっかくですからエイテル殿も魔力補充していただけたら助かります」
「キャビンちゃんがやってみてから考えるわ」
「わかりました」
「それじゃ、早く行きましょう。どっから補充すればいいの?」
「2階にドラゴンを吊っている紐の制御室がありますのでそちらからお願いします。私が案内しましょう。スタブ殿はどうされますか?」
「折角ですので、ドラゴンの見学をさせていただきたい。お連れの方を呼んで下に参ります」
「わかりました。では皆さんが来たら始めていただきましょうか」
「どんな風に動くのかしら。すっごく楽しみ!」




