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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第8章・哀悼の意を表する ~小さな夏が蝶となる~
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第8章・3幕 惨憺

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・置田 蓮太 (おきたれんた)

16歳。本編の主人公。置田村の創始者・置田蓮次と置田藤香の子。英雄の息子として、副統括となり、次期・乙名としての期待が高い。武勇の才にも長け、心身とも強靭に成長を遂げる。


・缶 杏 (ほとぎあん)

黛村・北地区の変若水の缶梅男の双子の娘で長女。狡猾で、弓の名手。父と同じ、暴力で支配、解決するタイプ。脚が露になった、黒と杏子色のツートーンのチャイナドレスの様な、風変りな装束を纏う。


・缶 桃 (ほとぎもも)

黛村・北地区の変若水の缶梅男の双子の娘で次女。姉の杏にそっくりな顔立ちだか、それ以上に感情的で暴力的。火遁の術を用いて火焙りにし、接近時は短刀で八つ裂きにする野蛮性を持つ。姉と同じ、脚が露になった、黒と桃色のツートーンのチャイナドレスの様な、風変りな装束を纏う。


■ ▢ ■ ▢

小夏の死に、双子が容疑をかけられたことを蓮太に伝えると、本当に小夏を殺した犯人を、一緒に倒すことを持ち掛けられる蓮太。

「小夏が死んだ…か。それなら、勿論、仇を討つ。」

蓮太の言葉に、杏と桃は微笑む。

「ならさ?ライオンちゃん、同盟の証に、私との間に子供を作ってくれない?桃?持ってきて。」

桃が一度部屋を出ると杏が蓮太に更に近づく。

「さぁ?リラックスしてー」

口づけしようとする杏に、顔を背ける蓮太。

「ん?なんだ?」

「持ってきたよ。あれ?取り込み中?杏、手が早いよねぇ?アッハハ!」

桃が肉やら魚の料理を持ってきた。

「小夏の仇を討つといったが、お前らと組むとは言ってない。」

「あ?」

「アッハハ!また杏フラれんの?」

桃が嘲笑すると、杏はゆっくり蓮太の周囲を回りながら睨む。

「ここまで馬鹿にされると、流石に私も殺したくなっちまうよ。それでもアンタの血には絶対の価値があるだろうし、私はその子を得れば、アンタら置田家にも負けはしないだろう。」

「ふん、お前らと組んで小夏の仇を討っても、俺はあの世で小夏に会わせる顔がない。ふっ、いやきっと殺されるだろう。」

蓮太が遠くを見てそう答える。

「それが理由かい?いいさ。アンタ、その小夏ってくノ一と余程、深い関係なんだね?死んだってのに顔色を気にするなんて、ちょっと妬けちまうよ。」

杏がニヤけて返す。

「残念だな。」

蓮太も余裕の笑顔で返す。

「残念…だけどとりあえず飯は用意した。食べてくれ。話はその後だ。」

杏から笑みが消える。


左手と右足を縛られながら、蓮太は右手で座って食事を済ませた。

「久々のに食事で精はついたか?」

「ん?そのつもりはないぞ?」

「まぁそういうな。」

杏がそう言うと、蓮太は再び全裸にされ、手足を縛られ吊るしあげられた。

「そのままゆっくり寝てろ。」

杏がケダモノの様に笑みを浮かべる。

「どういうつもりだ?」

蓮太が疑惑の念を抱くと、杏が蓮太の前に来る。

「とりあえず精をつけたんだ。ゆっくりお休み。」

杏が蓮太のカラダを舐める。

「…う!」

「アンタがゆっくり眠ったら、ライオンちゃんのコレを私が元気にさせてやるから心配すんな?」

「キサ…マ…うう!」

杏が蓮太の急所を愛撫する。

「寝不足じゃダメだ。また明日の夜にでも見に来る。ゆっくりお休みしてたらさ?」

杏が桃を見る。

「杏が激しく相手してくれるってさ。アッハハ!」

「そういうことだ。じゃあな。」

蓮太に杏が投げキッスをすると、桃は頬に手を添えてウインクして見せた。

「アッハハ!」

そう言って二人は出て行った。


「くそ!このままだと…母上、一体どうしたら。」

食いしばる蓮太。

「くそ!くそぉ!!」

全力で縄を引き千切ろうとするも、全く切れる気配はない。

時間だけが過ぎる。

「ここまでか…」

蓮太の精神力も尽きかけてきた。

「まさか…ホントに小夏が…。くノ一への応援はしていたつもりだが、まさか死んでしまうとここまで儚く、呆気ないものとは…許してくれ小夏。」

暗い独房に蓮太の独り言が響く。

これから嫌な女に辱めを受けるだろう蓮太が、素っ裸で想う小夏への独り言を呟く姿は惨憺(さんたん)たるものだった。


ー和都歴452年 3月13日 20時 黛村・惟神収容所


「おい、桃?私も少し休むから、その間、ライオンちゃんの様子、見といて。」

「ああ。見張りはアイツ使うよ?」

桃が親指で後ろを指す。

「ああ。ただし独房に入れるな?前もここの衛兵、ほぼ皆殺しになったからさ。私ら以外、殺しちまう殺人マシンみたいなもんだから。」

双子の背後に熊の毛皮と頭をくり貫いたマスクから目だけを覗かせる大男がいた。

「ウ…ウェェ…」

「ああ、わかった、お前は独房前に居ろ。」

そう桃が言うと、大男は歩いていった。

「じゃぁ、私は寝るから、桃、見張り宜しく。」

そういって杏は寝床へ、桃は独房へ向かう。

次回2025/6/11(水) 18:00~「第8章・4幕 惟神収容所」を配信予定です。


※6/11(水)~6/15(日)は梅雨入り読書・強化月間です。

期間中は毎日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。

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― 新着の感想 ―
蓮太との子どもを作ろうとするなんて、ビックリです。どうなってしまうのでしょう。
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