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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第7章・祖柄樫山の夜明け
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第7章・13幕 従属

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


◎置田村・攻勢派


・野崎 飛助 (のざきとびすけ)

置田蓮次の信望者で右腕だった男。蓮次の死後は妻・藤香にも劣らぬ村人を束ね、黛村への侵攻を常に画策している。古き仕来たりを重んじるが故、美咲とは特にウマが合わない。


・赤島 猛 (あかしまたける)

野崎飛助に従い、一揆以前から兵士として活躍した男。蓮次と飛助に指名され、乙名に成り上がった。主に飛助の為に募兵や同士を集めている。酒と女にだらしなく、不道徳な男。赤島会たる野蛮組織を束ねる会長の顔を持つ。


・相島 権作 (そうじまごんさく)

置田村の沙汰人。置田村東地区・八俣の納税管理者。好みの女を襲い、嬲るという異常性癖を持つ。実は九狼党・幹部で❝尾❞の字で呼ばれる。攻勢派に副統括の話を持ち掛けられ、藤香抹殺に掛かる。


◎変若水・攻勢派


・缶 杏 (ほとぎあん)

黛村・北地区の変若水の缶梅男の双子の娘で長女。狡猾で、弓の名手。父と同じ、暴力で支配、解決するタイプ。脚が露になった、黒と杏子色のツートーンのチャイナドレスの様な、風変りな装束を纏う。


・缶 桃 (ほとぎもも)

黛村・北地区の変若水の缶梅男の双子の娘で次女。姉の杏にそっくりな顔立ちだか、それ以上に感情的で暴力的。火遁の術を用いて火焙りにし、接近時は短刀で八つ裂きにする野蛮性を持つ。姉と同じ、脚が露になった、黒と桃色のツートーンのチャイナドレスの様な、風変りな装束を纏う。


■ ▢ ■ ▢

変若水の双子の取引は、次第に脅迫となり、攻勢派を悩ませる。

しかし、攻勢派の悩む間も、話す間も与えない杏。

従うのか死ぬのかー

それ以外の答えに、暴力で返す桃。

石井がやられ、畏怖する野崎は紅蓮の名を出すと、双子は皆の居るこの場で、野崎に辱めを行った。


「や、やめてくれ!!」

懇願する野崎。

「桃~?もういいよ。」

「アッハハ!アンタ、気に入ったよ?」

桃が野崎を解放する。

「これでわかったろ?殺されるだけなんて甘い期待すんなよ?辱めて、皮剥がして、お前らのガキ共の餌にしてやるよ!」

桃がダウンしている野崎の傍に立ち、周囲に眼光を放つ。

「嫌なら嫌で、私らの言う事を聞いてれば、何も文句言わないし?」

桃が襟を整えて、埃を叩きながら喋る。

「そうだ、もう一つ言ってなかったけど、蓮太…だっけ?うちで監禁してるから。まぁ、あの男には別の意味で価値が出来たから、もう交渉には使わないけどね。」

杏がそう言うと、野崎が何とか起き上がりながら話し始める。

「なに?誘拐したのか?蓮太君を?」

「そうさ。だからもう、藤香をやれば、この村は落ちたも同然。つまり、私らと仲良くしない理由はないだろう?」

杏が続ける。

「もし私らの傘下に入るってなら、行動で示してよね。そうだねぇ、まずは青田をさっさと潰しちまいな。」

「何かあれば変若水まで直に来るんだ。使者なんか寄こしたら死体にして返してやるからね。」

桃がそう言うと、沈黙する。

「じゃ、皆さんの答えに期待している。面倒なことだけは起こすなよ?」

「バイバ~イ。」

そう言うと双子は去っていった。


馬に乗り、双子が黛村へ向かう。

「アイツら、これでもう私たちの兵隊も同じだね。さすが杏。」

「度胸のないフニャチン共の攻略なんて朝飯前よ。」

馬を走らせながら、じゃれ合う様に蹴り合う双子が、八俣の東へ消えていく。


「野崎さん、どうしー」

「くそぉ!!」

野崎が大声で悔しがる。

「…まだ我々が完敗したわけじゃありません。」

赤島が言う。

「当たり前だ!置田村は俺たちが支配する。藤香でも美咲でも、ましてや双子でもなく!」

野崎が感情的になる。

「では、双子に不意打ちを仕掛けるのですか?」

相島が嬉しそうに言う。

「いや、アイツらの強さは利用する。従うふりをして、最後にやってやるのさ。」

「ほ、ほう、なるほど。」

相島は釈然としない。

「赤島、お前は単身、蓮太の捜索・救助をしてくれ。」

「わ、わかりました。しかし、双子の逆鱗に触れませんか?」

「双子は妙に大事そうだった。蓮太の秘密は恐らく蓮次さんの息子という以外のモノ。蓮太を逆に幽閉し、居場所と引き換えに秘密を聞き出すんだ。危険だが誰かがやるしかない。」

野崎が赤島にそう答えると目線を合わせてきた。

「…わかりました。」

「俺は鈴谷をこちらに就くように切り札を切ってくる。他の者は全員、赤島組へ移動後、青田組を皆殺しにしろ。」

野崎の号令が館に轟く。

ここから攻勢派の大きな動きが次第に置田村の戦火を拡大していく。



ー和都歴452年 3月13日 11時 黛村・星原の館


杏と桃が、父・梅男に呼ばれ、乙名・星原の館まで来る。

もうすぐ辿り着く頃、玄関から星原満彦が、馬車に乗り、出掛ける様を見かける。

館の中に入る杏と桃。

「来たか。」

「何の用?つか星原のオヤジは出掛けたみたいじゃないか。」

杏が梅男を素通りし、窓際に行くと外を眺める。

「お前らまた勝手な真似したな?」

梅男が桃に目線を合わせる。

「勝手?勝手って?」

桃も梅男を素通りし、机のリンゴを手に取り、杏の傍で梅男に目線を合わせる。

「お前ら、迷い込んだ、置田村の小夏とかいうくノ一、殺しただろ?」

杏と桃が顔を見合わせ眉を(ひそ)める

「は?」

二人は顔を一度見合わせ、不機嫌そうに答えた。

次回2025/5/29(木) 18:00~「第7章・14幕 書本小夏の死」を配信予定です。

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