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集合

 トラックは集積所へひた走る。


 川岸から集積所までは大した距離ではないが、所々に、サハギンがうようよと歩き廻っていた。


 道をふさいでいるやつもいたので、キャビンは邪魔だなぁ跳ね飛ばそうか避けていくかと迷っていたら、屋根の上のべグレイトが声を張り上げた。

「道なりに進め、私が対処する」


 よし来たとキャビンは信頼して、進路をそのままに加速する。


 べグレイトの速射は凄まじかった。

 早撃ち競争でもしてるんじゃないかという速度で射程距離に入るごとに衝波魔法を放っていく。


 ほー、とパッドが感心する。

「衝波魔法は不安定なんですぅ。シャボン玉が真っすぐ飛ばないように空気抵抗で弾道がふわふわと曲がってしまい、真っすぐ進まないはず……なんですが」


 キャビンは不思議そうに衝波魔法の先のサハギンをみる。

 りんご大の虹の玉が道路上にいたサハギンにぶつかるや、サハギンは吹っ飛んでいく。

「弾は速いし、真っすぐだわ! あれで雪合戦出来ないかしら」

「着地でケガ人がでますぅ。うーん。見たことない秘術ですかねぇ……でも、軍務に使ってるし……うーん」

「気になるなら後で聞きましょ」


 キャビンたちはそのまま難なく集積所に到着した。


「キャビン隊長! お待ちしてました。ご無事で何よりです」

 デバン副隊長が、ホッとした様子で声をかける。

「ただいま、デバン。一名ケガ人がいるから医療班にに診てもらいたいわ……スペレ。一応診てもらってきて」


「キャビン隊長、自分は大丈夫っす。よくあることっす」

「だめよ!症状が出たら必ず治療しないといけないわ。キャビン隊に同行する以上は……義務よ」

スペレは大げさだなぁと、遠慮するので、キャビンが鋭い剣幕でたしなめた。


「わ、わかりました。お世話になります!」

 スペレはいつもの軽い口調も吹っ飛んで、しおらしく医療班のところへついて行った。


「うちの部下が世話になります」

 べグレイトは慇懃に頭を下げる。

「良いのよ。スペレにはまだまだ頑張ってもらうことになるだろうし、休めるときに休まないと」


 話しが終わるのを待っていたデバンは報告を始めた。

「こちらは問題なく物資集積が出来ています。サハギンの群れもピークを過ぎたのか、わざわざ集積所を襲うものは少ないです。、こちらには来ず、川の上流に向かっているようです」

「サハギンは王都に向かっているの?」


「あ、いや別の支流です。ロコロ湖へ向かう方です。偵察が確認しました」

「さすがね、他に情報はない?」

 キャビンがドレージに行っていた間に、デバンは着々と任務を進めていた。


「王都の図書館で、以前に発生したサハギンの大移動についての記録が見つかりました」

「お手柄ね。内容は?」

「立て札につけていた紙のようです。サハギンの大移動で王都からロコロ湖までの道や建物が壊されたので、人手を集めるということと、ルビー発生のため海に出るのは当面禁止とする。というような内容でした。騒動が終わった後に掲示されたものですね」

「ルビーって?」

「不明です。ただいま、当時の他の記録を探しています。軍部や国の書庫を探させているようですが……」

「今でも軍部が見せたがらなかったり、口頭命令ばかりだものね。しかも数百年前だとなおさらね」

 機密にかこつけて、やらかした証拠をさっさと処分したがると聞く。


 べグレイトがふと気づいたように話し始める。

「ルビー。一つ心当たりがあります」

 デバンが驚きながら続きを促した。

「サハギンは遠洋に生息しています。魔物のため生態は不明ですが、海底に、強いサハギンを王とする国があるそうです。昔きら代々漁師をしているものからは赤いサハギン。ルビーには近づくなという話を聞いた事があります」


 キャビンはパッドに問いかけた。

「赤いサハギンなんているの?」

「い、いいえ聞いたことがないですぅ。今回だって、青がほとんどで、青緑がちらほらいたくらいで、赤なんて……」

 べグレイトが答える。

「その漁師も見たことはなく、何代も前の先祖が見たそうだ。嵐で航路を外れたところ、サハギンの王国の真上に行き、赤いサハギンに船を沈められたと。その方は板切れにしがみついて漂流したが何とか助かったとのことだった」


 デバンは難しい顔をしながらつぶやく。

「今回の騒動も赤いサハギン、ルビーが関係している?」

 べグレイトがうなづいた。

「で、あればドレージにも何か資料があるはずです。調べるよう手配します」


 デバンが分かったと、うなずいて話を続ける。

「では、今後の対応はいかがしますか」

 キャビンは悩みながら答える。

「集積所からドレージまでの物資の運搬と、ロコロ湖までの偵察……の二手かしら情報収集が進めばまた命令が来るはずだから」

「そうですね、今回の原因がルビーかもしれませんからまずはサハギンの頭数や状況、ロコロ湖まで移動可能かを調べる必要があります。バイカーズを出します」

 バイカーズはキャビン隊の中で、バイクが運転できる隊員を集めて臨時で結成される。

 みな運動能力に優れ、道がなかろうが、山中だろうが走破していく。

 バイクもトラックと同様に最近発明された魔力で動く二輪車で、トラックより小型なこともあり燃費に優れている。

 キャビンはバイカーズの面々の顔と名前を思い出しながら答えた。

「よろしく。バイカーズが集合したら、偵察開始ね。私は集積所とドレージの往復をするわ。物資量的にトラックで何度か往復すれば足りるでしょ?」

「駄目です隊長。我々が王都から集積所まで露払いしたおかげで、かなりの量が集まってきています。食料だけならともかく、沿岸の補修用の木材や石材も含めるとトラックだけでは無理です。先程のはあくまで見捨てていないというPRのためですよ! 数日往復しても足りません」

 キャビンは残念がるでもなくむしろはしゃいでいた。

「そんなに集まったの! ドレージの人たちは凄い助かるわ! どこにあるの?」

「一つ戻った丘の麓です。補修用の石やら木やらに固定魔法かけて、そのまま仮設の砦みたいになってます」

「後で見るわ! デバン。そろそろ代案は考えついた?」

 デバンは話しながら、いくつもの案を考えられらしい。前にチェスを数局やりながら、報告書を書いていた。


「もちろんです!キャビン隊長にもご活躍していただきます!」


 デバンも楽しそうに、にやりと笑いながら告げた。

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