コンテナ化
バンニング班長とバンニング班が積み込みの指導班。
それ以外の班で奇数番号の隊員は積み込み、偶数が荷卸の担当となっている。急ぎのときや暇なときは他の隊員もこの作業を行う。
「各員シューごー!」
バンニング班長の声が広がる。
隊においては一班長だが、物資の積み込みの総指揮は彼が仕切っている。
キャビン隊の積み込み員はバンニングの号令を受け、かけ足で集まる。
「各員セイレーつ!」
バンニング班長の声に乱れなく整列する。
「これより、ビッグブル作戦を始めぇる! バンニング班指示の下、食料、医療物資をドレージに届けぇる。まずは隊長の挨拶だぁぁ!」
バンニングに促されて、バンニングの横に用意された木箱に乗ってニコっと笑う。
「かわいぃ」「今笑った」「ぴょごぴょこ動いてる」
「あぁ」「久しぶりに隊長が見れた」
キャビン隊の隊員たちは、キャビンを見上げて、口々に呟く。
キャビンは笑顔を崩すと、ハキハキと話し始めた。
「キャビン隊傾聴! みんなが準備してくれたおかげで、物資を届けられる! 私はさっき見てきたけど、まだ色々足りなくて困ってる。私達のメーチェみたいに、自分の分を遠慮して助けようとしちゃう人もたくさんいるの」
キャビンが唇を噛んで沈黙すると、隊員はさざめく。
「俺達のメーチェみたいな……儚げな天使が俺達を待ってる?」
「可憐な天使たちが倒れてしまう。助けよう」
「悲しそうな天使なんて耐えられない。運ぶぞ」
「運べ」
「「運べ、運べ」」
「「運べ、運べ、運べ」」
どんどんかけ声が重なった。
隊員達が集言していると、キャビンが木箱の上でジャンプし、とん、と小さな音がした。
キャビンが着地すると、キャビンの足元から柔らかな赤い光が広がると隊員は、静まり返った。
「安心して。きちんと運ぶ!!……じゃあ、バンニング班長。説明をよろしく」
不意に静まり返った隊員たちを再度集中させるようにキャビンが声を張り上げた。
皆の注意がバンニングに集まったのを確認してキャビンが木箱を降りた。
小声で進めてと、バンニングに説明の続きを引き継いだ。
「これより説明を始める」
バンニングは大勢に聞こえるようにハキハキと話し始めた。
キャビンは、説明を任せて横に待機すした。
コンテナ化の概要はこうだ。
コンテナ化とは支柱に木の棒、土台や隙間を縄で作った直方体に荷物を入れて、まずは外側の規格を揃える。
それだけだと、運べないので位置固定魔法で荷物同士と柱や縄とくっつける。
こうすることで、バラバラだったサイズの荷物が同じ形になって運べるので積み込みも移動も楽になる。
肝は紐に魔力で強度強化を行う事だ。
付与魔法は魔力が物自体を変質させるため、一度かけるだけでいい。
常時魔力を流す必要がなく、扱いやすい魔法だ。
昔から、1つの馬車に荷物を入れる際にワインや青果等が割れたりつぶれたりしないようと、木と魔力で強化した縄が使われていた。
それを更に大規模に運ぶため、大型商船や軍用物資を運ぶのにまとめて出し入れするのに便利ということで発明された。
ただし、実際は小規模なら魔力を一切使わずに木箱の強度で耐えられるし、大規模にやると、一つ一つの魔力量は少なくとも どうしても大量の魔力が必要になり、効率が悪いのであまり活用されていなかったが、キャビンの魔力ならと発案に至った。
キャビンは大規模魔力の行使を気にしないが一般的に魔力を使う隊員は負荷がきつい。
スペレのように身体的に負荷が出る場合や、魔力欠乏が出て倒れることもある。
「……以上だ、全員安全第一で始めぇ!」
バンニング班長のかけ声で勢いよく作業が始まった。




