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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第7章・祖柄樫山の夜明け
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第7章・6幕 ❝いつものことだ。❞

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・置田 蓮太 (おきたれんた)

16歳。本編の主人公。置田村の創始者・置田蓮次と置田藤香の子。英雄の息子として、副統括となり、次期・乙名としての期待が高い。武勇の才にも長け、心身とも強靭に成長を遂げる。


・剛堂 泰治 (ごうどうたいじ)

武道に精通し、足りない統治の心得を得るため乙名心得学科へ入門・卒業した。厳つい見た目に反し、高い分析力と判断力を持つ。数年の時を経て、小太刀の達人となり、忍術の心得も僅かに修得した。緑色の迷彩柄の忍び装束は異彩を放つ。


・忌部 耕助 (いんべこうすけ)

蓮太らを持て成す村人の中年で頭は禿げ上がっているが、宣教師の様な服を纏い、紳士的な振る舞いを見せる。


・雪平 若子 (ゆきひらわかこ)

中性的の魅力が溢れる美男子。化粧とお香を愛する趣味を持つ。暇があれば常備するスカーフを手で靡かせる。


■ ▢ ■ ▢

和都歴452年 3月6日 13時 置田村・神奈備 黄田組・集会所


青田組から小夏捜索の為、足で黄田組集会所まで来た蓮太と剛堂。

そこで声をかけてきた雪平と忌部という2人に持て成しを受けつつ、それが済み次第、小夏であろう人が攫われた場所へ案内してもらう事となった。

「ここは元黄田組…の場所。今はあなた方が使用しているんですか?」

蓮太が昼後のお茶を飲みながら、話を振る。

「ええ、黄田組の横暴は酷くて。取り返したという地元民の声も強いと思います。」

「その地元民は今どこへ?」

雪平の回答に剛堂が質問する。

「地元の一般の方は凡そ、もっと北の社に副統括の神籬(ひもろぎ)さんと暮らしています。」

「え?神籬さんは無事なんですか?」

蓮太が声をあげる。

「ええ、何か不思議でも?」

忌部が不思議そうに答える。

「い、いえ。本置田の、内政派からは既に亡くなったとの見解の方が強かったので。そうか、良かった。」

「では、そろそろ参りましょうか。」

雪平が爽やかに声をあげる。

「わかった。宜しく頼む。」

蓮太がそう言うと、雪平が化粧を始める。

「耕助さん、お二人を馬車へ案内してよ。」

「わかったよ、若子君。どうぞこちらです。」

忌部が二人を馬車まで案内する。


「剛堂、どうした?」

馬車に乗り込んだ蓮太は立ち尽くす剛堂に声をかける。

「俺はここで別れよう。」

「どうした?」

蓮太が疑問を問う。

「神籬殿が生存しているなら、その社に行く意味はある。」

「…ああ。そうだな。」

蓮太が馬車の窓から遠くを見つめる。

「お前の探し物は所詮は、お前の個人的な事だろう?小夏と神籬殿、どちらが置田村の平和に大きく貢献する?」

剛堂が蓮太に穿つ問いかけをする。

「どっちが乙名としてふさわしいか…」

「世間に知らしめたいと?わかった。元々強制力のない任務だ。剛堂(おまえ)の好きにすればいいさ。」

剛堂の言葉を、途中から割り込んで話す蓮太。

「ふん。女一人に肩入れするその甘さが、果たして乙名として、祖柄樫山の人間として生き残れるか、身をもって示してみろ。」

そういうと剛堂は歩き去っていく。


しばらくして、忌部が馬に乗り、雪平が馬車に入ってきた。

「あれ?もう一人は?」

「ああ、フラれたよ。構わない、出してくれ。」

蓮太は皮肉を言うと、忌部は苦笑して馬車を走らせる。

過ぎ去る黄田の集会所を横目に、蓮太は物思いに(ふけ)る。

「フラれたって、彼は恋人かなんかですか?」

笑顔で雪平が蓮太に尋ねる。

「え?いや、そういうんじゃー言葉のアヤだ、気にしないでくれ。」

「あぁ、そうですか。こんな地で揉めるとは、それもそれで災難ですね。」

「いつものことだ。」

苦い笑顔で返す蓮太。


馬車が跳ね橋の付近に着くと、ゆっくり止まった。

「着きました。」

忌部が馬からこちらを振り向いて伝える。

「ありがとう。」

蓮太は馬車から出ると、辺りを見回す。

鬱蒼とした森、跳ね橋が見える下を流れるだろう谷川。

そろそろ夕暮れとなり、不気味さも併せ持つ、この辺境の地。

「ここからは俺だけでいい。二人は帰ってくれ。」

「日が落ちるまではここに居ますよ。」

「わかった。だが帰らない可能性もある。日が暮れたらとっとと帰ってくれ。いいな?」

そういって蓮太は跳ね橋へ向かう。

「?」

蓮太は跳ね橋が降りていることに少し疑問を感じつつも、跳ね橋を渡る。

「罠だろうか?しかし、小夏の手掛かりはこの先にしかない。」

そういって降りていた跳ね橋を走って渡り切る。

振り返り、まだ忌部も雪平も馬車に居るだろうことが伺える。

蓮太はさらに奥へ歩み始める。


『カーカー!!』


カラスが飛び去っていく。

「悪かったな。」

飛び去るカラスを目で追いながら呟く蓮太。

しばらく歩くと兵舎らしき建屋があり、10人くらいの兵士が(たむろ)していた。

次回2025/5/6(火) 18:00~「第7章・7幕 窮地と死線、最期の時」を配信予定です。


※4/26(土)~5/6(火)はGW・強化月間です。

期間中は毎日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。

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― 新着の感想 ―
蓮太はほんとに成長しましたね。罠と知りながらも小夏を探すために自ら危ないところに1人で向かうなんて。小夏が見つかるといいですね。
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