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もう待てないから

 レイはグロッタ伯爵に輸送隊舎での顛末を話た。


「ふむ、流石だな。あの娘を説得して時間が稼げるとは思わなかった」

 グロッタ伯は感心して、レイを褒める。


「いや、中々理解があるお嬢さんでしたよ。ただ、やたら急かすのには何やら事情があるようですぜ」

「特に大きな任務は入っていないはずだが……?個人的な用事か?」

「さぁ?そこまでは話さなかったんで、存じませんなぁ。ただ、倉庫建設の資材やら、輸送は一部の隊が手伝うってんで、完全に任せて待つってわけでもなさそうでしたな」

「まぁ、今回は功労者のキャビン隊の名前が使えれば構わない。それで、資材はどのくらいで運び終わると言っていたのだ?」

 グロッタ伯爵は、まだまだ時間が稼げて良かったと内心思っていた。

(時間が余れば、式典に私の横に座らさてパレードの引き立て役に出来る!まさか、こんな小娘が倒したとは民衆は想像出来まい。所詮お飾りとの噂も流せば自然神狼団への評判も高まる……)

「あー。伯爵聞いてますか?」

「すまん、寝不足でな。それで、いつだと言うんだ」

 レイが答えようとすると、キャビンがドアをバンと思いっきり押し退けてやってきた。


「あ!いたレイ。行くわよ」

「隊長さんよ。まだ報告も終わってないんだが」

「だって、もう資材届いたし、今日中に資材運ぶんだから!早くしないと夜になっても帰って来れなくなるわよ。早く早く」

「わかった、わかったよ」

 レイはキャビンに連れられて部屋を出ていこうとする。

「な、なんだねキャビン隊長!いきなり来て、今日中に全て運ぶだと」

「そうよ。私の領地から資材、職人を揃えてきたから。安心して、マイスターは屋敷を建てた事あるわ。それとトラックも今日までしか貸せないから急がないと」

「それほど急ぐとは、隊長は何か用事でも?」

「んー、本当は内緒だけど、グロッタ伯も関係者だし教えとくわ。ウチの国の冒険者ギルドと炎国の冒険者ギルド間で話しがあって、キャビン隊のバンニング班長とその元冒険者仲間たちが炎国へ招待されちゃったのよ。遠いからトラックで移送するの!あ、隊の事は大丈夫よ。デバンが仕切るから、あ、エイテルも連れてくから。これ冒険者ギルドの嘆願書の写しと、炎国へ行けって王命書」

 グロッタ伯はぱっと机に置かれた書類を見つめた。

 確かに軍の外国派遣命令書で、王の署名もあった。

 詳しく見ようとしたら、キャビンがさっと取り上げたので中身は読めなかった。


「エイテルからは何も聞いていない!」

「ロコロ湖までの街道で魔物退治してるんでしょ?直接王命書渡してそのまま一緒に行けってギームー大臣が言ってたわ」

「ギームー大臣だと、社交の場に殆ど出てこない……あの」

 グロッタは様々な有力者と繋がりがあるが、ギームー大臣は中々会えない有力者の一人だ。

 パーティには来ないし、いても話しかけるのは難しい、国内の行事には殆ど出ないのに、なぜキャビン隊長は詳しいのだろうか?


「ギームー大臣は、外国の大使とか冒険者とかそういう人とばっかりいるわね。異国の冒険者の話しを聞きに酒場に行ったりしてて、こないだ一緒に飲んだわ。炎国の大使とも赤い油料理を食べたんだって。炎国だと辛くない料理は食べない地域もあるとか言ってたわね。子供も辛い料理なのかしら、食べられないと困るから食料も多めに持ってかなきゃ」

 バッーっと喋ると、キャビンはレイを連れて行ってしまった。


 わけが分からないし、騒音の後の静けさにめまいがしたが、どうやら、式典でロコロ湖のリゾートの宣伝やら、有力者の招待やらやる時間が出来た。

 ……やにやらせているアレも間に合いそうだ。


 グロッタ伯爵は気を取り直して一人でほくそ笑むのだった。




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