準備
命令系統は
大隊長→キャビン隊長→デバン副隊長→各班長
です。
キャビンは会議室から隊舎に戻った。
今頃デバン副隊長が、大隊長の所の副隊長から作戦に関する分厚い資料をもらってきて、中身をまとめているころだろう。
キャビンも大隊長も副官の方が、実務を円滑に進めるので任せている。
キャビンと大隊長が会議するのは形式的なものだ。大隊長が雑談したがりなのもあるが。
キャビンは隊舎の食堂で冷たい紅茶をもらって飲み干すと、デバンを探しに隊長室へ向かった。
「デバンー、いる?」
隊長室はキャビンの隊長室とデバンの副隊長室をぶち抜いて同じ部屋にしている。
あの長話ならデバンの方が先に戻っているだろうと思って部屋を覗くがいなかった。
代わりにメモがあり「隊員に説明してきますと」書いてあった。
キャビンが保管庫に着くと、隊員はもう作業を始めていた。
隊員がトラックに原動機付2輪を詰め込むのを確認した後、大声で指示を飛ばしている大柄な男に声を掛ける。
「バンニング班長。物資は揃う?」
デバン副隊長の兄、バンニング班長はキャビン隊10班の中の第1班班長だ。
デバン副隊長と同じ背丈ながらも、鍛え続けた体格は凄まじく、キャビンは前に片手でリックをつままれたあげくプラプラとブランコのように揺り動かされたことがある。
飲み会の席の売り言葉に買い言葉なので不問になったが、後で平謝りされた。
「おう、隊長順調だぜ。パンも小麦も定量だがおかずは少なめ調味料多めに用意した。海の新鮮なものを現地調達するだろ?みんな楽しみにしてるぜ」
干したり塩をきつくしないと糧食は日持ちはしないが、現地調達できるならそれに越したことはない。
「容積重量と稼働率はどう?」
「容積、重量ともに問題なし。国内の海岸線沿いの捜索時に物資拠点作成。一旦は2週間程度とみてる。急げば2日間で着くドレージくらい大きな町ならばと、補給前提での用意だ。稼働率は3割を想定してる」
キャビン隊の稼働率は馬車台数と隊員数で計算している。
「今あるもの、キャビン隊分はそれでいいわ。ただ、未稼働隊員もフル出動。護衛隊形組める程度で馬車出して、持ってけるだけ小麦と、途中で水も汲むから、空樽ともかき集めて」
バンニングは驚いて声を張り上げた。
「おいまじかよ班長。そんなに持ってくなら水運だろ。バンプールからドレージまで川が繋がってんだから!てか水運の奴らも動いてんだろうが!」
「急ぐならその通りなのだけど、ちょっとドレージの需要が微妙なのよね」
「微妙?」
キャビンが大隊長から聞いたニュースを伝える。
「水棲のサハギンのせいで水運が鈍い。舟の転覆があった。他には周辺の村落からドレージに避難民が集まっている」
「つまり、供給網が細っていく中、需要が拡大中ということね。陸路もサハギンがのさばってるから護衛もない行商人だと絶賛足止め中なわけ」
「そういうことか。んじゃ支援物資と…ドレージ市壁内の水が、あー。不安だから上で汲んで持ってくわけか。了解。手配します」
「よろしくね。それじゃあ私は他班の様子を見てくるから」
キャビンはバンニングに敬礼して歩き出した。
バンニングは敬礼で見送ってから、頭を掻いた。
「ソータ。ソータ副班長いるか?」
馬車の裏からひょこっと第1班副班長のソータが出てきた。バンニングが大柄大声なのもあって細身で細目なソータは影が薄いと言われる。
「はい。班長」
「隊長の指示は聞いてたな。俺はこれから資材課で医療物資をかっぱら…申請して受け取ってくる。ついでに空樽と追加の食糧も。お前は各班に指示して資材課倉庫搬出場所に馬車集めとけ」
「了解です。でもウチの隊だけでよろしいんですか?ドレージへの支援物資とすると規模が小さいように見えますが」
「規模を想定出来るようになったのは進歩だな。これは風穴作りだ」
「…となると、バンプールからドレージまで、軍でなら支援物資を運べるかどうかの確認ということですか」
「正解だ!あくまで偵察が目的と言ってはいるが国内の補給路が生きてんのか途切れる寸前なのか、今後に関わるからな。ドレージの奴らが補給路は死んでると思ってる所に少量でも物資が届けば希望になるだろ。孤立してないんだってわかる。物資自体は当面は凌げる程度あるはずだ。まぁ他隊が運ぶにせよ行商が運ぶにせよ手本は必要だろ?」
「わかりました。うちの隊の各班長に伝達して馬車を集合させておきます」
バンニングはソータが走り去っていったのを見て、資材隊へ向かう。
「さてね。こっちの説得も上手く行けばいいが」
頭をがりがりと書きながらバンニングは期待しないで待っていた。
結局、ソータ副班長は交渉でしどろもどろになってしまい、資材課に上手く説明できずぼこぼこに言い負かされてしまい、結局バンニングが説明して物資をかき集めてきた。




