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作戦会議

 キャビンは、デバンに案内されて医務室へ向かう。

 その後、デバンはビッグプル作戦の意見を聞くためパッドを探しに隊の休憩所へ向かった。


 医務室と言っても野外のため簡易的なテントだ。中からはバタバタと動いている人の気配がしていた。 

 キャビンが医務室の中に入ると、何人かの隊員が医務室の設置準備をしていた。

 奥の方に一人だけ寝ていたのはスペレだった。

 スペレはぐったりした様子でベッドに横たわっていた。


 腕の痙攣は止まっているようで、キャビンはにこやかに話しかける。


「具合どう?」

「おかげ様で落ち着いたっす。ちゃんと時間作って見てもらえってお説教が……疲れたっす」

 起き上がろうとして結局倒れた。


「そのまま寝てていいわよ。少し話ししたいと思って来ただけだから、話くらいは止められてないわよね?」


 スペレはうなずいた。

「腕を動かさなければ特には良いらしいっす。食器より重いものは持つなって……仕事にならないっす」


「優雅な生活ができるじゃない」

 キャビンがからかうと、スペレは首を振った。


「ただでさえ大変な時期なのに、抜けちゃってもうしわけないっす」

 スペレが悔しそうに言うと、奥から優しい声が聞こえてきた。


「わかったって言ったのは口だけだったの?あなたが10人抜けたって変わらないわ」

 スペレのプライドを切り刻むように、笑顔でやってきた医療班のメーチェが告げた。


「そんなー、メーチェさーん見捨てないでくださいっす」

「先生との約束を守らない人は、他の人との約束も信用出来ません」


「お疲れ様、メーチェ。部外者を寄越して、仕事を増やしてごめんなさい」

「大丈夫ですよ。キャビン隊長、こんなになるまでほったらかしてた人が悪いんですから。今回のプルブルだけじゃないですよ。彼は前から酷使してたから負担が一気に出てしまっただけです」

 メーチェはにっこりと笑って答える。

「本当にすみません。……ちゃんと休みます。先生の言うことも聞きます」


「絶対に約束守ってください。破ったら許しません」

 メーチェがきつい口調で言う。

「は〜い」

 デレっとしたスペレはヘニャヘニャと答える。


「それで隊長、スペレさんにどのようなご要件ですか?」

 メーチェがスペッレを横目に尋ねた。


「ちょっと図を書くから待って。あと、パッドが来てからまとめて説明した方が良いし」

「隊長、焦げの臭いが病人に良くないので、外でお願いします」

「わかった」

 メーチェに言われ医務室の外に出る。


 キャビンはメモ帳をポケットから取り出して、右手の人差し指から熱魔法を出して図を焼き付け始めた。

「ふん、ふーん、ふふーん、じゅっじゅっじゅっー」


 書き終わったころデバンとパッドがやってきて、おどおどとキャビンに話しかける。

「呼ばれましたので来ましたぁー。何かいやな予感がするんですけどぉ」


 キャビンが顔を上げてぱぁっと笑顔を向ける。

「待ってたわ!中入って。説明始めるから」

 紙に焼き付けられた図を掲げて続けて話す。


「じゃ、説明するわ。まずこれを見て!」

 スペッレの寝ているベッドに集まって会議を始める。

 はしゃぎながら紙を振るので全く読めない。


 パッドがおずおずと切り出す。

「隊長、紙を揺らさないでくださいぃ。見えないですから」

 キャビンははっとして、スペッレのベッドに紙を置く。


 そこには木箱の山がトラックに繋がれているような図があった。

「説明するわ!プルブルって魔力があれば、無制限に重さがなくても運べるわけでしょ。だったら、集積所の荷物をいい感じに並べて連結して運べば全部いっしょくたに持ってけるでしょ」


 スペッレがあんぐりと口を開けていると、パッドが口を結んで難しい顔をしてから切り出した。

「隊長の魔力は問題ありませんが、体力が持ちません。反動も尋常じゃありません。走行できません」

「緩衝魔法を咬ませれば反動は大丈夫でしょ?」

「確かに緩衝魔法を咬ませれば負荷の軽減はできるっす。馬車1台なら馬の負担を減らす目的でやってみたことあるっす。魔力量の問題で短時間しかできなかったすけど。いい感じに並べるのがめちゃくちゃ大変っす」

「どうすれば運べるかしら?」

「量を抑えるしかないですぅ。反動制御と、プルブル自体の行使、トラックの運転が必要です。キャビン隊長の魔力量は問題なくても物の反動を制御数するのは厳しいです。誰か補佐が必要ですが、そちらの人員が限界輸送量の基準になります。一度に運んでも荷捌きが出来ません」


「どのくらい?」


「今ある食料と医療品だけならいけると思いますぅ。あるのは馬車50台分くらいかと」

「ならそれを運びましょ」

 パッドがふぅーと息を吐く。

 スペッレが正気に戻って口を挟む。

「いい感じに並べるってどうするんすか」


 デバンが威厳を持って説明する。

「我が隊は迅速な輸送のための輸送物の梱包技術があります。私の兄バンニング考案の……」

「そういうのはいいから、とりあえず二人共が出来るっていうなら出来るわね!やるわよデバン」

 途中でセリフを止められたデバンがしょんぼりしながら答える。

「はい……手配します」


 やるぞーと腕を振り上げるキャビンは、メーチェにお静かにと言われて病室からつまみ出された。

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