ネコ
キャビンはネコに乗って町中を駆けていた。
速度は時速20キロくらいだろうか。
ネコというか、猫。
魔力で形作られた虎ほどの白基調に、黒の縞模様の大猫がコンダラを加えて軽く走りながら地面を整地していく。
キャビンが駆けているのをみながら、兵站部長はデバンに尋ねた。
「魔力で動物を作るとは………どういう仕組みなんですか?全くわからない」
デバンも苦笑して答える。
「まぁ、そうですよね。実際本物の虎……いえ、猫ではないんですよ。意識はありません。キャビン隊長は昔、隊で拾ってきた老猫を世話していました。王都の隊舎で留守番する事がおおかったので、その老猫とは数年間ほとんどずっと一緒でした。出かける時も連れて行きました。その猫が亡くなった時、大泣きしながら魔力暴走して……突風で周りのものも吹き飛びました。私が隊長をみた時には亡くなった猫そっくりの猫を抱えて泣き止んでいました。通常はあんなに細かく魔力操作で猫の動きは再現できません。おそらく、無意識下の猫の動きを再現してるんでしょうね」
「なるほど……それでなんであんなに大きいのですか?」
「さぁ?道は通れるようになりそうですし、問題ないのではありませんか?」
キャビンは数時間で大通りのがれきをどかし、えぐれた道の舗装も終わらせた。細かい部分は地元の職人たちがさっと終わらせた。
その後は小道も駆け回ろうとしたが、キャビンの活躍に、避難所にいた近隣の村人たちが出てきて、ドレージの復興に尽力し始めた。
「飯ももらったし、今後の村の建て直しも手伝ってくれるんだろ? ここらで貸しを返しとかないと、情けなくて、落ち込んでなんかいられねぇな!」
村が全壊したという村長の息子はそう言って、村人に喝を入れて、動き始めた。
夕方、物資運搬も一区切りがつき、
「ただいまデバン、大体終わったと思う。後はみんながやってくれるわね」
「そうですね、お疲れ様でした。隊長。隊長がやらなくても皆の力があります。忘れないでください」
キョトンとキャビンにデバンは続ける。
「でも、隊長がいたから、前を向き始めるきっかけになりました。これも忘れないでください」
キャビンはニッと笑った。
「そうね!さぁ、私達は一旦ご飯を食べましょう。」




