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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第7章・祖柄樫山の夜明け
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第7章・幕間劇 最後の任務、それが小夏の最期

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・書本 小夏 (かきもとこなつ)

黛村の出自で、一揆で父と生き別れ、母と共に暮らす。置田家とは親しく、蓮太の幼馴染。蓮太への想いを改め、くノ一へと成長を遂げる。身体能力が高く、皮肉の利いた口調に変貌。赤い忍び装束から生足を出し、耐切創タイツで覆う。


・高遠 梓 (たかとおあずさ)

八俣の貧民の出自。小夏と共に藤香のお抱え忍者となる。小夏に引けを取らない忍術・暗殺技術を幼くして習得したという。黄緑色の露出の高い忍び装束に普段は白い衣を纏う、上品かつ華麗な立ち振る舞いが更に尋常でない印象を与える。


・缶 杏 (ほとぎあん)

黛村・北地区の変若水の缶梅男の双子の娘で長女。狡猾で、弓の名手。父と同じ、暴力で支配、解決するタイプ。脚が露になった、黒と杏子色のツートーンのチャイナドレスの様な、風変りな装束を纏う。


・缶 桃 (ほとぎもも)

黛村・北地区の変若水の缶梅男の双子の娘で次女。姉の杏にそっくりな顔立ちだか、それ以上に感情的で暴力的。火遁の術を用いて火焙りにし、接近時は短刀で八つ裂きにする野蛮性を持つ。姉と同じ、脚が露になった、黒と桃色のツートーンのチャイナドレスの様な、風変りな装束を纏う。


・上山 三吾 (うえやまさんご)

黛村の南地区・迦具夜の奴隷商人から買い付けた、実名不詳の番人兼殺し屋。ほぼ獣で熊の毛皮と頭をくり貫いたマスクから目だけを覗かせる不気味な風貌。ベルトに携える金槌と鋸で、主以外の人間を皆殺しにしようとする。


■ ▢ ■ ▢

・和都歴452年 3月5日 8時 神奈備と変若水の境界付近 跳ね橋小屋


藤香のお抱え忍者となり、1年経つ小夏と梓。二人は神奈備の調査を終えるも、辺境の調査までしていた。そこで変若水に跳ね橋小屋があるのを見つけた。

「小夏、あれって?」

「跳ね橋を稼働する小屋かもね。」

「あれが稼働したら・・・」

「梓、貴女はここでこれまでの事を藤香様に報告して。」

「小夏は?」

「あの小屋と、変若水の内政を探る必要がある。」

「止めなよ。」

「直ぐ戻るよ。」

そういって小夏は木にワイヤーを投げて飛び登る。

「梓?」

「なぁに?」

「万が一、私が戻らなかったら、藤香様と…蓮太を、宜しくね。」

「何言ってんの!?戻ってきなさいよ?」

「フフッ、そうね。」

小夏は、そう言って微笑むと、変若水側の木にワイヤーで飛び渡っていった。


「ここが黛村…変若水か。梓も見たっていう殺人鬼みたいのもきっと何処かにいるわけよね。」

木々を飛び移りながら、小夏は偵察する。


「ん?」

小夏が背後に気配を感じる。

「気のせい?おかしいな…」


⦅・・・ぉき田村のくノ一がここら辺で死んだらしい!探せ!⦆

桃の声だ。

「缶…桃?何だ?私たち以外に密偵者がいたの?」

小夏は疑問に思いながら、木の上で静観する。

小夏の潜む木の下に変若水の兵士が来る。

「・・・」

小夏が殺気を消す。

「ん?」

兵士が木の上を覗き始める。

「おい!お前!」

桃が声をあげ近づいてくる。

「死んだ忍者が木の上に居るか!サボってないで跳ね橋付近を捜索しろ!」

「は、はい!」

兵士と桃は跳ね橋の方へ移動していく。

「ふぅ…」

一息つく小夏。

「桃は死体を探している…杏は何処に?」

小夏は杏を探しに南へ、木々をワイヤーで静かに華麗に移動する。

「これだけの兵士と跳ね橋があるなら、神奈備は直ぐに落とされる。まだまだ兵士を集めているようだし。」

小夏が偵察していると、妙な洞窟の入り口を見つける。

「ここは?ちょっと赤い装束が目立つかしら?」

小夏は腰巻を覆面にして潜入を試みると、洞窟の中、表門を入る。


洞窟内の表門を抜けると直ぐに看守部屋が見える。

小夏はこっそりと近づき中の様子を伺う。

「誰もいない?」

看守部屋の中に入ると隣から水を流す音がする。

《あ~…》

女の声、恐らく杏だろう声がする。

「行水中か。ここは一体?」

小夏は看守部屋を抜け、もう少し奥へ入る。

そこは洞窟がくり抜かれて作られた粗末な牢屋が乱立していた。

「ここは…ん?」

奥に熊の毛皮と頭をくり貫いたマスクから目だけを覗かせる不気味な風貌の男が立っている。

「あれは…梓も言っていた殺人鬼?そうか、ここがー」

惟神(かんながら)収容所、に何の用だい?」

小夏は振り返ると杏が弓を放つ姿があった。

寸前で矢を躱し、苦無を投げて弓の弦を切る小夏。

「ー!? お、やるなお前。上山!」

杏が叫ぶと仁王立ちしていた殺人鬼らしき男が走ってくる。

「う…うぇやむ!!」

鋸を携えて小夏に真っ直ぐ向かう。

「死にな。」

小夏が気付くと杏は看守部屋の壁に掛かっていた中華刀を手に取り、襲い掛かってくる。


ーボン!!


小夏は煙球を炸裂させた。

「くそ!」

「ウ、ウエヤマサァァン!!」

杏と上山は目を擦り、身動きできなくなった。

杏は咄嗟に勘と手探りで看守部屋を出ると、表門を出て行く小夏が見える。

看守部屋の入り口から杏が新しい弓を手に取ると、矢を反対の手に持ち、弦に当てながら臨戦態勢を維持し、小夏を追う。

ワイヤーで木の上に登る小夏に狙いを定めた瞬間、目の前で煙球が炸裂する。

「クソが!!」

一か八かで弓を乱射する杏。

木々を華麗に飛び移り、逃亡に成功する小夏。木に手を添えると内、1本の矢が(かす)っていく。

「あら、キズモノにしてくれちゃって。」

杏の居る方向に振り返り、こぼす小夏。


杏は手応えの無さを感じながら、煙からゴソッと出てくる。

小夏が微笑み返し、再び木々を華麗に渡る。


⦅置田村に黄緑の忍者がいるようだ!そいつも絶対見つけろ!⦆

森の遠くで桃の声が響く。

「梓?うまく逃げて… ん?そういえば、一体誰を探しているのかしら?」

立ち止まり、疑問を口にする小夏。


ードカ!


急襲を受け、木の下に落下しダウンする小夏の目に、逆光の中、シルエットが映る。

「…うっ…誰?」

「誰を探してるかって?お前の死体さ!」

「ーな!?」

木々に停まる鳥たちが、一斉に飛び立っていった。

次回2025/6/1(日) 18:00~「 第8章・1幕 黛紅蓮」を配信予定です。

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― 新着の感想 ―
小夏強くなりましたね。なのに死んでしまったなんて悲しいです。
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