資材搬入完了
キャビンはプルブルで、資材をトラックの上空にまとめて固定してロコロ湖まで運ぶ。
途中の街道で休憩していたエイテルに、帰りに寄るからと書類を渡し、ロコロ湖へ向かった。
「それじゃあ、マイスター、レイよろしくね」
キャビンは二人と数人の職人見習い、資材をロコロ湖の畔に置くと、サクッと帰路に向かおうとする。
レイは慌てる。
「よろしくったって、まさか保管場所から作らされるとは思わなかったぞ」
マイスターは、任せろぃと腕まくりをする。
「俺は建てるのは一流だが、美術品の保管てのはあんたの方が詳しいんだろ?内装の変更はあんたがいなけりゃできんよ」
マイスターは高齢の男性で、白髪もなくなりかけてるがその額のシワより多くの建物を建てて来た。
そんなマイスターに褒められてまんざらでもないレイ。
「別に、建築家じゃあないんだがな」
「そんな事言っておめぇさん。湿度がどうとか明かりがどうとか図面にケチつけてたじゃないか」
「当たり前だ!わざわざカビるようなところに置こうとするな、ただでさえ湖のせいで湿度が気になるってのに……」
「なんでぇ、やっぱり色々知ってんじゃねぇか。よろしく頼むぜ!」
「仕方ない……お手柔らかに頼むよ」
「話はまとまったわね、じゃあこっちは任せるから、何かあったら王都のデバンに手紙送って」
キャビンはそう言ってトラックを出した。
「さてと、まずは俺達の寝泊まりする場所からつくるかぁ、気張れよレイ!」
「体力不足なんで、労ってください」
レイの情けない声にマイスターが豪快に笑う。
「うだうだ言ってっと寝るとこも出来ねぇ! 資材はあるんだ。手ぇ動かすぞ!」
ロコロ湖から下った街道で、エイテルは書類を何度も見返していた。
「なんなん? 急に王命書渡されて、炎国へ行けって、荷造りもなんも出来てへんわ……辛い料理は楽しみやけど」
トラックの走行音が戻って来て、エイテルの前で止まる。
「お待たせ」
「お待たせ……やない!とりあえず乗ったるけど、道中説明しぃや!ウチここの魔物退治任されとったんやで」
「それは代わりを手配するってニームー大臣が言ってたから大丈夫よ」
「ニームー大臣? 誰や?大臣だから偉いんか?」
「国内のギルドとか管理してる人」
「おまっ、それめっちゃ偉い人やんか!冒険者ギルドのトップがペコペコするレベルの!」
「いつもお菓子食べてる優しいおじいさんよ。そのせいでお腹ポンポンだけど」
「……優しいおじいさん」
エイテルは絶句するも、気を取り直して今後を考える。
「せや、これからの予定ちゃんと教えてぇや。長旅の荷物用意しとらんし、このままじゃ行かれへん」
「今日はとりあえず荷造りね。今、バンニングの冒険者組が食料とか用意してるから自分の荷物だけ用意してくれればいいわ。炎国でも2箇所、都市によるからそっちで買っても良い」
「ほなら着替えと耐性ローブ何着か持ってくか、山と砂漠越えがきっついかんなぁ?この馬なし馬車で行くん?」
「トラックね。でも、炎国へ行ったことあるからよく知ってるわね。それで選んだん……ばれたらしいし」
「せやなぁ、炎国は色々珍しい味が多くてなぁ。特に辛いのは何種類もあって飽きんかったなぁ……せや、ウチ炎国へ行ってなにするん?」
「何もしないわよ?着いたら色々案内してね」
「どういうことやねん? 王命書は、【キャビン隊長に同行し炎国へ向かえ】としか書いてあらへん」
「まぁ、書けないわよねぇ。ここなら誰も聞いてないから言っちゃうけど、エイテルの仕事は護衛よ、一つはトラックと私たちの護衛、Sランク冒険者達も乗ってるけど、彼らは炎国で戦闘があるから、温存ね」
「一つって事は他にもあるん?」
「道案内。今回のメンバーで最後に炎国から帰ってきたのはエイテルだから、陸路の道とか町並みとか一番最新情報を知ってるってわけ。一応行商人からの情報はニームー大臣から資料を渡されてるけどやっぱり実体験が大事だから」
「まぁそうか。いうてもウチが炎国からこっち戻って来たん3年も前やねんけどな……てかそんなんなら書けるやろ」
エイテルが突っ込むと、キャビンは諦めたように笑った。
「あー。忘れてくれないかなぁと思ったけど、実はバンニングチーム以外にもSランク冒険者がいるのよ。炎国朱雀大使ね」
「すざく、朱雀……てまさか、あの炎国の守護聖朱雀かいな。何でウチの国におったん?」
「朱雀は、武者修行でウチの国のSランクダンジョン回り終わって、帰ろうとしたら、暫く大使やっててって言われたんだって、ギームー大臣は有名人で地固めに来たって言ってたわね。それで落ち着いたから、普通の大使と交換で帰るの。だから、エイテルは大使の護衛ってわけ」
「あの朱雀やぞ、護衛なんかいらん。Sランクゆうてもピンキリやぞ」
「あなただってソロでSランクダンジョンクリアしたんでしょ?普通はチームって聞いたわよ」
「そら、魔法使いなら攻守行けるからなぁ。回復も出来るし。けど、朱雀は刀一本で溶岩の化身を切り倒したんやぞ。ほんまどないなっとんねん」
「すごいのねぇ」
「だから護衛なんていらんて」
エイテルが必死に言うがキャビンは首を横に振る。
「名目的でも大使だから、どうせ炎国へ向かうなら形だけでも出したいんだってギームー大臣が」
「やけにギームー大臣の方持つなぁ、珍しいちゃうか」
「だって、トラックの国外渡航の許可権を持ってるのよ。国外に技術流出させてはならないとかなんとかで、ずっと外国行けなかったの」
キャビンが憤慨するとやっとエイテルは腑に落ちたようだった。
「そないな事ならついてったるけど、貸し一つや!忘れんとき!」
エイテルはキャビンに向けてビシッとグーを出すも、キャビンは運転中なので、ちらりと流し見しただけだった。
「はいはいわかったわよ。とりあえず門の前まで送ってくから、荷物用意して明日の日の出にまた門にいてね。絶対だからね」
「そんな怖い声で圧かけんでええやろ、王命書だけでもアレやのに余計にビビらせんといて」
王都の門が近づいてくる。
トラックのエンジン音で通行人が全員こちらを見てくるようで気恥ずかしくなってきた。
「ちゃんとくるから。もう降ろして……」
エイテルはか細くそう言って、トラックがとまるとそそくさと正門をくぐり、脇道へと駆けていった。




