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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第7章・祖柄樫山の夜明け
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第7章・4幕 青田組との同盟

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


◎内政派


・置田 蓮太 (おきたれんた)

16歳。本編の主人公。置田村の創始者・置田蓮次と置田藤香の子。英雄の息子として、副統括となり、次期・乙名としての期待が高い。武勇の才にも長け、心身とも強靭に成長を遂げる。


・剛堂 泰治 (ごうどうたいじ)

武道に精通し、足りない統治の心得を得るため乙名心得学科へ入門・卒業した。厳つい見た目に反し、高い分析力と判断力を持つ。数年の時を経て、小太刀の達人となり、忍術の心得も僅かに修得した。緑色の迷彩柄の忍び装束は異彩を放つ。


・高遠 梓 (たかとおあずさ)

八俣の貧民の出自。小夏と共に藤香のお抱え忍者となる。小夏に引けを取らない忍術・暗殺技術を幼くして習得したという。黄緑色の露出の高い忍び装束に普段は白い衣を纏う、上品かつ華麗な立ち振る舞いが更に尋常でない印象を与える。


・香本 有 (こうもとあり)

沙汰人・置田村中央部・本置田 顧問。藤香のブレーン的存在。若い時は都に住んでいた経験もあり、考え方は至って現代的。しかし、残すべき古い文化は守るべきという側面も併せ持つ。


◎青田組


・青田 勝一郎 (あおたかついちろう)

青田組・組長。赤島会の堅気への対応に失望し、自らあるべき野蛮組織に独立を目指す。現状、孤軍奮闘だが、その意志は固い。


・青田 勝資 (あおたかつすけ)

青田組・若頭。勝一郎の長男。父と同じ思想で組でも希有な武闘派。次期組長としても着々と力をつけている。青と白のコントラストが目を引く着流しを纏う。


・青田 勝道 (あおたかつみち)

神奈備出身。沙汰人の親と、後継者の兄を持つ。青島家は赤島会の幹部で、青田組の実行部隊長として、刑務官学科に入学・卒業する。長年共にいる彩羽を許嫁とし、青田家の為に尽力する。兄に倣い、青と白のコントラストの着流しを纏う。


・綾瀬 彩羽 (あやせいろは)

神奈備出身。沙汰人・青田家の家事手伝いとして、古くから働く貧民。半面、非常に美しく、武術に長ける。また、青田家の次男。勝道の幼馴染で良き理解者。


■ ▢ ■ ▢

和都歴452年 3月5日 18時 置田村・神奈備 青田組・集会所


鈴谷の館より、土砂の封鎖により危険な獣道をなんとか突破した香本、蓮太、剛堂らは、青田組に着き、同盟の意を表明する。

「この惨事にどこも復興に精一杯かと思われます。しかし、復興を遂げた勢力は、我先と、再び侵略と謀略を仕掛けてくるでしょう。一早く、横の繋がりは強固にしておくべきとの結論で、置田村内政派は、まず青田組との同盟を築いておきたい。如何でしょうか?」

香本の言葉が終わる。

「公の勢力より支持していただければ、我々としても有難い。次男の勝道より聞いたが、我らが真っ当な組織として活動するなら、その存続も約束してくれるとか。我らに何が出来るのか、この惨事から有事のボランティアなら我らも活動できると思うのです。どうでしょう?そんな公共団体を支持していただけるなら、我々も微力ながらお力添えいたします。」

勝一郎が丁寧に言葉を返す。

「それは有難いお言葉。藤香様に答えを聞くまでもありません。私の責任で、青田組の存続と同盟をお約束いたします。」

「良かった。では固い話は終わりにして、今夜はゆっくり食事と休養を取っていってください。」

「それは痛み入ります。」

一行は青田組で休養を取ることにした。


「蓮太、剛堂も、ちょっといいか?」

勝道が声をかけると、二人を違う部屋へ案内する。

そこには勝資がいた。

「親父はああは言ったものの、同盟を結ぶっていえど、この環境じゃ当分は大軍を行軍するのは難しい。」

勝道が歩きながら話し、席に着く。

「どういうこと?」

「まぁ、二人も席についてくれ。」

勝資が二人に手を伸ばす。

「同盟と言っても、ここからは拠点以外は個人戦。拠点攻略は個人vs敵全部って流れになる。」

「そうか。どこも行軍出来ないわけだし、守りに集中するわけか。」

勝資の読みに納得する蓮太。

「そして、何時何処で個人がぶつかり合うか分からない。ある程度2、3人で敵地を見張り、一人歩きする者を狩っていく。これが王道になるだろう。」

「長期戦だな。」

勝資の話を呑み込む剛堂。

「そこで俺たちもペアで赤島組と白石組の偵察を狩ろうと思っていた。」

勝道が蓮太らに目線を合わせる。

「ああ、いいぜ。剛堂、アンタもいいよな?」

「勝手に決めやがって。まぁいいだろう。」

蓮太と剛堂も賛成する。

「一応ルールはペアで行動し、1人以外は襲わない。ペアとはぐれたり、万一やられたら、一人撤退する事。いいな?」

勝資の案に、皆も頷いた。

「では解散としよう。狩りは明朝からだ。客間で集まったら出掛けよう。」

そういうとそれぞれの部屋に戻ろうとした。


「きゃあ!」


「どうした?彩羽!」

駆けつける勝道。

「あれ見て!誰か来る。」

玄関先にヨボヨボ歩きで近寄る人影を、彩羽は指さした。


ーガラ!


「ご、御免…ここで少し休息を…」

そういうと女性は倒れてしまった。

急いで駆け付け、応急処置する彩羽。

「あ、この人…」

「知り合い?」

彩羽が蓮太に聞く。

「忍者学科にいた…高遠梓(たかとおあずさ)?じゃないか。」

「え?」

しばらく気を失って、目を覚ます梓。

「大丈夫か?」

「れ、蓮太?君?」

「蓮太で構わない。君は小夏と共に母上のお抱え忍者として神奈備を偵察中だったよね?それにもう帰還しているものかと思った。何があった?」

「・・・」

「話せることから話してくれればいい。」

「小夏が、黛村の変若水(おちみず)まで偵察に行って。しばらく待ったら、変若水の兵隊らが沢山来て、私は命からがら逃げてきたの。」

「何?」

「ゴメン…小夏を救えなかった。ホント…申し訳なくて…蓮太…ホントに…」

一人前になったはずの忍者・梓もその責任と気持ちを察するだけに泣き出していた。

「…いや、梓は悪くない。小夏は?どうなったかは知らないんだろ?」

「きっと殺されてるに決まってるよ!変若水の双子の部隊だ。非道の連中だもん。」

「…わかった。その件は俺が預かる。梓はこのまま休養したら、その話を母上に話してくれ。」

「ちょ、どうするつもり?」

「任務を遂行したら、小夏を探しに行く。」

蓮太は微塵の動揺も見せなかった。

そう、小夏を想う心もまた、微塵も消えていなかった。

次回2025/5/4(日) 18:00~「第7章・5幕 小夏捜索の旅路」を配信予定です。


※4/26(土)~5/6(火)はGW・強化月間です。

期間中は毎日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。

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― 新着の感想 ―
蓮太、成長しましたね。昔ならかなり動揺してたのに、冷静に話を聞けるなんて。
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