第8章・5幕 捜索
今回の登場人物
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・置田 蓮太 (おきたれんた)
16歳。本編の主人公。置田村の創始者・置田蓮次と置田藤香の子。英雄の息子として、副統括となり、次期・乙名としての期待が高い。武勇の才にも長け、心身とも強靭に成長を遂げる。
・鈴谷 稲穂 (すずたにいなほ)
黛村の旧名・鈴谷村の元乙名・鈴谷与志夫の娘。蓮太の許嫁となり、蓮太に乙名になることを望んでいる。17歳に成長し、髪は更に伸ばし、大人びた服装になるも、蓮太への想いは変わらない。
・香本 有 (こうもとあり)
沙汰人・置田村中央部・本置田 顧問。藤香のブレーン的存在。若い時は都に住んでいた経験もあり、考え方は至って現代的。しかし、残すべき古い文化は守るべきという側面も併せ持つ。
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・缶 杏 (ほとぎあん)
黛村・北地区の変若水の缶梅男の双子の娘で長女。狡猾で、弓の名手。父と同じ、暴力で支配、解決するタイプ。脚が露になった、黒と杏子色のツートーンのチャイナドレスの様な、風変りな装束を纏う。
・缶 桃 (ほとぎもも)
黛村・北地区の変若水の缶梅男の双子の娘で次女。姉の杏にそっくりな顔立ちだか、それ以上に感情的で暴力的。火遁の術を用いて火焙りにし、接近時は短刀で八つ裂きにする野蛮性を持つ。姉と同じ、脚が露になった、黒と桃色のツートーンのチャイナドレスの様な、風変りな装束を纏う。
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ー和都歴452年 3月13日 20時 置田村・黄田組集会所付近 谷川沿いの森
蓮太と剛堂が行方不明になり、数日経ち、小夏に至っては1週間以上経過した事を、青田組、香本、鈴谷ら内政派は危惧する。
それに対し救助隊を発足するというものの、現状、探せる場所を探すと言い出し、まず黄田組集会所付近に向かった妖。
「そう簡単には見つかりっこないか。」
木々を飛び越え、上から辺りを捜索していた。
一方、野崎の命令で、双子に捕らわれた蓮太を奪還するべく赤島猛も同じ辺りに捜索していた。
「女郎花から変若水に入る方が確実だったか。しかし七草らに見つかってもそれはそれで面倒。谷川沿いから渡れる場所を見つけるしかないか。」
赤島は谷川沿いから変若水に渡れる場所を探しつつ、蓮太の幽閉場所を探していた。
ー和都歴452年 3月13日 21時 黛村・惟神収容所
杏は目を覚まして湯治場で水を浴びていた。
火竜の刻印を丁寧に擦りながら、カラダを綺麗に洗う。
久々の一人でゆっくりする入浴を、杏は噛みしめていた。
「さて…と。」
ー独房
「はぁ、はぁ、はぁ」
「く…もう…やめ…ろ!」
「はぁ、はぁ、もうちょっと…だ…!」
⦅桃~?⦆
「え?あ、杏が来る?くそ…!」
桃は急いで服を着て平然を装う。
「桃ってば?」
「あ、ああ。ちょっと…それより杏、何て格好?」
湯治後の杏は、そのままタオルを羽織って独房へ来た。
「ん?ああ、どうせここで脱ぐんだしな。」
杏の答えに俯く桃。
「桃さ…ライオンちゃんを味見したろ?」
「え?」
「わかるよ。」
「ご…ゴメン。何か…つい…」
目を逸らして答える桃。
「まぁ、いいわ。私の計画はライオンちゃんの命は、私にその血を引き継いで終わる。それまでは桃も好きにしな。でも私が目的を果たすまではしばらく待ってて。」
「分かったって。別にそんなつもりじゃ。」
杏が蓮太に近づく。
「さあ、桃と愉しんだろうけど、私が先約だったろ?」
「お前の妹は行儀が悪いようだ。良く躾けとけ。」
「ちょ、この野郎!」
桃が怒ると、杏がまた掌で諫める。
「私ら姉妹を相手できるんだ。多少の不自由は我慢してくれよ?」
杏は直ぐ様蓮太の唇を奪う。
「ライオンちゃんがイイ子なら、こんな吊り下げた状態じゃなく、リラックスできるんだけど?」
「死んでも御免だな。」
「桃?二人きりにして。」
杏がそう言うと、桃は独房を出て行った。
「さあ、私は桃と違って優しいからさ?今夜はお姉さんと愉しもうか。」
杏は丁寧に蓮太のカラダを舐め回す。
時間をゆっくりかけ、一緒に居ることを異とも思わないように。
独房は次第に二人の喘ぐ声しか聞こえなくなった。
ー和都歴452年 3月13日 21時 置田村・鈴谷の館
稲穂が庭に出て、空を見上げている。
蓮太の無事を祈りながら。
「稲穂ちゃん?」
「香本さん…」
「気持ちは分かるわ。本当に御免なさい。」
「いえ、でも蓮太らしいです。小夏ちゃんの為に、黛村に行くなんて。きっと私がその場に居ても、彼は強行したと思います。」
夜空を見上げて確信する稲穂。
「今は無事を祈ります。」
「そうね。明日、梓ちゃんが藤香さんの元に着き、事情を知れば、蓮太君の捜索は大きく動くでしょう。」
稲穂の笑顔に香本も誠意で現状を答えた。
ー和都歴452年 3月13日 23時 黛村・惟神収容所
「あぁ、イイ、最高だライオンちゃん!」
「く、くそ…やめ…ろ…」
⦅杏~大変だ!ちょっと来て!!⦆
「あああ!!」
「うあ!!」
「はぁ、はぁ、桃?全く1人にしろってのに!ライオンちゃん、また戻るから…あれ?イッちゃった?ははは、こりゃまずは1勝負あったか。」
「杏てば!外に親父らが!!」
「わかったわかった。先行ってな。直ぐ行くから。」
桃からいつもの装束を受け取り、着替え始める杏。
「私の良さ、少しは分かったろ?」
そういって蓮太に口づけをすると杏は独房を去っていった。
「く…くそ…はぁ…はぁ…」
流石に精神的にも限界が来た蓮太。
次回2025/6/13(金) 18:00~「 第8章・6幕 「助けに来たよ。」」を配信予定です。
※6/11(水)~6/15(日)は梅雨入り読書・強化月間です。
期間中は毎日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。