第7章・7幕 窮地と死線、最期の時
今回の登場人物
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・置田 蓮太 (おきたれんた)
16歳。本編の主人公。置田村の創始者・置田蓮次と置田藤香の子。英雄の息子として、副統括となり、次期・乙名としての期待が高い。武勇の才にも長け、心身とも強靭に成長を遂げる。
・忌部 耕助 (いんべこうすけ)
蓮太らを持て成す村人の中年で頭は禿げ上がっているが、宣教師の様な服を纏い、紳士的な振る舞いを見せる。
・雪平 若子 (ゆきひらわかこ)
中性的の魅力が溢れる美男子。化粧とお香を愛する趣味を持つ。暇があれば常備するスカーフを手で靡かせる。
ーーー
・缶 桃 (ほとぎもも)
黛村・北地区の変若水の缶梅男の双子の娘で次女。姉の杏にそっくりな顔立ちだか、それ以上に感情的で暴力的。姉と同じ、脚が露になった、黒と桃色のツートーンのチャイナドレスの様な、風変りな装束を纏う。
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和都歴452年 3月6日 17時 黛村・変若水 跳ね橋 付近の兵舎
神籬の捜索に向かう剛堂と黄田組の集会所で別れた蓮太は、忌部と雪平の案内で、単身、小夏捜索に尽力し、黛村・変若水入りを果たす。
跳ね橋小屋を越え、しばらく歩くと、そこに兵舎と10人近い兵士が屯していた。
「アイツらが小夏を?」
茂みに隠れつつ、蓮太は様子を見ていた。
ーガサ!
茂みに後ろから2人飛び込んできた。
「!」
「後、追ってきちゃいました。」
忌部と雪平も来たようだ。
「お前ら…知らないぞ?」
「し!」
蓮太が話しを振ると、雪平が静かにと空気を張り詰める。
「おい!アンタら!そろそろ休憩は終わりだ。日が暮れる前にもう一度探すんだ!」
女の怒鳴る声が聞こえる。
「あの声は?」
「缶桃。」
忌部が即答する。
「噂の双子といきなり対面か。」
蓮太が溜め息をつく。
「いいかい?本置田のくノ一はこの変若水で消えたんだ。何としても探し出せ!」
桃が相変わらずの怒号をあげる。
「本置田のくノ一?アイツらも小夏を探しているのか?」
「そのようですね。」
蓮太の疑問に答える雪平。
「どういうことだ?小夏は無事逃げたってことか?」
「わかりませんが…」
「少なくとも変若水の兵士にはヤラれても捕まってもいないらしい。ここは撤退するか。」
蓮太が引き下がろうとする。
「そうはいきません。置田蓮太。」
「何?」
雪平が粉を取り出し吹きかける。
「フーーー・・・・」
「な・・・やめ・・・」
蓮太は瞬間意識と目眩に襲われる。
???年 ?/?? 牢獄のような場所 夜
ー・・・・
「アハハ!目が覚めたかい?」
素っ裸の状態で牢獄に吊るされた蓮太は意識を取り戻す。
「…う、ここは…い、一体?俺は…」
両腕を縛られ吊るされた蓮太は牢獄を一回り見回すも、何もなく、桃と拷問道具が置いてあるだけの部屋だった。
「アンタ、置田蓮太なんだって?」
「・・・」
目線を逸らさず、沈黙で見つめ返す蓮太。
「…フン。」
ーズム!!
「がは!」
蓮太のミゾに拳を入れる桃。
「私を見縊ると、どういう目に合うか…まずはそこから教えないとダメみたいだね?」
桃が短刀を握り、蓮太を睨む。
「・・・」
蓮太も睨み返す。
「その顔…」
ーズシャ!
「うぁぁあああ!くそ!」
蓮太の胸を軽く切り裂く桃。
「アッハハ!イイ声だねぇ!英雄の悲鳴とはこんな奏とはね!感じてきちまったよ!!」
桃は下品に唇を舐め回しながら、指で自分の胸を触り始める。
「下種め!」
「ああ!?」
桃は短刀を机に突き刺す。
ーズム!ズム!ズム!!
「がふ、がほ、ごぶ…!!」
桃が蓮太に連続で拳を入れる。
「置田村の次期乙名も、私、缶桃の玩具として終わるんだ!」
「雪平たちは?あいつらは何なんだ?」
血反吐を吐きながら蓮太は質問する。
「あん?なんだ聞いてないのかい?あいつら…アッハハ!」
桃は目と掌を上に向けて、嫌らしく笑う。
「あいつらは、うちら変若水侵攻部隊が雇った殺し屋だよ。金で何でもするんだ。」
「殺し屋…だと?」
「まんまと引っ掛かったんだな、黄田組に仕掛ければ何か釣れるって杏が言ってったから、その通りにしただけだけど、まさか英雄さんが釣れちまうとはねぇ~。」
桃は再び短刀を持ち、唇を舐め回す。
「さて・・・そろそろ1ヶ所くらいザックリ…イッとこうかぁ?」
唇から血の付いた短刀を舐め始める桃。
「最初から心の臓をザックリやればいいだろう?もしかして俺を殺すのは怖いのか?」
最期だろう時も命乞いせず挑発する蓮太。
「ちっ!冷める野郎だ!てめぇ!!」
ードゴ!!
「ごぶ!!!」
強烈な蹴りをミゾに食らわす桃。
「…な、なんだ?ゴホ!…変若水のお嬢は短刀の使い方は知らないのか?」
血まみれで尚、挑発する蓮太。
ここにきて命乞いする意味もないし、知ってることを一つでも話す気もない。
そう、やりたいように死んでやるー
「てんめぇ~!!」
桃は激昂すると、壁に飾ってある青龍刀を持ち出す。
「短刀の使い方だぁ?ああ!じゃあコレでふざけた口を封じてやるからよ!よく味わえ!!」
桃が青龍刀をクルクル回しながら左右に持ち替える。まさに達人の域。
蓮太は笑顔で応える。
次回2025/5/8(木) 18:00~「第7章・8幕 価値のある人質」を配信予定です。
※本日をもってGW・強化月間は終了です。
次回からは(木)(日)18:00の投稿へと戻ります。