休憩
投稿順ズレてましたので割り込み入れますので明日の投稿は無しです。
夕方、ドレージ基地内の食堂に案内されながらニコニコのキャビンは歩いていた。
キャビン隊は全員が一区切りとして集合し、ディナーに招待されてぞろぞろと食堂へ向かっている。
「休憩はちゃんとしないとね!シーフード楽しみ!お腹減ったー!」
案内を頼まれた、ドレージ基地兵站部食料班の小柄なロブがキャビン隊を案内する。
「そうです。隊長が休まないと皆気を使って休まないんですから」
「皆、小休止は取ってないの?」
キャビンがデバンにキョトンと尋ねる。
全員が気まずそうに首を振る。
「隊長はとりました?」
「あー、ネコダッシュ楽しくて取ってないかも」
デバンが呆れつつ嗜める。
「かもじゃなくて、とってません。昼ご飯も召し上がってないじゃないんですか」
「おやつは食べたわよ?」
ネコダッシュしながら粉問屋の前を通ったらお礼にとクッキーとお茶を差し入れてもらったので、ネコに乗りながら食べた。
「仕事しながら流し込んだだけです。皆も休憩しようとしないから、私が無理やり全員集めて昼食取らせました」
「私食べてない」
ふくれ面で抗議するキャビン。
「呼びましたよ。後でって言われて、駆け回られてましたので、そのまま残ってます」
「明日食べる」
「明日は明日で御用意します。隊長の分は当直の夜食にします。明日まで置いておくと痛みますので」
「無駄にならないなら、いいわ」
「それより隊長、挨拶などもありますので考えておいてくださいね」
「ディナーのお誘いのお礼ね。了解」
トコトコ歩いていたロブが広い部屋の前で立ち止まる。
「着きました、基地の食堂です。それでは、席にご案内いたします」
案内されて食堂に入る。
海鮮の香りに期待を高めながら入るとたくさん並んだ机にはどっさりと料理が並んでいた。
ドレージ基地の隊員が大勢着席して、キャビン達を見つめていた。
基地内の食堂のため豪華絢爛といった風情ではない。
普段、隊員が現場で働き、合間にくつろげる、機能的で簡素な作りだった。
ただ、普通の食堂よりかなり広い。
千席位ある。
キャビン隊が今は100名程度なので、まだ余裕がありそうだ。
ロブに案内されて空いている席にキャビン隊員達は詰めていく。
キャビンとデバンは基地長と一緒に座った。
食堂の前方に用意された少し離れた席で、マイクも置いてあった。
全員が着席したのを見届けると基地長があいさつを始めた。
「まずはみなの奮闘を称える。緊急時の混乱の中、迅速に行なってくれた。……疲労している者もいるかと思うが功労者との懇親のため、もうしばらく起きていてもらえるとありがたい……さて、功労者の紹介だ。王立軍統合輸送大隊所属第一隊通称キャビン隊のキャビン隊長だ。みなも阻塞魔法や、大量のコンテナ輸送等キャビン隊長の活躍は聞き及んでいると思う。
あわせて、キャビン隊の隊員達もサハギンの急襲の中、仮設集積所を構築と防衛を行なっていてくれた。その後本日、ドレージ都市内での輸送でもその力を発揮してくれたからこそ、迅速な輸送となった。
ドレージ基地として敬意を称する。また、ここにいない隊員達は現在も仮設集積所で防衛任務中である。こちらの隊員へも敬意を称する。」
その後、基地長はキャビンに向き直り、右手を差し出す。
「この非常時の困難な時に、物資を運んでいただいたこと、ドレージ基地長として、また、市民として感謝する」
キャビンはにこやかにその手を握り力強く握手した。
「基地長のお言葉、しかと賜りました。ここにいないものにも改めてお伝えさせていただきます」
握手を話すと基地長がキャビンにそっと声をかけた。
(このまま、挨拶をお願いします)
静寂の中、キャビンは食堂の皆へ向き直り、マイクを使い、音量の感じを探りながら話し始めた。
「ご紹介とお褒めの言葉をいただきました、キャビン隊のキャビンです。」
キャビンは一日働いていたけれど、元気にニコニコと話し始めた。
「皆、お疲れ様!眠たい人は寝ててもいいわ!私が話ているときに寝てた人は今までいなかったから後でどこらへんが退屈だったか教えて!」
キャビン隊員達から笑い声が飛び出す。
反対にドレージ基地の面々は困惑の顔を浮かべる。
「さて、まずは、この大変な時期に慰労としてお集まりいただいて感謝します。こちらの隊員も、皆さんよりはまだ元気が余ってるとはいえ、ずっと動きっぱなしだったり、腹ペコなの!」
「たいちょーは成長期だからちゃんと食べないとだめだぞー」
隊員の一人がヤジを飛ばす。
「そうね!後であんたの隠してる夜食を回収に行くわ!」
ヤジに返された隊員はニヤッと笑う。
何だかんだで、キャビンに構いたがりの隊員達は、キャビンにあげるようにおやつを常備している。
そんなやり取りの後、キャビンはドレージ基地の隊員に向き直り、手前にいた人に訪ねた。
「ドレージだとどんなおやつが名物なの?」
話を振られた隊員は笑顔で答える。
「港町だからなんでも入ってるくるが、地元の名産は海産物だな。カルパッチョなんか最高さ」
隣の年配が話す。
「いや、それ酒の肴に食ってるやつだろ。おやつっつたら甘いもんだクッキーなんかだろ」
「クッキー?どうして?」
「そりゃ、小麦粉もバターも大量に集まってきてて、船でも馬でも長く旅するのに、うってつけだからな。皆、どこかしらの菓子屋に馴染んでるもんだ。基地の近くにも何店かあるぞ」
「どこのが美味しいの?」
キャビンがそう問うと男が立ち上がった。
「ガレットデックのが最高だ」
「デックだぁ、わるかないが、勧めんならチョコクッキーのマイクスだろ」
「いやいやいや、サックンのサクサクッキーよりハマるのはないって」
口々に好みのお店を並べあげ、食堂ががやがやと騒がしくなる。
キャビンはその声に負けないように叫んだ。
「よしっ! 今日私達は誇りある町、店、名物を守れた!皆が運んだ物資が商会に渡り店に届いた。作る人を治療する病院にもね。この繋がりを守った皆に乾杯!」
「「「乾杯ー!」」」
普段なら騒がしい夜は徹夜で飲んだくれる隊員達も、明日以降も続く事を考えて、数時間でお開きとなった。
みなが手持ちのクッキーをキャビンに持ってきて、味比べしたり、過去一番クッキーを食べた日となった。
港町は小麦粉砂糖が集まって、遠洋航海のために水分がない堅焼きビスケットやクッキーが食料として必要だったんだって。
(キャビン:ドレージは元船乗りのお店も多いみたい)




