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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第7章・祖柄樫山の夜明け
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第7章・14幕 書本小夏の死

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


◎置田村


・置田 蓮太 (おきたれんた)

16歳。本編の主人公。置田村の創始者・置田蓮次と置田藤香の子。英雄の息子として、副統括となり、次期・乙名としての期待が高い。武勇の才にも長け、心身とも強靭に成長を遂げる。


◎変若水・攻勢派


・缶 梅男 (ほとぎうめお)

黛村・北地区の変若水の乙名、星原満彦の軍事頭目で、副統括。しかし、領内の民の為の内政に尽力する彼とは対照的で、暴力で欲望を満たすタイプ。星原一家を打倒し、政権を奪うことを目論む。


・缶 杏 (ほとぎあん)

黛村・北地区の変若水の缶梅男の双子の娘で長女。狡猾で、弓の名手。父と同じ、暴力で支配、解決するタイプ。脚が露になった、黒と杏子色のツートーンのチャイナドレスの様な、風変りな装束を纏う。


・缶 桃 (ほとぎもも)

黛村・北地区の変若水の缶梅男の双子の娘で次女。姉の杏にそっくりな顔立ちだか、それ以上に感情的で暴力的。火遁の術を用いて火焙りにし、接近時は短刀で八つ裂きにする野蛮性を持つ。姉と同じ、脚が露になった、黒と桃色のツートーンのチャイナドレスの様な、風変りな装束を纏う。


・黄田 八太郎 (きだはちたろう)

黄田組・組長。赤島会から副統括の神籬の監視を命令され、そこに一定の人員を割いている。昔気質の横柄な崩れ者で、狡猾。生き残るためには家すらも売る薄情さを持つ。今は命の為に置田村を捨て、双子に服従する。


■ ▢ ■ ▢

父・梅男に星原の館に呼ばれ、小夏殺害を咎められる杏と桃。

「は?私らが?」

「誰を殺したって?」

杏と桃が聞き返す。

「置田村の書本小夏というくノ一、女忍者だ。」

梅男が二人に目線を送る。

「あれ?本置田のくノ一?殺したかなぁ?」

桃が杏に尋ねる。

(くノ一…収容所にいきなり忍び込んでいた、あの忍者…?でも確かアイツには逃げられたはず…そのくノ一じゃない?)

杏は考える。

「私が死んだくノ一を探しに神奈備にちょっと侵入した時、黄緑の忍者を少し追い回したけど殺してなんかいないよ?」

桃が必死に白状する。

「お前…勝手に置田村に入ってるのか?」

梅男が焦燥する。

「まあまあオヤジ落ち着けって。ふーん…女か。で?私らがどこで殺したって?」

杏が確認する。

「それはこちらが聞きたい。お前らのアジトじゃないのか?」

「また決めつけか。そもそも誰の情報なんだ?」

杏が(たしな)めながら尋ねる。

「星原のオヤジが紫御前から聞いたらしいぞ?俺も散々絞られた。お前らの無鉄砲をこれ以上放置するわけにもいかん。」

「なんで紫の言う事信じんのさ?」

桃が怒る。

「じゃあ殺していないんだな?」

「ああ。それは本当だ。誓うよ。」

杏が梅男に真剣な表情で言う。

「…わかった、信じよう。でもそうなると誰に殺されたのか。」

「親父、私ら、ある伝手で、上級の忍者を雇ったんだ。」

杏が言う。

「何?また陰で勝手なことを!」

「でも変若水には忍者が居なく、情報戦に弱い。このままじゃ敵の謀略に抵抗できない。」

「むぅ…」

梅男に杏の言葉が刺さる。

「杏が言うにはさ、その忍者に美薇を忍者に育ててもらおうって話もしてたんだ。」

「美薇を?」

「ああ。」

「兎に角、その忍者を使い、いち早く小夏を殺した犯人を捜せ。お前らに容疑が行き、今、星原のオヤジが紅蓮様の館に呼び出された。俺は後を追い、今の話を伝えてくる。」

そう言って、梅男は館を後にした。


桃がリンゴを齧る。

「杏、いいの?」

「何が?」

「蓮太を監禁していることは言わなくて?」

「いいだろ? 気になるのは、くノ一を捜索はしたが殺してないのにな。 まぁいいさ、例の忍者、雛子(ひなこ)だったか?アジトに待たせてあるんだろ?」

「うん。」

「直ぐに小夏とやらを殺した奴を探させよう。」

そういって二人はアジトへ向かう。


ー和都歴452年 3月13日 13時 黛村・缶姉妹のアジト


「ただいまぁ。」

双子がアジトに帰還する。

「爺さん、例の忍者を呼んで来い。」

「わかった。」

杏が黄田八太郎に命令すると、雛子という忍者を連れてきた。

「よう、雛子ちゃん。早速任務が出来た。一働きして欲しいんだ。」

「何の仕事?」

「人探しだ。先週くらいに置田村から侵入した、くノ一で、書本小夏って奴を殺した奴を探して欲しい。」

杏が椅子に踏ん反り返って、雛子を見つめて依頼する。

「殺した奴を?見つけるの?」

「そうだ。二度も言わせるな。」

「まぁ、僕に掛かれば簡単な仕事だ。吉報を待っていてよ。」

黛 雛子(まゆずみひなこ)。黛家の末っ子。忍者組織『諜破浸暗』所属の優秀な忍者で諜報活動が得意。母の趣味から着せ替え人形的に育ったため、露出の高い紺色の忍び装束と耐切創タイツに身を包む姿はまるでくノ一だが、立派な少年。


そう言って出て行く雛子。

「さて、桃、私らも行くよ。」

「了解~。」

杏と桃も外に出て、移動を開始する。


ー和都歴452年 3月13日 16時 黛村・惟神(かんながら)収容所


「はぁ~い、ライオンちゃん、イイ子にしてたかしら?」

「ふん、お前らよりはよっぽどな。」

杏の態度に負けない態度で返す蓮太。

「アッハハ、やっぱ敵わないねぇ。」

杏と顔を見合わせて下品に笑う桃。

「そんな元気があるなら好都合だわ。」

手足縛られ全裸で吊るされる蓮太に近寄る杏。

「で?何の用だ?」

「ん~?用か。答えてくれるか分からないが、答えてくれたら、こっちもいい情報をあげる。取引なんてどう?」

「取引?どうせお前らのは似非(エセ)な情報だろ?」

蓮太の皮肉に杏と桃は顔を見合わせてニヤリと笑う。

「書本小夏。の情報なら、どうだ?」

「小夏!?」


長い年月の雨風が、置田村・神奈備の争いから戦火を広げ、黛村・変若水、女郎花、遂には黛紅蓮まで介入する事態になる。この戦火の行方に大きく関わる、蓮太の今後。小夏を殺したという犯人。

ここから、物語は大きく戦争への策謀フェーズへと突入していく。


ー第7章・終

次回2025/5/30(金) 18:00~「第7章・幕間劇 最後の任務、それが小夏の最期」を配信予定です。

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