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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第6章・双子
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第6章・12幕 邪推

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


◎星原家

・星原満彦 (ほしはらみつひこ)

黛村・北地区の変若水の乙名。領民のため、民政に尽力する。息子、敦彦、詠彦にもその流れを汲む様に教育してきた。暴力的な輩が多いこの地区を、その手腕で治めてきた。


・星原敦彦 (ほしはらあつひこ)

黛村・北地区の変若水の乙名、満彦の長男。父の教えに従い、領民のため、民政に尽力することを目指す。父の盟友、東江家の長女を許嫁にするも、本人は侍女・花楓美薇を愛する。


・花楓 美薇 (かえでびび)

黛村・北地区の変若水の乙名・星原満彦の侍女。敦彦を愛する。家事全般から、いざとなれば刀を持ち、戦える万能な女性。貧相な服であるが、綺麗な長い髪と、美しい顔立ちの女性。


◎缶家

・缶 梅男 (ほとぎうめお)

黛村・北地区の変若水の乙名、星原満彦の軍事頭目で、副統括。しかし、領内の民の為の内政に尽力する彼とは対照的で、暴力で欲望を満たすタイプ。星原一家を打倒し、政権を奪うことを目論む。


・缶 杏 (ほとぎあん)

黛村・北地区の変若水の缶梅男の双子の娘で長女。狡猾で、弓の名手。父と同じ、暴力で支配、解決するタイプ。脚が露になった、黒と杏子色のツートーンのチャイナドレスの様な、風変りな装束を纏う。


・缶 桃 (ほとぎもも)

黛村・北地区の変若水の缶梅男の双子の娘で次女。姉の杏にそっくりな顔立ちだか、それ以上に感情的で暴力的。姉と同じ、脚が露になった、黒と桃色のツートーンのチャイナドレスの様な、風変りな装束を纏う。


■ ▢ ■ ▢

和都歴450年 8月16日 8時 黛村・変若水 星原の館


梅男の家にて、黄粉を惨殺した桃と梅男、それを見殺しにした敦彦と美薇。

帰り道に山賊に襲われ、黄粉は殺されたことになった。

杏の提示した策謀、それは、しばらくは落ち込む敦彦に寄りそう美薇という間柄を取り繕うように、と進言され、敦彦と美薇は追々、結ばれる恋路を余儀なくされた。

「何ということだ…しかし、起こったことは仕方あるまい。」

満彦も納得できないながら、その経過を見守っていた。


梅男の家


「やったな親父。これで敦彦が乙名になれば、思うがままだ。」

桃が歓喜する。

「そうだな。もう安泰だ。」

梅男も安心する。

「そうか?あの敦彦って坊ちゃんは結局は美薇が鍵なわけだ。あの女が変な正義感を振りかざさないように、私らの色に染めていく必要はある。」

杏が悪い顔をする。

「また、お前!出しゃばるな。もうここまででいい。」

「ふん。親父は詰めが甘いのさ。いいから私に任せなって。」

「あの娘は二人の恋愛以外に政治的なことは口を出さない。妙なことをして今の状況を悪化させるな。」

「何?なんであの娘をそんなに守るわけ?」

杏が勘ぐる。

「守ってないさ。杏の暴挙を止めているだけだ。」

「暴挙って…」

杏が失笑しながら窓の外に視線を逸らす。

「これは命令だ!いいな?」

「はいはい。」

そういうと杏は桃にハイタッチしながら玄関へ向かう。

桃が先に外へ出ると、杏が出る間際に振り返る。

「親父、この長雨でしばらく侵略も出来ないけどさぁ?」

「なんだ?」

「私ら娘に隠し事してたら、それこそ許さないよ?」

「許さない?」

「ああ。散々汚い仕事を娘にさせておいて、私らを切り捨てる真似したら…たとえ血の繋がった親父でも…」

「バカなことを言うな。桃ならともかく、お前らしくもない。考え過ぎだ。少し休め。」

「・・・」

杏は最後まで鋭い視線を送り、その場を後にした。


桃が馬に乗って待っていると、杏が後ろに乗った。

「何でそんなに親父を疑うんだ?」

「いや。あの美薇ってお嬢ちゃんへの態度がね。」

「アッハハ!杏、嫉妬してるんだ?」

「バカ言え。」

「だって、敦彦って坊ちゃんが私らの下僕になってりゃあんな女どうなったっていいじゃん。」

「桃はわかってないね。あの女があの坊ちゃんを白にも黒にも染めるんだ。その女が親父と繋がってたら、私らは単なる駒で終わっちまうんだよ?」

「難しいことは杏に任せるよ。私は頭蓋骨を踏みつけられればそれでいいんだ。」

「あの女…まさかとは思うけどねぇ…うちらは兵士は沢山いるけど、情報網の忍者は居ないのは死活問題かもね…」

「どっかから(さら)ってくるかい?」

「しばらく長雨で、どの勢力も1年は大きく動けないかもしれない。何かを蓄えたり、精進するなら今かもしれないね。」

2人を乗せた馬が、大雨の中、走っていった。


和都歴450年 8月16日 21時 黛村・変若水 梅男の家


「ここまで、色々とありがとうございます。」

「いや、いいんだ。それより、これからも頼むぞ、美薇。」

「はい。」

美薇が梅男の家を後にした。


祖柄樫山に降り続ける長雨が、いつしか雷雨へと変貌し、一向に止む気配を見せない。

この雨は後に龍の行水と言われ、作物の不作と治安悪化が予想され、各勢力、自治に努めることになる。

この問題が解決するまで約2年の歳月がかかり、この2年が、各勢力の水準を大きく進退させた。


ー藤香たち内政派

ー野崎と赤島と相島ら攻勢派

ー各組ら元赤島会

ー紫の七草

ー変若水の乙名一行

ーそして、双子


彼らが、神奈備・八俣・女郎花・変若水で争うのは2年半の歳月を経た先のことになる。


ー第6章・終

次回2025/4/29(火) 18:00~「第6章・幕間劇 光陰矢の如し」を配信予定です。


※4/26(土)~5/6(火)はGW・強化月間です。

期間中は毎日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。

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