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美術館業始めます

「デバン副隊長、どういう事ですか?隊長帰っちゃったし何か知ってるんでしょ?バンニング班長は……知らなそうっすね」

 セメテは、ちらっとデバン以外に口割りそうな人を見渡して尋ねた。


 バンニングは呑兵衛連中で集まった組で大笑いしながら酒盛りしていた。

 サハギンの竜田揚げやらポテトフライやら揚げ物が気に入ったらしく追加で頼んでいた。

「まぁ、知ってはいるが……隊長としては、何やるんだろうと宴会の話の種を蒔いた気になってらっしゃるからなぁ。俺も今日は言うなと口止めされたし」

 セメテはたまらず突っ込む。

「いやいやいや、不安しかないから!美術館業って何!美術品の運搬でもすんすか」

 デバンとセメテは学校の先輩後輩だったこともあり、

 宴会でまではデバンも口うるさく言わない。

「お、当たってるじゃないか。流石の勘働きだな」

「どうも。そうじゃなくて、規模だ、規模。ある程度大きくて、貴重な物の運搬てくらいなら、まぁ、わかるけど、あんな大々的に言うんならよほどの長旅か」

「んー。長いは長いだろうが、一回の距離は数時間だな」

「期間が長いってことか?」

「そうだな。おそらく数週間かかる。まぁ、近く発表されるから楽しみに待っていろ。心配して、実際取り越し苦労だったってなるくらいが丁度良い」

「そんなだから苦労人扱いされんだぜデバン副隊長。バンニング班長みたいにデカく構えときゃ良いのによ」

「実際、兄の方が色々考えていると思うぞ。行動しないだけで……」

「まぁ、俺は俺で構えさせてもらうさ。口止めされてるのに、悪かった……です副隊長殿」

 デバンは苦笑する。

「今更、直してもな……それに私も楽しんで乗っかってるから気にするな。そうだな。せっかく隊長の種に食いついてるんだから検討材料はサービスしてやるか……今回の件は、さる伯爵様からの依頼でな。隊長が若干やる気なのは割高な依頼料と、追加報酬があるからってくらいか。せいぜい楽しんで頭働かせておけ。言っておいて何だが、睡眠はちゃんととれよ。じゃあな」

 デバンはそう言って少しふらつき気味に帰っていった。


「はっはぁ、おいセメテ、コッチ来いよ。飲まなくても食うだろ」

 セメテは酒盛り集団のボスに呼ばれた。

「んじゃ是非いただきます。美味かったすけどちょっと足んなくて、ポテトフライ止まんないっすね。これ味付け塩だけ?すげぇ、芋の甘味もある」

「あぁ、ポテという新人が揚げた。実家のやつ持ってきてくれたらしい。一応ケチャップとマスタードも用意してくれてるから使ってくれ」

「あざす、ケチャップも美味い。市販品と比べても段違いで、なんというか味がある」

「そっちはミクスの手製だな。ホントに良い新人が来てくれた。コルチェは人材を探すのも上手い」

「流石バンニング班長色々と詳しいっすね」

「はっはっ、長いだけだ」

「そういやさっきの驚きましたね、美術館業って」

「あぁ、驚いたな、いつ決まったんだか。元々、グロッタが自分とこの美術品を見せびらかしたいってのは前々から奴が言ってたんだが、ウチが絡むとはな」

 セメテはびっくりしてポテトを落とす。


 呑兵衛の面々も、驚きながらも二人の話に聞き入っていた。


「さる伯爵ってグロッタ伯っすか、あの神狼団の、見栄っ張りの」

「おいおい、有事はともかく、平時は奴ほど演出に長けたやつはいないぞ、交渉事も卒がない。何せキャビン隊に依頼かけられる位だ。しかも中期の、そんな貴族、商人俺は片手の数程度しか知らんぞ」

「実は凄い人なんすね」

「上げて落とすようだが、中身はないがな。いや金はも、名誉も美術品もある。ないのは実力だけだ」

「凄いんだか凄くないんだか」

「酔っぱらいの戯言に真に受けるな。俺らは適当に隊長の話の種で楽しむ。今日はそれで充分だろ」

 酔っぱらいの放言だが何となく説得力があってセメテは黙り込んでポテトを食うことにした。

「おい、食ってばかりもつまらん、せっかくだ、ロコロ湖の護衛任務の話でも聞かせてくれ」


「いいすよ」

 セメテも、見たまま、感じたまま、信じられないような川上りや、ロコロ湖のルビーの話など、物語っぽく語って皆を笑わせていた。


 ピッキンも、普段より気がねなく話すセメテの物語をニコニコと、美味い酒を飲みながら聴いていた。


 こうして、楽しい夜は更けていった。


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