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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第8章・哀悼の意を表する ~小さな夏が蝶となる~
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第8章・4幕 惟神収容所

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・置田 蓮太 (おきたれんた)

16歳。本編の主人公。置田村の創始者・置田蓮次と置田藤香の子。英雄の息子として、副統括となり、次期・乙名としての期待が高い。武勇の才にも長け、心身とも強靭に成長を遂げる。


・缶 桃 (ほとぎもも)

黛村・北地区の変若水の缶梅男の双子の娘で次女。姉の杏にそっくりな顔立ちだか、それ以上に感情的で暴力的。火遁の術を用いて火焙りにし、接近時は短刀で八つ裂きにする野蛮性を持つ。姉と同じ、脚が露になった、黒と桃色のツートーンのチャイナドレスの様な、風変りな装束を纏う。


■ ▢ ■ ▢

惟神(かんながら)収容所。そこは先の戦争、一揆の際に黛村の変若水兵団の一部で使用された捕虜収容所。捕らえた置田村の兵士を、とりあえず捕虜として保管するために、間に合わせに作られた。

そう、ここは神奈備と変若水の間に流れる谷川の中でも、最も峡谷の部分であり、置田村・神奈備側は南東に当たり、八俣との境界地点。黛村・変若水側は南西に当たり、女郎花との境界地点。

その二か所の境界地点より、それぞれやや北側で、場所も非常に分かり難い。

そんな谷川大峡谷の変若水側の天然の洞窟を更にくり貫いて改造し、収容所とした、薄気味悪い場所。

何日も住めるように、看守部屋には調理場と湯治場、寝床を増設した。

今では昔に双子の父、缶梅男からその場所は教えてもらったものの、梅男自身も、こんな場所は現実的に使うことはないと、記憶には封印された場所。そこを双子は内緒で蓮太を監禁し、その遺伝子、❝血❞の秘密、強さを奪おうと画策していた。


「植山、お前がここの衛兵を殆ど殺しちまったから、お前がその分働くんだよ?」

「ウ…ウ…」

上山 三吾(うえやまさんご)。黛村の南地区・迦具夜の奴隷商人から買い付けた、実名不詳の番人兼殺し屋。ほぼ獣で熊の毛皮と頭をくり貫いたマスクから目だけを覗かせる不気味な風貌で、ベルトに携える金槌と鋸で、主以外の人間を皆殺しにしようとする。

「南地区の奴隷商人から買い取った時、主人以外の言葉は理解しないと言ってたけど、本当にお前仲間すらも殺すとはね…驚いたよ。衛兵(あいつ)ら束になろうが敵わないと知るや、逃げまとうも、結局殺しちまったもんな。私より酷いわ、アッハハ!」

「ウ…ウ…」

「まぁいいや、アンタはここで杏以外の人間来たら殺してくれればいい。」

「ウ…」

「私は杏が寝てる隙にちょろっとライオンちゃんの味見をしちゃうからさ~。」

桃はそう言うと独房前に上山を設置し、中に入る。

「よう、ライオンちゃん、起こしちゃった?」

「…んん?」

蓮太は裸のまま吊るされるもそのまま寝落ちしていた。

「起きろよ。私とも遊ぼうぜ?」

桃は蓮太の髪の毛を鷲掴みにする。

「…お前が先か?姉貴はどうした?」

「うるさいよ!杏の計画に支障がなきゃ私だって好きにやるさ。」

「大変だな、お前も。俺はお前を女として相手にしたとしても、最後までお前は楽しめないってことか?それこそ滑稽だ。」

「あら!?」

桃は蓮太の顎を持ち上げて、顔を近づける。

「光栄じゃんか?杏より私のが好みってこと?アッハハ!初めて言われたかも。流石、次期乙名のライオンちゃん、女を見る目もあるねぇ?」

「姉貴と比べての話だが。」

「・・・」

「おっと乙女心に傷つけたか?」

蓮太の低迷する精神力だが、尚も屈さず、挑発する。桃はその様子から僅かに察する。

「アンタも殺されないと知って、私をナメてるだけだろ?」

「別に殺されても構わない。だが姉貴はお前を許さなー ん!!」

桃は蓮太の唇を優しく噛む。

「ん…!!」

唇を重ねながらもワイルドに、優しく嚙みつく桃。

「どうだ?他にも噛みついて欲しい所、あるんじゃないか?」

そういって桃が蓮太の体中を噛みつき始める。

「姉貴にバレたら、お前、殺されないのか?」

「アッハハ!殺される?アンタ私らを分かってないね。安心しなよ。それより、今は楽しもうぜ?」

「く…や…め…」

「アッハハ!やっぱライオンちゃんも男だな。気持ちいいんだろ?杏とは暫く何回もヤルことになるんだろうけど、私のがイイって言わせてやるよ。」

「い…やめ…小夏…!」

「? またその名前?アンタ、そんなに好きな女なのか?たしか結婚相手は違う女だろ?」

「…別に、そういうことじゃない。さっさと終わらせて一人にしてくれ。」

「なんだ、その言い方?私じゃ気持ちよくなれないっての?こんなに反応してんのにさ?」

「痛っ!!」

桃が蓮太の急所を強く握りしめる。

「ますます小夏って女も気になるわ。」

「…もう死んだ女だ。気にするな。」

「アンタのその小夏に対する特別感が、女としては許せないんだよ。」

「フン、勝手に嫉妬してろ。ほら、もう御仕舞なのか?」

蓮太が挑発すると、桃は唇を舐めて、嫌らしく微笑む。

蓮太の喘ぐ声が収容所に響き始めた。

次回2025/6/12(木) 18:00~「第8章・5幕 捜索」を配信予定です。


※6/11(水)~6/15(日)は梅雨入り読書・強化月間です。

期間中は毎日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。

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― 新着の感想 ―
姉妹で凄いですね。蓮太はまだ、小夏を好きなままなのでしょうか。
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